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アマゾン(Amazon)は、従業員をオフィスに出社させる計画を積極的に進めており、この方針にはほとんど例外が認めていない。そのため、一部の従業員は指示を遵守するための抜本的な対策を検討せざるを得なくなっている。
アマゾンは最近、従業員に対して自分の居住地の最寄りのオフィスではなく、個々のチームに割り当てられたハブオフィスに勤務するよう要請するという「拠点回帰」策を打ち出し始めた。自分が所属するチームのハブオフィス近辺に引っ越すことを拒む従業員は、社内で新しい仕事を見つけるか、「自己退職」により会社を去らなければならない。
アマゾンの管理職らはInsiderの取材に対し、非常にまれなケースのみ例外として扱うよう指示されていると明かす。同社は、地域の営業チームや免除対象グループなどを含む例外対象者を1桁の割合に抑えることを目標としており、個別のケースについてはごくわずかな余地しかないと、ある人物は話す(これらの情報提供者は匿名を条件にInsiderの取材に応じた)。
飛行機通勤、車上生活まで
そのため、従業員は苦しい立場に置かれている。匿名チャットアプリ「Blind」のあるユーザーは、家族がテキサスから引っ越さずにすむように、夫がアマゾンのシアトル本社近くで車上生活することを考えていると投稿。別のユーザーは、毎週サンフランシスコからシアトルに飛行機通勤することを検討していると投稿している。Blindに投稿する際には勤務先の個人メールアドレスの提示が必要となるため、これらの投稿者たちもアマゾンのメールアドレスを持っているはずだ。
Insiderの取材に応じてくれた別の従業員は、今回の厳格な新方針に対しこんな対策を考えているという。会社にはアマゾンのオフィス付近に家族が持っている住所を提示しておき、必要な時にだけ飛行機で飛んでいくというものだ。こんなアイデアもある。会社には指示に従うそぶりを見せつつ、転居のために与えられた時間を使って転職活動をするのだ。
アマゾンは、転居することを選んだ従業員にはその準備期間として数カ月を与えている。匿名を条件に取材に応じたある現役社員によれば、アマゾンは従業員の転居のために約7000ドル(約100万円、1ドル=145円換算)の現金と転居先の都市での仮住まい約1カ月分をパッケージで提供しているという。
それでも、転居義務は社内で大きな騒動となっており、多くの従業員は取り急ぎ何をすべきか考えあぐねている。アマゾンではこれまでも出社義務化(RTO:Return to Office)のプロセスをめぐり、従業員によるストライキ、経営陣への嘆願書提出、社員集会での質問百出など異常ともいえる議論を引き起こしている。
行動原則のパロディ版をつくって揶揄
先日、社内のオンラインフォーラムにある従業員が投稿した内容が社内の耳目を集めた。その投稿は、アマゾンの有名な「リーダーシップ・プリンシプル」をあげつらうものだった。「RTOのリーダーシップ・プリンシプル」と題されたこの投稿では、16の行動原則に手を加えて、出社義務化に対する従業員の不満を示して見せている。
一例を挙げると、「成果をもたらす(Deliver Results)」という元の原則は、パロディ版では「お尻を座席に届ける(Deliver Butts to Seats)」となっており、こんな内容が続く。
「リーダーはビジネス上の重要なインプット、つまり当然のことながら企業の不動産利益にフォーカスし、従業員に週3日、ハブオフィスに出社することを強制することでそれを実現しようとしています。失敗したにもかかわらず、リーダーたちは意地悪な電子メールを送り、コンプライアンスを確保するために従業員をPivotに従わせようとします」
パロディ版「リーダーシップ・プリンシプル」の詳細はこちらの記事で紹介している。