「不動産投資」を実践できる6つの手段:その長所と短所とは?

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不動産投資は不労所得、ポートフォリオの分散、インフレヘッジに有効な手段だ。

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  • 不動産投資は、目先の収入と長期的な値上がり益を提供する。具体的には、主に6つの手段が存在する。
  • 不動産投資信託(REIT)、不動産リミテッド・パートナーシップ(RELP)、不動産クラウドファンディングは、物件を直接管理する必要のない不動産への間接的な投資方法だ。
  • より直接的な不動産投資方法としては、持ち家や賃貸物件、リノベーション物件の購入がある。

不動産は、賃料と、物件価格が上昇した時の値上がり益という両方が得られる、収益性の高い投資であることが多い。また、株式や債券とは異なる影響を受ける資産として、ポートフォリオを分散する優れた手法でもある。

一般の人にとって、不動産は思っているよりもずっと手に入れやすいかもしれない。相当な時間、忍耐、そしてもちろん資金は必要だが、ほとんど誰もが不動産に投資できるのだ。

不動産投資戦略を実践する6つの方法を紹介しよう。

1. 不動産クラウドファンディング

不動産クラウドファンディングは、大勢の個人から資金を調達し、不動産に投資する戦略である。不動産開発業者と関心のある投資家を結びつける集会所/市場を提供するオンラインプラットフォームを経由して行われる。投資家は資金を提供する代わりに、開発プロジェクトに対する債権や株式を受け取り、うまくいけば毎月あるいは四半期ごとに配当を受領する。

誰もが、どの不動産クラウドファンディングプラットフォームにでも投資できるわけではない。多くは適格投資家、つまり富裕層や経験豊富な個人に限定される。だが、ファンドライズ(Fundrise)グラウンドフロア(Groundfloor)のように、初心者が少額投資できる敷居の低いプラットフォームもいくつかある。

こうした不動産投資アプリを通じて口座を開設し、自分の投資目的に基づいてポートフォリオ戦略を選び、ブローカーに各種投資ファンドに資産を分散してもらうか、あるいは、サイトを閲覧して自分で投資商品を選び、24時間365日、ダッシュボードで投資状況を把握するかのどちらかだ。

不動産クラウドファンディングは便利ではあるが、相当なリスクも伴う。プライベート投資のため、株式のようなその他上場証券ほど流動性はなく、簡単に売却できない。投資した資産は長期間引き出せないと心得ておこう。例えば上述のファンドライズは、最低でも5年の投資期間を推奨している。

2. 不動産投資信託(REIT)

不動産投資を始めてみたいなら、不動産投資信託(REIT)は、自分で物件を購入する時間や費用をかけずに、不動産市場に対するポジションを取る良い方法だ。

REITは、物件や不動産ベンチャーを所有、運営し、資金調達を行う企業である。投資信託や上場投資信託(ETF)のように、REITは1つの物件だけでなく、資産をバスケットで所有する。投資家はREITの投資口を購入し、自分が保有する割合に応じてこれら資産が生み出す収入を得る。

最も一般的なREITである株式REITでは、投資家の資産を集め、それを不動産物件の購入、開発および管理に充てる。REITはマンション、病院、ホテルまたはショッピングモールといった特定種類の不動産に特化して運用される。REITは年間収入の90%を投資家に分配金として配分しなければならない。

REITの最大の魅力は、大半のREITが取引所で取引されることだ。つまり、REITは不動産を所有してその利益を得る機会と、株式投資の持つ手軽さと流動性を兼ね備えた商品という訳だ。

REITは通常、家賃収入を得ることに注力しているため、定期的なリターンと高い分配金が見込める。またREITへの課税方法がユニークなため投資家には魅力的だ。REITはパススルーとして構築されている。これは、獲得した家賃収入や値上がり益に対してREITは税金を支払わず、そのまま投資家に分配される仕組みだ。これは実質的に投資家に対するリターンが高まることを意味する。

