シアトルにあるアマゾン本社。
LINDSEY WASSON/Reuters
アマゾンは重要な意思決定を行う際、16項目からなるリーダーシップ・プリンシプルを守ることで知られている。
しかし、同社の厳しい出社義務化(RTO:Return To Office)ポリシーは社内で激しい議論を巻き起こし、有名な原則をジョークのネタにする状況を生み出した。
アマゾンのある社員は「Leadership Principles for RTO(RTOのためのリーダーシップ・プリンシプル)」と題した16項目のパロディ版を社内の従業員フォーラムに投稿。Insiderが確認したこの投稿は、16項目に手を加えて従業員のフラストレーションを表現していた。関係者によると、社内ですぐに話題を呼び、広まったという。
パロディ版の16項目の1つは、「Deliver Results(結果を出す)」をネタにした「Deliver Butts to Seats(お尻をシートに届ける)」だ。
「リーダーはビジネス上の重要なインプット、つまり当然のことながら企業の不動産利益にフォーカスし、従業員に週3日、ハブオフィスに出社することを強制することでそれを実現しようとしています。失敗したにもかかわらず、リーダーたちは意地悪な電子メールを送り、コンプライアンスを確保するために従業員をPivotに従わせようとします」
※Pivotは、アマゾンの悪名高い業績改善計画の一部。
アマゾンは、2022年はそのような計画はないと言っていたにもかかわらず、従業員を強制的に出社させ始めたことで、従業員の間ではRTOポリシーに対し異例なほどの反感が高まっている。当時、アマゾンのアンディ・ジャシー(Andy Jassy)CEOは、リモートワークについては「適切に対応する」と述べていた。
しかし2023年2月、アマゾンは大部分の従業員は少なくとも週3日、オフィスで働くようになると発表。一部の社員は出社に賛成したが、それ以来、アマゾンではこの問題が大きな議論を呼んでいる。7月には、アマゾンはスタッフに中核的な「ハブ」オフィスの近くに引っ越すか、さもなければ「自主的に退職」するよう求め、一部の従業員はさらに反発を強めた。
現在、一部の従業員は、RTOポリシーに対するドラスティックな対抗手段を検討している。
なお、本件に関してアマゾンの広報担当者にコメントを求めているが、返答はない。
以下では、パロディ版のリーダーシップ・プリンシプルを紹介する。
RTOのためのリーダーシップ・プリンシプル16カ条
RTOと引っ越しの強制は、S-チーム(同社経営層)が明らかに我々と同じ原則に従っていないことを証明しています。そこで彼らをサポートし、彼らの今のやり方により一致する新しい原則を作成することとしました。今後、新入社員向けのオリエンテーション資料で、このプリンシプルを自由に使い、実際はどんな会社に入ろうとしているかを知らせてあげてください。
株主にこだわる:Shareholder Obsession
リーダーは株主を起点に考え、逆算して仕事をします。株主の価値を維持するために精力的に働きます。リーダーたちは顧客にも注意は払いますが、何よりも株主を中心に考えることにこだわります。
寄生主義:Parasitism
リーダーたちは日和見主義者です。リーダーは短期的視点で考え、長期的な価値のために、短期的な成果を犠牲にしません。リーダーは会社全体のためでなく、自分たちのために行動します。問題が起きたときには「残念だったな、私はやるべきことはやったのに」などと口にします。
コピーして複雑に:Copy and Complicate
リーダーはチームに革新と発明を求めます。ただしそれは、廊下での自然発生的な会話からしか生まれないようです。リーダーは常に、とにかく何でも複雑にする方法を見つけます。リーダーは外部の状況に目を光らせ、他のテック企業の取り組みを何でもコピーすることで新しいアイデアを探し出します。それは、「物事が常にどのように行われてきたか」(つまり、過去の事例)によって制限されています。リーダーは決して新しいことをしません。なぜなら、新しいことは理解できず、不愉快になるからです。
常に間違える:Are Wrong, A Lot
リーダーはよく間違えます。判断力も直感も鈍いです。リーダーは多様な考え方を積極的に避け、耳を指で防ぎ、「ラララ〜、聞こえない!」と言いながら仕事をします。
成長せず、頑固に:Stagnate and Be Stubborn
リーダーは学ぶことをやめ、自分の向上を目指すことはありません。伝統的な方法を頑なに守り、それを強制するために行動します。
最高の人材を解雇したり降格させる:Fire and Demote the Best
リーダーは従業員が不満を原因に辞めるたびに経費を削減します。リーダーは、優秀な人材は望んで組織を離れ、別の誰かのために働くものだと認識しています。リーダーは、他のリーダーがハブオフィスへの移転を望まない場合、リーダーから降格させます。私たちは、あなたが他のチームで役割を見つけられるよう働きかけています。猶予は今から90日。それができなければ自主的に退職しなければなりません。幸運を祈っています!
