最小限の時間しか働いていないというテック企業の従業員の話は、「偽装労働」の議論を巻き起こしている。
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- グーグルのソフトウェアエンジニアのデボンは、1日1時間しか働いていないとFortuneに語った。
- 午前中にコーディングを行い、残りの時間は自身のスタートアップのために働くという。
- テック大手の従業員は「偽装労働」でほとんど仕事していないと非難されている。
グーグル(Google)のソフトウェアエンジニアは基本給で最大71万8000ドル(約1億400万円)を稼いでいるが、ある一人の従業員は週におよそ5時間の労働で、10万ドル以上の年収を稼いでいるという。
グーグルのソフトウェアエンジニアで20代のデボン(仮名)は、1日約1時間の仕事で15万ドル(約2175万円)の年収を稼いでいるとフォーチュン(Fortune)に語った。たいてい朝は9時に起きて、シャワーを浴びて、朝食を作り、午前11時か12時までグーグルの仕事をする。残りの時間は、彼自身のスタートアップのために働くという。
デボンはフォーチュンに、同僚が出世することもなく夜遅くまで働いているのを見ると、懸命に働くことを正当化できないと話した。
「それ以上のことをしても昇格できない」と、デボンは話した。フォーチュンは、このエンジニアのプライバシー保護のため、デボンという仮名を使ったという。フォーチュンは、グーグルの内定通知書で彼の給与を確認し、また勤務時間中のスタートアップの作業を示すスクリーンショットを確認した。Insiderはグーグルにコメントを求めたが、すぐに返答はなかった。
このような働き方をしているのはデボンだけではない。22歳のジェイソンは以前、Insiderの取材に対し、収入を増やすためにフルタイムのリモート・ソフトウェア・エンジニアの仕事を週30時間以内で2つ掛け持ちしていると語った。
「最初の仕事での仕事量が少ないと感じていたし、掛け持ちに耐えられないなら、どちらかの仕事を辞めればいいだけだと思っていた」とジェイソンは語った。Insiderは、彼の仕事に影響が出ないように仮名を使っている。彼の身元は確認済だ。
専門家が指摘するテック業界の「偽装労働」
このような話は、グーグルやメタ(Meta)のようなハイテク企業の従業員が、最低限の労働時間をこなすためだけで高給を得ているのではないか、という議論を呼び起こしている。この傾向を一部のハイテク分野の専門家は「偽装労働(フェイクワーク)」と呼んでいる。
ハイテク大手はパンデミックの初期に、シリコンバレーの投資家、キース・ラボイス(Keith Rabois)が「バニティメトリクス(虚栄の指標)」と呼ぶ、競合他社の中で目立つための従業員の大量採用を続けた。
一部には、新入社員に対する十分な仕事がなかったと批判する声もある。結局、グーグルとメタは2023年初めに大量の従業員解雇を行った。
「彼らは自宅で、本当に何も仕事していなかった」と、企業向けAI開発会社、C3.aiのCEOで億万長者のトーマス・シーベル(Thomas Siebel)は、この2社の新規雇用についてフォーブスに語った。
「偽装労働」が過剰な雇用によるものか、管理の拙さによるものかはともかく、デボンの勤務スケジュールは、特にZ世代の労働者の中で仕事に関する考えがワークライフバランスを追求する方向に変化していることを示している。
そのような考え方の変化は、労働者が仕事を維持するために期待されていることだけ(場合によってはそれ以下)を行う「静かな退職」や、週の残りの期間で燃え尽きないようにするために仕事をできる限り少なくする「最低限の月曜日」のような職場に関するトレンドに反映されている。
デボンは、グーグルでは彼が数時間しか働いていないと誰も疑っていないようだとフォーチュンに語った。現在の職務の前、グーグルでインターンを行っていたとき、彼はおそらく1日2時間以下しか働いていなかったという。そのおかげで、仕事中にハワイに1週間の旅行に行く時間ができたそうだ。
「もし、もっと長い時間働きたかったら、スタートアップに行っただろう」