流動性を維持したいなら、上場REITへの投資に限定しよう(私募REITもいくつかある)。 上場REITは株式と同じように証券会社を通じて、課税口座やNISA、iDeCoでも購入できる。

「上場REIT」は主要株式市場に上場している。投資家は通常の株式のように、証券会社を通じてこれらREITの投資口を売買できる。上場REITは流動性が高く、厳格な規制要件を遵守しなければならないと、ベルエア・インベストメント・アドバイザーズ(Bel Air Investment Advisors)のシニアバイスプレジデント、リチャード・ラトナー氏は語る。

一方、私募REITは証券取引所に上場しておらず、売買も限定されることが多い。「投資家はロックアップ期間や特定の引出制限を課せられることが多く、投資口の償還や売却の機会は制限される可能性がある」とラトナー氏は言う。「だが、私募REITはより高いリスクとリターンを提供する見込みのある、特別な不動産ポートフォリオに独占的にアクセスできることがある」

3. 不動産リミテッド・パートナーシップ

不動産リミテッド・パートナーシップ(RELP)は、ほかの投資家の資金を合わせて、単独では管理や購入が難しい物件を購入・賃貸・開発・売却することで、投資家に分散された不動産投資ポートフォリオを提供する。

REITと同じように、RELPも物件のプールを所有するが、REITと違うのはその構造と組織形態だ。RELPは主にプライベート・エクイティの形式であり、取引所では取引されない。

その代わり、RELPには通常、7年~12年という運用期限が定められている。この間RELPは企業のように事業計画を立て、購入や開発、管理、そして最終的に売却する物件を見極め、その間の利益を分配する。すべての所有物件を手放した後、パートナーシップは解散する。

一般的にRELPは富裕層の投資家向きだ。大半のRELPでは最低投資金額が2000ドル(約28万円)以上で、購入する物件の数や規模によっては、最低「買い付け」額が10万ドル(約1400万円)から数100万ドルとかなり大きくなることも多い。

4. 大家になる

不動産投資の伝統的な方法の1つは、物件を購入し、その全部または一部を賃貸に出すことだ。大家になるにはさまざまな形式が考えられる。

まず、戸建て住宅を買って賃貸に出す戦略だが、この戦略で収益が得られるのは一般管理費が低い場合のみだ。仮にテナントの家賃で住宅ローン、保険、税金、メンテナンス費用を賄えなければ、実質的に損を被る。毎月の住宅ローンの支払いを比較的一定額に抑えながら、家賃が値上がりし、長期的に手取りが増えることが理想的だ。

最近は、ルーフストック(Roofstock)のようなサイトを通じ、オンラインで賃貸物件を物色できる。このサイトでは、借り手がついた空き家の売り手がその物件を掲載し、購入手続きを容易にできる。また、このサイトでは、その新しい買い手にプロパティマネジャー(不動産管理人)を割り当てられるのだ。

だが、テナントリスクや物件管理リスクに直面するかもしれないことは覚えておこう。「不動産の所有・管理には、不動産管理に伴う問題や訴訟、コンプライアンス上の問題など責任や法的義務を伴う。賃貸物件の場合は、無責任な賃料未払のテナント、空室の長期化、テナントによる物件の破損といったリスクもある」と、ラトナー氏は言う。

もう1つの選択肢が「ハウス・ハッキング」だ。これは、集合住宅を購入し、その1つに住みながら、他の部分を賃貸に出すというものだ。これは、自分の生活費を下げると同時に、住宅ローン、税金および保険料をカバーする収入を捻出する戦略だ。