最低水準を求める:Insist on the Bare Minimum
リーダーはあなたが週に何日オフィスに出社しなければならないかについて、容赦のない、高い基準を定めています。多くの人は、基準は不当に高いと思うでしょう。リーダーは絶えず圧を強め、チームを各地にあるハブオフィスに移転させます。リーダーは、アジャイルデスク(フリーアドレスなど、柔軟に変更できるオフィス)での注意散漫のせいで問題が次々と起こることを防ごうとしています。エネルギーを高めましょう!
小さく考える:Think Small
狭い視野で思考することは自己達成予言です。リーダーは実際に実行する方法について何の考えもなしに、大胆な方針を打ち出します。いつもと同じように考え、周囲を見ずにまっすぐ前だけを見て、うっかり他の方法を知ることがないようにします。
無謀を重視:Bias for Recklessness
不動産投資ではスピードが重要です。多くの意思決定や行動はやり直すことができませんが、とにかく大々的に研究してはいけません。何でもやってみましょう。きっとうまくいくはずです。大胆で無謀なリスクを取ることに価値があります。
無駄遣い:Extravagance
私たちはたくさんのリーソスでより少ないことを実現します。不必要なオフィススペース、IT消耗品、電気代、水道代、従業員の引っ越し費用などを支払うことは議論を呼んでいますが、おそらく良いことのはずです。ハブオフィスにいる限り、人員を増やすと追加のポイントが得られます。さもなければ、 リモート社員やバーチャル社員を強制的に削減することで節約しましょう。これぞウィン・ウィン!
信頼を失う:Burn Trust
リーダーは話を聞かず、従業員をだまし、他人をリスペクトしません。
従業員と約束を交わしても、メディアに漏れない限りは、手に余るし厄介なので破ってしまいます。リーダーは自分やチームの体臭は香水だと勘違いしています。リーダーは自分自身とチームを他人と共有することのない基準で評価します。
深く信じる:Believe Deep
リーダーは仮説レベルで行動し、ディテールを考慮せず、決して監査しません。そして圧倒的なデータと自分たちの先入観が異なると懐疑的になります。懐疑的になるのはデータに対してであって、自分の信念ではありません。リーダーの信念は常に正しい。残念ですが、それは明らかだったと思います。
同意せず従う:Disagree and Comply
リーダーは自分の決定に反対する人からの異議申し立てを無遠慮に却下することができます。なぜなら、そうした人たちと関わることは不快で、疲れるからです。
リーダーは、信念を持ち、容易にあきらめません。ロジックや基本的な人間の品性であれ、いかなるものにも妥協しません。しかし、いざ裏付けとなるデータもなく密室で決定がなされたら、他の全員に全面的なコミットを求めます。従業員に気骨がないことを心から望んでいるのです。
お尻を座席に届ける:Deliver Butts to Seats
リーダーはビジネス上の重要なインプット、つまり当然のことながら企業の不動産利益にフォーカスし、従業員に週3日、ハブオフィスに出社することを強制することでそれを実現しようとしています。失敗したにもかかわらず、リーダーたちは意地悪な電子メールを送り、コンプライアンスを確保するために従業員をPivotに従わせようとします。
地球で最高の雇用主になることをかなり真剣に考える:Think Really Hard About Being Earth's Best Employer
よかったでしょう? さあ、デスクに戻りなさい、労働者たち。
成功と規模がもたらす大きな利益率:Success and Scale Bring Broad Profit Margins
アマゾンはガレージで創業しましたが、今はもう自宅で仕事をすることは許されません。私たちの規模は大きく、世界に影響力を持ち、そしていまだに、完璧には程遠い存在です。私たちは、通勤のために多くの車を走らせるという副次的な影響により、さらなる大気汚染を引き起こさなくてはなりません。私たちの社会、地球、そして未来の世代は、私たちが環境への取り組みをやめることを求めています。私たちは一日のはじめに、気候変動対策に関する誓約を10年遅らせる決意を新たにします。そして、明日はもっと稼げると信じて一日を終えます。