「ジラフナップ フォレスト」で仮眠デモを行うモデル。
撮影:杉本健太郎
ネスレ日本と木材加工会社の広葉樹合板は8月22日から期間限定で「ネスカフェ 睡眠カフェ in 原宿」で「ネスカフェ 睡眠カフェ × ジラフナップ “立ち寝コーヒーナップ”体験席」を設置することを発表した。
これは広葉樹合板が開発した「立ったまま寝る」仮眠ボックス「giraffenap(ジラフナップ)」を体験できるもの。
一般ユーザーにジラフナップをお披露目するのは、ここが初めての機会だ。
体験には専用ウェブサイトから予約が必要だが、既に100以上の申し込みが来ているという。予約なしで来店した場合は、座席の空きをみて案内する。
「ジラフナップ フォレスト」。
撮影:杉本健太郎
「ジラフナップ スペーシア」。
撮影:杉本健太郎
眠くて仕方ない時は寝られるだろうが……
私も実際に体験してきたので、気づいたことをまとめてみよう。
良かった点
1. 換気機能と扇風機がついているため涼しい。空気がこもった感じはない。
2. 「スペーシア」は暗さと静けさともに良い。
1. 換気機能と扇風機が稼働しているため、熱がこもったりすることはなさそうだ。しかし、その音が気になる人はいるかもしれない。必要に応じて耳栓やイヤホンがいりそうだ。
扇風機はリモコンで操作できる。
撮影:杉本健太郎
2. 「スペーシア」はドアを閉めると、外の音はしっかり遮断できている。マンガ喫茶の個室にいるような気分だ。
悪かった点
1. 膝とすねに体重がかかる姿勢のため、どことなく落ち着かない。
2. 体重というより「体型」によってかなり使い心地に差がありそう。がっしりとした体格、大柄な体型の人は窮屈だと感じると思う。
3. 「熟睡させない」のは狙った仕様なのだろうが、上半身が起きたままリラックスするのは個人的には難しかった。座り方によっては、胸から上を吊るされているような気分になることも。
4. 「フォレスト」は外の明かりが入ってくるので眩しく、外の音も聞こえて騒がしい。アイマスクと耳栓かイヤホンは必須。
5. 鍵の開閉表示が小さいため、中に人がいるかいないか分かりづらい。
頭と腕をレストに「ひっかける」ような姿勢になる。
撮影:杉本健太郎
膝とすねを前傾させるので体重がかかる。
撮影:杉本健太郎
1. ジラフナップは自分でお尻のシートと頭、腕のシートの高さを調整するのだが、この調整位置の「正解」が難しい。膝とすねにも体重がかかる設計なのだが、これは率直に言ってかなり違和感があった。
2. また、ジラフナップは身長2メートル以内、体重100キロ以内という使用制限があるものの、体重が100キロ以下でも、がっしりとした体格、大柄な体型の人には苦しいだろう。シートの調整以前に体をボックスの中に入れるのが苦しいと思う。
3. ジラフナップは20分程度の仮眠を想定しており、あえて熟睡させないことを狙っている。そのため、体が完全にどこかにもたれかかってリラックスすることはない。疲れ切っていて眠くて仕方ないときは、それでも寝られるだろうが、そうでないときは違和感のほうが上回るかもしれない。
4.「フォレスト」は周りの明かりが入ってくる仕様のため、仮眠をとるには眩しすぎる印象がある。外の音もよく聞こえる。静かで暗い場所に置くなどの工夫が必要だと思う。
フォレストの中から見た光景。眠るには眩しい。
撮影:杉本健太郎
5. これは改善すべき点だと思うが、鍵の開閉表示が小さいため、中に人がいるかいないか分かりづらい。
見えづらいが鍵をかけると赤い表示になる。
撮影:杉本健太郎
体験会に来ていた人の感想
自分自身の感想をここまで書いてきたが、他の人はどう感じたのか。現地にいた人の声を聞いてみた。
40代男性の感想
「けっこうファンの音が気になりますが、眠くなってる時であれば、うとうとできるかなっていう感じはします」
—— 立って寝るという姿勢に違和感はありませんか?
「体勢は全然大丈夫です。この姿勢、腰痛のときに使う姿勢矯正用の椅子に近いですね。そんなに負担を感じないです」。
30代女性の感想
「学生の時ずっと机で寝ていたから、その時の感じですね。そう思えば寝られなくはない。 机で寝ることに慣れてる人だったら多分寝られるけど、慣れてない人だとちょっと戸惑うかも」
—— 姿勢はリラックスできます?
「椅子と立ち寝の中間みたいな感じ。意外に頭の位置は高い方が良さそうな気がします」
シートの高さをコントロールするパネル。
撮影:杉本健太郎
—— 仮眠は実際にできそうですか?
「意外といけますね。ものすごく眠い時とかだったら絶対寝れますね」
なぜネスレが「睡眠マーケティング」をしているのか
ネスレ日本は、大きな社会問題となっている日本人の睡眠不足に注目し、カフェインを含むコーヒーとカフェインレスコーヒーの飲み分けを通じて新しい睡眠スタイルを提案する体験型カフェ「ネスカフェ 睡眠カフェ」を2019年から運営してきた。
今回の広葉樹合板とのコラボは、ネスレ日本が提案してきたコーヒーナップ(短い仮眠の前にカフェインを含むコーヒーを飲む仮眠スタイル)とジラフナップが「気軽で効率的なリラックスタイム」を楽しむために相性がよいこと。また、双方の「生産性向上につながる、効率的なリラックスタイムの創出を目指す」という理念が合致したためだという。
総評:「立ち寝」は仕事の休憩として有効?
体験してみて、ジラフナップの寝心地は、少なくとも「クセがある」ものだという印象はある。そもそも熟睡するためのものではないが、やはり「仕事中眠くてどうしようもない時の緊急避難先」といった印象だ。トイレの個室や空き会議室にこもるよりは、快適だろう。
個人的には、ジラフナップをオフィス内のどこに設置するかも大きなポイントだと思う。
人目につかない静かな場所に設置し、こっそりと使うことができるなら良さそうだ。一方で、人の話し声で溢れるオフィススペースのど真ん中だったり、従業員が集まって食事をするような休憩スペースに設置するとしたら、使うのにかなり勇気がいる。話し声も気になる。
いずれにせよ、ジラフナップが日本社会に仮眠の重要性を啓発するきっかけになれば良いと思う。