ハウス・ハッキングの手軽な方法としては、自宅をAirbnbなどのサイトを通じて貸すことである。これにより、長期賃貸契約を結ばずに、毎月追加収入を得られるだろう。

反対に、もっと野心的な出口戦略を目指すならば、コンドミニアム・コンバージョンという方法もある。これは、アパートなどの集合住宅を購入して個々の部屋を賃貸に出し、その後コンドミニアム(マンション)に転換して一部屋ずつ売却するという戦略だ。ボストンに拠点を置く不動産業者で不動産投資家のダナ・ブル氏によると「アイデアとしては、少し安く建物を買って、最終的に高値で売る」。

5. リノベーション

さらに一歩踏み込んで、住宅を買ってそれをリノベーションして再販するという手もある。テレビ番組では簡単に見えることが多いが、「リノベーション」は依然として最も時間がかかり、高くつく不動産投資方法の1つだ。だが同時に、最も高いリターンが狙える。

リノベーションで成功するには、予期せぬ問題や予算の増加、時間の経過に伴い発生するミス、スケジュールの長期化、市場売却時の問題に常に備えておく必要がある。

請負業者、内装デザイナー、弁護士、会計士など自分が信頼できる専門家チームを構築することが特に重要だ。そして何かトラブルがあったときのために必ず現金を準備しておく。経験豊富なリノベーション業者であっても、想定以上のプロジェクトの長期化やコストアップが避けられないときもある。

6. 自宅に投資する

最後に、不動産投資をしたいなら自宅に目を向けてみよう。住宅所有は多くのアメリカ人が達成したい夢であり、そう思うのは当然だ。住宅価格はここ何年か上がったり下がったりしているが、長い目で見れば一般的に値上がり傾向にある。

大半の人は住宅を現金で買わずに、住宅ローンを借りる。住宅ローンの支払いと住宅の所有は、不動産市場の変動から身を守ることができる長期投資だ。自宅への投資は、ほかの不動産投資より先に行うべきステップとして見なされることが多く、大きな資産を手にしているため、純資産が増えるというさらなるメリットもある。

不動産投資の長所と短所

長所 短所
  • REITや賃料からもたらされる不労所得という選択肢

  • アクティブ運用と積極的な物件管理という選択肢

  • 保有物件の長期的な値上がり

  • ポートフォリオの分散と安定

  • 市場変動に対するヘッジ

  • 金利や減価償却といった税金面でのメリット

  • 流動性のない資産

  • 物件価値が長期的に下がる可能性

  • 通常最低5年という長期の資金確約が必要

  • 物件の管理、メンテナンス、リノベーション費用が高い

  • 一般的に、最低投資金額が大きい


不動産投資は、長期的な値上がり益を期待しながら不労所得を得る優れた方法だ。また、投資を人任せにはしたくない投資家には適している。

「プライベート不動産投資では、物件の選定や管理に投資家がより積極的に関与することが多い。この関与水準が、物件のパフォーマンスを改善させ、価値を高め、リターンを最大化するアクティブ戦略の実践を可能にする」とラトナー氏は言う。

ラトナー氏はまた、不動産投資のもう1つの長所は、市場ボラティリティからのヘッジになることだと言う。不動産は株式市場のボラティリティに対するクッションになり得る。伝統的な投資商品のパフォーマンスが悪いときに、不動産投資の価値が底堅く推移したり、上昇したりすることさえもある。

とはいえ、不動産投資は極めて流動性が低く、株式や投資信託といったその他の資産に比べて長い投資期間を必要とする。

「不動産は株式や債券と比べて比較的流動性が低い。特に市場環境が悪化している時期は、物件の売却に時間がかかることがあり、必要時に資金を手にできないことがある」とラトナー氏は言う。

もう1つの短所は、不動産の所有やメンテナンス費用は安くないということだ。一般的に投資を始めるには最低でも5000ドル(約70万円)必要だろう。一方、ファンドライズイールドストリートなどの大手不動産投資アプリでは最低投資額がもっと低い。だが、実際に物件を買うには2万ドル(約290万円)以上は必要になるかもしれない。

