本記事の筆者、アリアナ・アーギャンデウェル氏。
Ariana Arghandewal
- 私が小さい頃、一番よく聞かされたお金についてのルールは「1に貯蓄、2に貯蓄、3・4がなくて5に貯蓄」だった。だが、一度たりとも投資について学んだことはない。
- また、学生ローンは私が重視する教育を受ける機会を提供する手段なのに、それも悪だと聞かされてきた。
- 「お金について話すな」「『不要不急の』支出は切り詰めろ」というのも、ずっと耳にしてきた悪い助言だ。
私たちミレニアル世代は、お金との付き合い方が一風変わっている。
私たちが成人した2008年頃は世界金融恐慌の最中で、あらゆる「安全な」金融機関が破綻寸前で、従来の金融アドバイスが疑問視されていた。その後、うんざりした人々に金融アドバイスを提供することを目的とした「金融リテラシー」という機運が高まった。
FIRE(経済的自立/早期退職)ムーブメントやその他に関する情報を駆使して、お金について学び直しをしていた私は、若い頃に学んだお金に関する多くのアドバイスは時代遅れで、場合によってはまぎれもなく有害なことを実感した。
私が若いころに学んだお金に関する悪い助言で、子どもには伝えたくないものを以下にご紹介しよう。
1. クレジットカードを何枚も持つな
絶対に無視したい1つ目のアドバイスは、クレジットカードを何枚も持つのは悪だ、という助言だ。これは真実とまったくかけ離れている。
過去10年間、最もお得なクレジットカードが提供する入会ボーナスを通じたトラベルハッキング(予約サービスやマイレージ特典を駆使して、誰よりも安く旅行ができる方法を探すこと)が、信じられないような機会へと扉を開いてくれた。家族をヨーロッパやアジアに連れて行き、モルジブの保養地を予約し、メキシコで全費用が含まれたバケーションを楽しんだ。どれも、クレジットカードのポイントとマイルを使ってだ。
旅行費用を数千ドル(数十万円)節約できただけでなく、クレジットカードがなければ絶対に手が届かなかったような旅行を予約でき、すばらしい経験をした。10年間に数百マイル獲得できるクレジットカードの入会特典がなければ、このようなことは不可能だっただろう。
現在、私の財布にはクレジットカードが10枚以上入っている。そう言うと「クレジットスコアが悪いに違いない」と思われるだろう。何年かの間にいくつかのカードは解約したが、今のクレジットスコアは760だ(世界で最も使われているFICOスコアでは740~799がベリーグッド[Very good]、それ以上のスコアが最上位のエクセプショナル[Exceptional]に分類される)。クレジットカードを何枚も持っていても、責任をもってそれらを使う限りクレジットスコアを改善できる。つまり、使用率を30%未満に抑え、毎月残高を支払い、延滞を避けるのだ。
2. 1に貯蓄、2に貯蓄、3・4がなくて5に貯蓄
物覚えが良い私が記憶している限り、最もよく言われたことは、投資よりも貯蓄が大事だというアドバイスだ。我が家は移民の家族だったので、生活防衛資金を貯め、家を買い、現金で中古車を買うといったことの大事さをたたき込まれた。公立校で受けた金融教育もまた良くなかった。思い出せる限り、投資ではなく貯蓄をするように教えられた。
だから私は当時、一生懸命稼いだ現金を高金利預金口座に預け、わずかばかりの金利を得ていた。そのため、お金を増やす多くの機会を逃してしまった。投資をするなどとは思いもよらなかったのだ。大学を卒業したのが、世界金融危機の只中だったということもある。何百万人もの人が株式に投資をして退職資金を失ったのを見て、株式市場に投資をするのが怖かったのだ。
だが、さまざまな金融オンラインコミュニティを通じてようやく投資の重要さを理解し、すぐに投資を始めた。もっと早く始めておけばよかったと思う。
3. 離職するなら「生活防衛資金」を構築してから
生活防衛資金として最低6カ月分の支出を貯蓄しておくのは、堅実なアドバイスに聞こえる。だが私の場合、仕事を辞める時にこのアドバイスに従ったことはないが、いつだってうまくいった。これに従っていたら、ストレスの多い仕事を辞めるのをためらってしまい、フリーランスや別の職場でもっと高い賃金を得る機会を失ってしまうのだから、とんでもないアドバイスだ。
それに、伝統的な仕事でなくても、ギグエコノミー(フリーランスなどの立場で、単発もしくは短期の仕事を請け負う働き方)で収入を得られる今のご時世では、このアドバイスはもう過去のものと断言できる。
私が昨年、給料が10万ドル(約1400万円)という「夢」の仕事を辞めたとき、数えきれないほどの人が、もっと金を貯めるべきだとか、別の仕事を見つけてから辞めるべきだとか、私の決断が間違っていると言った。そのため、辞めようと思っていたのに、その職に数カ月とどまった。
