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- 「地球沸騰化の時代が到来している」ものの、スウェーデンでは気温の上昇によってワインメーカーに新たなチャンスが生まれている。
- 気温が上がったことで、スウェーデンではブドウの生育期間が約20日のびた。
- 「30、40年前には考えられなかったような成長が見られます」とあるワインメーカーは話している。
「地球沸騰化の時代が到来している」ものの、一般的にワインの生産で有名というわけではないスウェーデンがチャンスをつかもうとしている。AP通信が報じた。
「30、40年前には考えられなかったような成長が見られます」とAP通信に語ったのは、今から20年以上前にスウェーデンで初めてワインの生産を始めたGöran Amnegårdさんだ。
気候変動の影響がスウェーデンにも及ぶ中、スウェーデン産ワインの台頭に「報われた気がする」とAmnegårdさんは話している。
その一方で、イタリアやギリシャ、スペインといったワインの主要生産国は水不足や暖冬といった問題に直面していると、スペインのワイン生産者でスウェーデンに移住したIban Tell SabateさんはAP通信に語った。
「温暖化でスウェーデンは良い位置にいますし、良いワインです」とSabateさんは話した。
気温の上昇によって、スウェーデンのブドウの生育期間が20日のびたとAP通信はスウェーデン気象・水文研究所のデータをもとに報じた。スウェーデンの1991~2016年の平均気温は1961~1990年の平均から1度上がっていて、今世紀末までにさらに2~7度上がる可能性が高い。
「北欧では生育期間が4カ月半~5カ月でしたが、気温の上昇によって霜が降りるまで、生育期間を6カ月~6カ月半くらいに伸ばすことができます」とアメリカのオレゴン州にあるリンフィールド大学のワイン研究プログラムの責任者グレッグ・ジョーンズ(Greg Jones)氏は2021年、Insiderに語っている。
そして、チャンスが巡ってきたのはスウェーデンだけではない。温暖化によって、イングランドやロシアといった予期せぬワインのホットスポットが生まれそうだと、Insiderは2016年に報じた。
ただ、スウェーデンのワイン生産の成長はまだゆっくりとしたものだ。スウェーデンは2021年のワインの輸出額が2630万ドル(約38億3000万円)だったと報告している。一方、フランスやイタリアといった伝統的なワイン生産国の2021年の輸出額はそれぞれ約110億ドルと77億ドルだった。
「毎年生産されるボトル数は非常に限られています」とスウェーデンのワインを輸出しているウェブサイトを運営しているHenrik Edvall氏はAP通信に語った。売り上げは毎年10%のペースで伸びているものの、生産の遅さが足かせになっているという。
とはいえ、気候変動は北欧にとってプラスばかりではない。
8月上旬、スウェーデンとノルウェーは警報を発表して豪雨などへの警戒を呼びかけた。この雨でスウェーデンでは乗客100人以上を乗せた列車が脱線し、両国で道路が冠水した。
そして、温暖化によって気候が変化する中、この変化にチャンスを見出しているのはワインメーカーだけではない。
極地の氷冠の融解は石油、鉱物、魚といった資源が豊富な北極圏をめぐる競争の激化にもつながっている。温暖化する北極をめぐる競争を現在支配しているのはロシアだと、アルジャジーラは2022年に報じている。