不動産投資の税制面でのメリット

不動産の投資方法によって、税制面でさまざまなメリットがある。

「不動産投資には、住宅ローン控除や不動産の減価償却といったさまざまな節税効果がある」とラトナー氏は言う。

不動産を貸した賃貸収入から差し引くことができる経費には、減価償却費、固定資産税、金利、管理費などを含めることができるので、実際の不動産所得の金額はかなり下がる。同様にREIT自体も非課税なので、投資家の段階で一度だけ課税される。

持ち家を住宅ローンで購入している場合には、住宅ローン減税を活用しよう。年末のローン残高の0.7%を所得税(一部翌年の住民税)から最大13年間控除できる。

成功する不動産投資戦略

どのような不動産投資であろうとも、所定の戦略は大いに役に立つだろう。

金銭面の備えを怠らない:不動産は特に高額な投資のため、頭金、パートナーシップの持分あるいは物件の直接購入のために現金を手元に置いておかなければならない。また、何か修繕が必要になった場合に備えて資産を留保しておくことも大事だが、これは日々の生活防衛資金とは完全に切り離しておくべきだ。不動産投資を始める前に、生活防衛資金を構築し、消費者ローンを返済し、退職口座に自動的に貯蓄する仕組みを作っておこう。

現地市場を知る:「不動産の重要な3要素は、1に場所、2に場所、3に場所」という古い格言がある。現地市場を知ることから始めよう。不動産代理店や現地の人と話して、誰がその地域に住んでいるか、誰が引っ越してくるのか、その理由はなぜかを突き止めよう。そして、不動産価格の推移を分析する。つまり、自分で調査をして、「不動産と人との関係を見極める。なぜならば、それが不動産であり、不動産は土地や人との関係に基づくビジネスだからだ」とブル氏は言う。

シンプルさを維持する:不動産投資ではシンプルな戦略が長続きする。不動産投資の目的が不労所得を得ることならば、それを達成するために大胆に投資しなければなどと思い込んではならない。小さい金額から始め、経費を低く抑えることが最善だ、とコーチカーソン・ドット・コム(CoachCarson.com)の不動産投資家チャド・カルソン氏は言う。

不動産投資のよくある質問(FAQ)


1000万円を不動産に投資するのにおすすめは?
  • 不動産クラウドファンディング、REIT、不動産リミテッド・パートナーシップ、あるいは大家になって、1000万円を不動産に投資することができます。1000万円は大金なので、複数の不動産に投資してポートフォリオを分散させ、安定させること良いでしょう。
50万円の資金でも不動産投資はできますか?
  • 選択肢は限られてきますが、不動産投資は50万円の資金でも実施可能です。しかし、実際に物件を購入する場合、投資価格はもっと必要になります。
100万円を不動産に投資する場合は?
  • クラウドファンディングサイト、REITなどが良いでしょう。ほとんどの不動産投資プラットフォームでは、一戸建ての賃貸物件、個々の物件、ベンチャーファンドへの投資を始めるのに必要な金額は100万円未満です。物件によっては大家になることも可能かもしれません。


不動産投資は良いアイデアか?

不動産投資は思っているよりは簡単かもしれないし、こうした収益性の高い資産に投資をする方法は数多くある。

物件管理を行わない純粋な不動産投資としては、不動産クラウドファンディング、RELPへの投資、REITの購入が挙げられる。これらはどれも、大規模プロジェクトだけに投資をしたり、アドバイスなしで不動産投資を行ったりするリスクを軽減できる。

自宅や賃貸不動産、リノベーション用物件の購入といったより直接的な不動産投資もまた価値のある戦略だ。だが、これらの方法を実践する前に自分で調査を行い、リスクを取るだけの十分な金銭的余裕があることを確認し、現地の不動産市場に精通しておこう。

不動産全体は、相対的に流動性が劣る資産であることは覚えておきたい。プロジェクトの実行や利益が出るのには時間がかかることがある。したがって、不動産投資を検討する場合はいつでも、長期投資として考えなければならない。

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