だがすぐに、その職にとどまることで、収入機会を制限していたことに気がついた。職場を去ってからすぐに、私はフリーランスとしてそれまでの月収と同額を稼いだだけでなく(時にその金額を上回ることも多かった)、労働時間は減り、自由を多く手にできたのだ。
4. 「不要不急」の支出を切り詰めろ
何年もの間、ミレニアル世代の誰もが、お金の心配のタネとして5ドル(約726円)のコーヒーを悪者扱いしてきた。私は20代の頃、毎日のコーヒーを飲む習慣や外食といった不要不急の支出を切り詰め始めた。その結果どうなったかって? 自分がみじめになっただけだ。
こうした支出は不必要なものだが、これがあるから私は、いくつもの仕事を掛け持ちしている日々に耐えられるのだ。長い1日の終わりに、楽しみにしていたフローズン・アイスコーヒーで自分にご褒美をあげれば、燃え尽き症候群を回避できる。人は生きるために生活をするだけでなく、ときには仕事の成果を満喫しなければならない。
このとき、マネーのプロから「支出を減らすのではなく、もっと稼ごう」という逆張りのアドバイスをもらった。この言葉は「(パンがないなら)ケーキを食べればいいじゃない」というあの有名なマリー・アントワネットの言葉にも聞こえるが、素晴らしいアドバイスだ。資産状態を健全に保つために、毎日の5ドルの支出もできないようなら、その時こそ所得を増やすときだ。
生活の質を高める支出を削減するのではなく、収入を増やす方法を見つけてみよう。これは口で言うほど簡単なことではないことはわかっている。だが、今はギグエコノミーという生き方があり、オンサイン上でいくつも副業を見つけられるので、まったく不可能という訳ではない。
5. 学生ローンは悪である
学生ローン危機は現実の問題であり、多くの人々の生活を困難に陥れている。それについては疑いようがない。だが、こうした学生ローンを巡る議論が「すべての学生ローンが悪」であり、転じて、「大学はお金の無駄」という方向に向いてしまうことが多い。
私にとって、大学はスキルを身に着けるだけの場所ではなかった。大学とはまさしく批判的に考えることを学び、規律を身につけ、より良い自分になるための場所だった。
私はアフガニスタンという、特に女子に対する教育機会が限られた国の出身だ。教育はいつだって、計り知れないほどの特権である。教育を受けられたからこそ私の家族は、自国で他の人よりも良い暮らしができたのだ。学位が役に立つかどうかという議論は、常に特権階級の人がするものだ。(高額であっても)誰でも教育を受けられるという事実は、私にとって奇跡そのものだから。
私は5万ドル(約700万円)の学生ローンを借りた。その代わり、私はかけがえのない教育を受け、それが13年後、借金を完済した後も私の役に立っている。最も給料が低い仕事でさえ、大学を卒業していなかった場合よりも多かったのだから。
数えきれないほど仕事の面接に行ったが、面接官は私の学歴が素晴らしいと言ってくれた。そのおかげで採用されることも多かった。だから、教育は無意味だとか、学生ローンは悪だといったよく聞く言葉は間違っていると思う。私は当時、教育と学生ローンの恩恵を受けたし、今でもその利益にあずかっている。
副業ができることは素晴らしい。だが、明日状況が悪化し、仕事を探さなければならないとしても、学歴は私に一定の保障と唯一無二の競争優位性を与えてくれるだろう。高等教育は無駄ではない。優れた教育のために学生ローンを適度に借りることは、返済計画があれば報われる行為だろう。
6. お金の話はするな
「お金の話をするのは下品だ」——このアドバイスは何度も耳にしてきた。親からも、勤め先からも、誰しもがそう言われてきた。だが、このアドバイスは実は収入アップの可能性には邪魔だ。
自分の給料が同僚よりも著しく低いことに気がついたのは、働き出してから何年も経ってからだ。数年前、求人面接を受けて、私には相当だと思える金額が提示された。だが、別の会社で同じ仕事についている友達に話したところ、その条件は市場水準を大きく下回っており、私は自分を安売りしていたことがわかったのだ。
求人の口コミサイト、グラスドア(Glassdoor)をチェックして自分でも調査はしていたが、こうした給与の見積りは必ずしも正しくはないし、ニッチな専門職について正確な数字はわからない。友達と話し、彼女の給与を知ることで、最初に提示された金額をおよそ4万ドル(約560万円)上回る基本給と、1万ドル(約140万円)の契約金を交渉できた。
お金についての会話は、友達とであれ、同僚(特に自分の会社の同僚)とであれ、絶対に必要不可欠だ。こうした人たちにいくら稼いでいるかだけでなく、どうやってそれを勝ち取ったのか聞いてみよう。何年もの間、私はまったくの他人と話すことで、投資機会について学んできた。また、お金について話すなと言うアドバイスに従っているときは、男女の給与差がこんなに大きいとはわからなかった。