FIREムーブメントには、警戒すべき3つの「落とし穴」がある。コーストFIREに魅了されている私が気をつけていること

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本記事の筆者ケヴィン・パニッチ氏。

Courtesy Kevin Panitch

  • 本記事の筆者ケヴィン・パニッチ氏はFIREを目指しているが、従来型のFIREにはいくつか落とし穴があると思っているという。
  • まず、FIRE達成のための貯蓄行動が現在の生活を圧迫しかねない。また、何もないところに向かって突っ走ってしまうリスクもある。
  • そして、FIREを目指すと柔軟性を失う可能性があるかもしれない。今後目指す人は潜在的な落とし穴や注意点をよく調べておくとよいだろう。

FIRE(経済的自立・早期退職)の定義は簡単だ。二度と働かなくて済むだけのお金を貯め(経済的自立)、一般的な退職年齢の65歳になる前に仕事を辞める(早期退職)ことである。

しかし、FIREにはさまざまな形があり、1つに特定するのは少し難しい。経済的自立を達成しても働くのをやめない人もいれば、収入の9割を貯蓄に回して30歳でリタイアする人もいる。

FIREのやり方に正解も間違いもない。どんな道を歩もうとも、経済的自立に辿り着くというのは素晴らしいことだ。

ただし、基本的にFIREムーブメントの支持者で、特にコーストFIRE(Coast FIRE)という考えに強く魅せられている私でも、従来的なFIREにはいくつかの落とし穴があると思う。

落とし穴1:今を犠牲にしすぎる

FIREの核をなす戦略は、貯蓄を増やすことである。その方法は、節約する額を増やすのでも、収入を増やすのでもいい。理論上、どちらも悪いことではない。

しかし前者の場合、節約のために出費を切り詰めすぎれば、現在の幸福度が減ってしまいかねない。自分にとって大きな価値のない出費を抑えるのはいいことだが、価値があると思うものにお金を使うのもいいことだ。

すっかり定番となったコーヒーの例で言えば、たまに高級喫茶店でおいしいコーヒーを飲むのが楽しみで、それが自分の生活に価値を与えてくれるのなら、経済評論家の勧めに従ってそれを予算から削る必要はない。

後者については、起きている時間すべてを注いでまで収入を増やそうとすべきではない。

お金がもっと必要なときに、もっと稼げる新しい仕事を見つけたり、副業を始めたり、不労所得を求めたりするのは皆いいことだ。しかし、金儲けのための金儲けは、結局時間を浪費しているだけである。

節約のしすぎと同じように、働きすぎは短期的な幸福度を下げてしまう。

FIREにおけるこの落とし穴にはまらないカギは、バランスである。貯蓄を増やしながらも、自分が好きなことにはお金と時間を使おう。

落とし穴2:目的を見失う

退職後の生活は、何もせずとも理想の日々になるとは限らない。

目覚ましのアラームを聞くことなく目覚め、ゆっくりとベッドから起き上がり、気持ちのいい朝日を浴びながらコーヒーを淹れ、たっぷりの朝食をとる……確かに最高だ。

でも、その後は?

その日の午後は何をする? 次の日は? 次の週は?

誤解しないでほしいのだが、もちろん退職後の日々は素晴らしいものになるはずだし、そうあるべきだ。ただ、実際に退職した後に何をするかという計画は必要だと思う。

旅であれ、家族との時間であれ、サイドプロジェクトの推進であれ、早期リタイア後の計画を立てておけば、見えないゴールに向かって突っ走るという落とし穴を避けられる。

落とし穴3:柔軟性がなくなる

FIREムーブメントは必ずしも柔軟性を考慮していない。

目標までの自分の進捗を把握するためには、いくら稼いでいくら使うべきか、資産運用でどれほどのリターンが得られるかを正確に知る必要がある。

たとえば今あなたが30歳で、すでに20万ドル(約2850万円)を貯蓄していて、45歳で資産100万ドル(約1億4300万円)を手にリタイアしたいのなら、その目標を達成するためには今後15年間にわたり毎年3万ドル(約430万円)を退職資金として積み立てる必要がある。これは、資産に対して5%のリターンがあると仮定した場合である。

しかし、あくまでもこれは今の時点を基準に状況を考えたものであり、15年のうちには多くのことが変わるだろう。

たとえば以下のような変化がありうる。

  • 今よりもいい(あるいは悪い)仕事に就いて、給料が上がる(あるいは下がる)
  • 市況の変化によって、リターン率が年平均5%より大きく(あるいは小さく)なる
  • 支出が増えるか減る
  • 引っ越す
  • 目標が変わる

柔軟にFIREを目指すことは可能だ。しかしそのためには、正しいアプローチをとり、古くなった目標やゴールに固執せず、状況の変化に応じて調整することが必要である。

この落とし穴を避ける方法の1つが、退職後の支出の大部分をカバーできるほど多くの資金を貯めるファットFIRE(Fat FIRE)を目指すことである。ファットFIREの目標は退職後もたくさん出費できるようにすることだが、当然ながら貯蓄が多いほど自由度の高い生活が実現する。

全体として、FIREムーブメントは多くの前向きな教訓を与えてくれる。しかし、FIREを目指そうかと考えている人は、真っ先に飛び込む前に潜在的な落とし穴や注意点をよく調べておくと良いだろう。

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