Illustration: Derplan13/Shutterstock, Alona Stanova/Getty Images, Design: Business Insider Japan編集部
「英語学習には興味があるけれど、なかなか上達しなくてやる気をなくしてしまう」「楽しくないので長続きしない」……あなたもそんな経験はないだろうか。
この新連載では、海外映画やドラマを楽しみながら、かつ英語学習にも活かす方法をご紹介。ナビゲーターはAI英語学習アプリ「abceed(エービーシード)」を運営するGlobee代表の幾嶋研三郎さんだ。
毎回1つの作品を取り上げ、ビジネスパーソンがすぐに活用できるフレーズも教えてもらう。
この週末はあなたもおすすめ作品にどっぷりハマりながら、英語学習に挑戦してみてはいかがだろうか。
7月28日(現地時間)、グーグル傘下のGoogle DeepMindが、ロボット制御用の世界初となる新たな人工知能(AI)モデル「RT-2(Robotics Transformer 2)」を発表しました。
言語による指示と視覚情報からロボットの行動を生み出すもので、トレーニングを受けていないタスクも自ら学び、高い精度でこなせるようになるそうです。
ロボットが人間のように学び、行動することができるとすれば、これまでのロボットの概念が大きく覆されるのではないかと個人的にも感じています。
また、7月6日には中国上海市で開かれた世界人工知能大会(WAIC 2023)に米EV大手テスラのイーロン・マスクCEOがビデオメッセージを寄せ、AIや自動運転技術について「人類は現在大きな変革の時期に差しかかっており、未来には大量のロボットと共存する可能性がある」と予測しました。
このようにAIを搭載したロボットは、われわれ人間にとって切っても切れない関係となっていくことでしょう。
さて、ロボットと言えば宇宙からやってきたロボット生命体たちの活躍を描く人気シリーズ第6弾『トランスフォーマー/ビースト覚醒』が2023年8月4日に日本でも公開されました。
公開から3日間で興行収入3億5322万円を記録しており、同日公開の洋画作品でNo.1の大ヒットスタートとなっています。シリーズ前作『バンブルビー』との比較では驚異の153%となるなど、いま最も注目すべき作品の1つではないでしょうか。
映画のトランスフォーマーシリーズはもともと、日本のタカラトミー社とアメリカのハズブロ社によって展開されている、変形ロボット玩具がモデルとなっています。
1997年(日本放送時)の『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』は爆発的ヒットを記録するなど、全世界的にも展開されているシリーズの1つです。
今回は、トランスフォーマーシリーズをまだ観たことがない方にもおすすめしたい、シリーズ第1弾『トランスフォーマー』を題材に、英語を楽しく学んでいきましょう。
ビジネスパーソンにおすすめ『トランスフォーマー』
中東のカタール米軍基地を謎の巨大ロボットが襲撃。ロボットは軍用ヘリに姿を変え、まるで意志があるかのように攻撃を仕掛けてきた。かつてない緊急事態に、敵の情報収集を急ぐアメリカ政府。そのころ、アメリカの冴えない高校生サム(シャイア・ラブーフ)は中古車のカマロを手に入れる。しかし、そのカマロは宇宙の彼方からやってきたロボット生命体“トランスフォーマー”の一員で、宇宙征服を企む悪の“トランスフォーマー”メガトロンを追って地球を訪れたことを知り……。
Sci-Fi(サイエンス・フィクション)のこの作品は一見ビジネスで使用できるフレーズはないのではないかと思われるかもしれませんが、“トランスフォーマー”と共に戦うアメリカ兵やアメリカ政府の会話からも、私たちが日常のシーンで使える英語を学ぶことができます。
また、軍事用語以外は複雑な表現が少ないため、英語中級者の方であれば比較的難易度が低い作品とも言えます。
TOEIC500点からの初級者におすすめ
『トランスフォーマー』の再生時間は2時間24分、総語数1万4088語、フレーズ数は2360です。
リスニング難易度の指標の1つであるWPM(1分あたりのワード数)で比較すると、ネイティブの会話は約160台、早口の人だと約200台、TOEICは平均150台なのですが、『トランスフォーマー』の会話部分は平均128。前回ご紹介した『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』と同様にTOEICの難易度で表すと500点程度、英検だと準2級レベルの学習者のリスニング学習に最適な作品です。
それでは、作中に登場するフレーズの中から、日常のシーンでも役立つ表現をご紹介します。
活かせる映画フレーズ
フレーズ1「I need a moment.」
悪のロボット生命体メガトロンによって国家機密をハッキングされることを恐れた国防省に雇われたスペシャリストのマギー(レイチェル・テイラー)は、奇妙な信号データに気づき秘密裏にファイルを持ち出し、友人のグレン(アンソニー・アンダーソン)を訪ねます。グレンに「国家機密の情報がある」と伝えたときに、グレンが一緒にいたグレンの従兄弟に機密情報を守るため部屋を出るよう依頼するシーンでのフレーズです。
I need a moment.
