人工知能には明るい未来があるが、投資家は短期的にはその熱意を抑えるべきだ。
(Photo by Mario Tama/Getty Images)
市場は最近、下方調整が行われたが、現時点でも投資家を喜ばせる要素はたくさんある。
これまでのところ、2023年の株価は戦略家たちの予想を打ち砕いており、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のトップは現在、景気後退の可能性はますます低くなっていると発言している。インフレは正常な水準に戻りつつあり、解雇率の低下と豊富な雇用を背景に労働市場は健全さを保っている。
こうした理由から、1200億ドル(約17兆4000億円、1ドル=145円換算)規模のフランクリン・エクイティ・エクイティ・グループ(Franklin Equity Group)でポートフォリオマネジメントディレクターを務めるジョナサン・カーティス(Jonathan Curtis)氏も、数多い強気筋の資産マネージャーの1人だ。
カーティス氏は、Insiderの最近のインタビューで「ソフトランディングの見通しにかなり好感触を持っている」と語った。
「FRBの利上げはおそらく終わりに近づいていますが、まだ完全ではないかもしれません。しかし、FRBはもうひとつの課題、つまり労働市場の難題に取り組むことができるでしょう」
AI株は自らの成功の犠牲になる可能性も
彼の楽観的な見方にはいくつかの根拠があるものの、ポジティブな地合いが行きすぎて市場の下落を引き起こすというリスクは常に存在する。
カーティス氏が現在唯一懸念しているのは、2023年にS&P500指数を上昇させたAI関連銘柄が、短期的にはその煽り文句を実現できないかもしれないことだ。AIに対する楽観的な見方はもっともだが、その真の影響が出てくるのは何年も先の話かもしれないとカーティス氏は言う。
自社でテクノロジー研究チームを率いるカーティス氏は「AIをめぐっては大いに盛り上がっています。株価も上昇しており、AIの長期的な見通しについては非常に強気です」と語った。
「しかし、AIについてはまだ実験段階であり、収益段階には至っていません」
そして、カーティス氏はこう続けた。
「投資家は2023年下半期に、株価は非常に好調でも、AIからの収益はまだ出ていないことを理解する必要があるでしょう。今後、収益が出ることは確信していますが、まだそこに至っていないことで、市場に多少のリスクが生じます。そして、それがハイテク分野の一部銘柄のボラティリティに表れているのが見て取れます」
AI関連の多くの企業の収益や利益はそれほど大きくないが、AIのノウハウを持つ労働者の需要は確かにあるとカーティス氏は言う。それでも彼は長期的な楽観視は保ちつつ、AI関連銘柄のバリュエーションは、常軌を逸しているとは言わないまでも、野心的であることを認めている。
「私が説明した収益機会が現れ始めるのは、実際には2024年から2025年にかけてになるでしょう。投資家は辛抱強くその時を待てるでしょうか。それともボラティリティが生じるでしょうか。そしてそれは、私たち投資家にとって素晴らしいものになるのでしょうか。そうなると思ってはいますが、そこが問題なのです」
2023年後半に投資すべき7つの分野
カーティス氏は、今年の市場の上昇は主に一握りの傑出したテック企業によってもたらされており、その勢力は今後も拡大すると予想しているが、投資家は以下に示す7つの分野、業界、スタイルにまたがる企業をターゲットにすべきだと言う。
カーティス氏によると、市場や経済に何が起ころうとも、経営が順調で、競争優位性を確保して同業他社より優位に立ち、バランスシートに潤沢な現金があり、財務指標が好調または改善している質の高い企業への投資を優先するのが賢明だという。
彼は自身の役割から、成長志向の企業、特にテクノロジー分野の企業に関心が向く傾向がある。成長サイクルの初期にある企業は、成功するかどうかが不透明なため、市場で過小評価されることが多く、そうした企業を見つけることが大きな利益を生む可能性があるという。
また、ポートフォリオマネジメントディレクターとして、投資家は短期的にはAI銘柄のボラティリティを警戒すべきだと考えているが、長期的には間違いなく投資価値があるとカーティス氏は明言する。
「AIは新しい大きな成長サイクルの始まりにあります。少なくともナレッジワーカーの領域では、最も博識なエージェントに任せることで、誰もが非常に低価格で、ほぼあらゆる仕事をよりうまくこなすことができるようになるでしょう。したがって、生成AIは生産性の面で大きな影響を与えることになると考えます」
テクノロジー以外の分野では、見過ごされがちなエネルギー転換産業を含む、工業とエネルギーの分野にカーティス氏は注目している。彼は、従来型エネルギー企業と再生可能エネルギー企業の両方をターゲットにする稀有な投資家であり、石油需要のピークはまだ遠い先だとする一方、EV(電気自動車)企業は今後も勢いを増し続けるだろうと述べた。
「エネルギー転換にも注目しています。それは、産業や地球のために持続可能性を促進するだけでなく、最終的には地球への影響が少ないエネルギーへ移行することを私たちは望んでいるからです」
最後にカーティス氏は、中小型株にこそ市場の好機があると述べた。大企業は素晴らしい業績を上げているが、短期的には苦戦を強いられる可能性があるという。