出てくれ。
直訳すると「少し時間が欲しい」となりますが、この表現は「席を外してほしい」と伝えたい時に使われます。一人になりたい時でも使えますし、誰かと二人きり(もしくは複数)になりたい時にプライバシーを尊重してほしいという意味でも使うことができます。
では、ビジネスパーソンが日常的に使える使用例を1つ挙げてみます。
I need a moment to discuss this with my business partner before making a decision.
決断を下す前に私のビジネスパートナーと話し合いたいので、二人きりにしていただけますか?
例文では2人きりになりたい場合を想定してみましたが、一人になりたい時は、
I need a moment to think about it.
少し考える時間が欲しいので一人にしてくれませんか?
といった使い方もできます。
日常的にも使用できるフレーズですので、ぜひ覚えてみてください。
フレーズ2「break (something) down」
国家機密を持ち出したことがバレてしまったマギーは、一緒にいた友人のグレンと共に逮捕されてしまいます。これから取り調べを受けるような雰囲気の中で、グレンがマギーに一言放つシーンでのフレーズです。
Let me break it down to you how it's gonna happen.
これから何が起こるか分かりやすく説明させてくれ。
この句動詞 break (something) down は「言葉を1つひとつ分解し、相手に分かりやすく説明する」といったニュアンスがあり、日本語で言うところの「噛み砕いて話す」になります。
ビジネスパーソンが日常的に使える使用例を1つ挙げてみます。
This pamphlet breaks down the different loan types and interest rates our bank offers.
このパンフレットでは、私たちの銀行で取り扱っているローンのタイプと金利について詳しく説明しています。
他にもよく使われるフレーズとして、
I'll break it down for you.
あなたに詳しく説明します。
などと言ったフレーズがあります。会社説明や商品説明、売り上げ報告など、覚えておくだけでビジネスシーンでも活用できるフレーズです。
フレーズ3「in someone's debt」
ここで感動的なシーンからも1つ、学べる英語をご紹介します。
悪のロボット生命体メガトロンとの一戦の後にオプティマス・プライムが主人公サムに話すシーンでのフレーズです。
We are in your debt.
我々は借りができた。
名詞debtには「借り、恩義」と言った意味があり、「心より感謝している」というニュアンスがあります。誰かに何か素晴らしいことをしてもらった時、感謝の意を伝える際に使用することができる単語ですので覚えておくととても便利です。
日常的に使用できる例も挙げてみましょう。
After everything they have done for me, I am truly in their debt.
あなたたちが行ってくれたすべてに対して、心より感謝しています。
また、ビジネスシーンではメールやチャットの文章などにも使用することが可能です。
例えば会社が大量の注文を受け、製造部門が期日に間に合わせるために残業をした際にこのようなメールやチャットの文章を送ることができます。
Thanks to efforts of our manufacturing team, we were able to double production in order to keep up with demand. We are truly in their debt.
今回発生した大量の注文に間に合わせるために努力してくださった製造部門のおかげで、生産数を倍増させることができました。部門の皆様には心より感謝しております。
in someone's debtは取引先の相手に使うというよりも身内のしてくれたことに使用する場合が主となるフレーズです。社内向けにお礼を言う時などにぜひ活用してみてください。
映画のシーンを使ってフレーズを覚えることで、どの場面で使用する英語なのかイメージがつきやすかったり記憶に残りやすいといったメリットがあります。
毎日暑い日が続いていますので涼しい室内で映画を楽しみつつ、英語学習も同時並行してみてくださいね。
幾嶋研三郎:株式会社Globee 代表取締役社長。2015年3月に慶應義塾大学法学部卒業。2014年6月、大学在学中に株式会社Globeeを創業。英語学校の運営を通して、IT×英語教育の可能性を感じ、『学習量×学習効率の最大化』をミッションとしたAI英語学習アプリ「abceed」(現在登録ユーザー数300万人を突破)と、『学習支援効率の最大化』をミッションとした反転学習プラットフォーム「abceed for school」の開発を行う。
※今回ご紹介した『トランスフォーマー』はabceedで配信中です。