KDDI新料金プラン「auマネ活プラン」は誰にとってトクなのか。6つの特典をチェック

auマネ活プランの発表会

auマネ活プランの発表会に登壇したKDDIの髙橋誠社長(右)と、ゲストの田中みな実さん(左)。

出典:KDDI

KDDIは8月23日、新携帯電話料金プラン「auマネ活プラン」を発表した。

auマネ活プランは、auのデータ使い放題プランとKDDI傘下の各金融サービスの特典をセットにしたプラン。KDDIは「金融サービス利用時の特典が上乗せされるスマホ向け料金プランの提供は、携帯業界として初めて」としている。

提供時期は9月1日から。月額基本料金は7238円。対象の固定回線を契約していると適用される「auスマートバリュー」適用時は月額6138円(いずれも税込、以下同)となる。

毎日の家計を考える上で欠かせない携帯電話料金と、長期的な目線が必要な金融サービスの融合は果たして価値があるのか。新プランの特徴を見ていこう。

6種類の還元を用意。最大還元を狙うならゴールドカードが必須

マネ活のスライド

マネ活について説明する髙橋社長。

画像:筆者によるスクリーンショット

auマネ活プランの「マネ活」とは、日常で使われている言葉ではない。

23日の新プラン発表会に登壇したKDDIの髙橋誠社長によると「『ポイ活』はポイントを使ったり貯めたりする。将来に向けて資産を育てる活動を加えたものを『マネ活』として推進したい」と、ポイ活を由来とする造語のようだ。

NTTドコモならdポイント、ソフトバンクならPayPayポイント、楽天なら楽天ポイント、そしてKDDIならPontaといったように、携帯通信事業者はすでにそれぞれの共通ポイントと携帯料金を紐づけて携帯料金を展開している。

auマネ活プランのスライド

auマネ活プランの概要。なお、従来の使い放題プランと同じく、ネットフリックスなどのエンタメサービスとのセットもオプションで選べる。

画像:筆者によるスクリーンショット

今回のマネ活プランは、そこから1歩進み、ポイントだけではなく投資などの資産形成の特典も付与している点が最大の特徴だ。

auマネ活プランの主な特典は以下の通り。

(1)au PAY 残高還元特典

毎月合計最大800円相当(非課税)のau PAY残高が付与される。諸条件は以下の通り。

  • au PAYカード/ゴールドカードの会員であれば毎月300円。
  • auじぶん銀行に口座を持っており自身のau IDを紐づけていれば毎月300円。
  • 通信料金の支払い元をau PAYカードもしくはauじぶん銀行の口座に設定していれば毎月200円。

(2)通信料金ゴールドカード特典

「au PAYゴールドカード」(年会費1万1000円)でauマネ活プランの利用料金を支払っている場合、「au PAY 残高還元特典」とは別に、通信料金の最大20%相当がPontaポイントで付与される。

従量課金される通話料やSMS通信料なども対象となるが、auかんたん決済料金、端末機器代金などは還元対象外となるので注意。また、20%還元自体も1年間限定となっている。

(3)au PAY決済特典

au PAY決済のスライド

スマホ決済「au PAY」の決済でPontaポイントがたまりやすくなる。

画像:筆者によるスクリーンショット

auマネ活プランに加入するだけで、スマホ決済「au PAY」のPonta還元率が通常時0.5%から1%にアップする。

また、au PAYゴールドカードを持っている場合、ゴールドカードからau PAY残高にチャージすると、チャージ時にも1%貯まるため、合計で最大2%の還元となる。

ただし、au PAY決済特典による増加分(0.5%)の還元額は150ポイント(最大3万円利用)、ゴールドカードからのチャージ時の還元額は月間最大1000ポイント(最大10万円利用)の制限がある。

そのため、最大2%還元が狙えるのは、月間3万円までの利用分に留まる計算になる。

(4)au PAYカード決済特典

auマネ活プランに加入し、au PAYゴールドカードを持っている場合、au PAYゴールドカードのショッピング利用時の還元率が1%から1.5%に増える。

増加分(0.5%)の月間最大還元額は250ポイントになっているため、利用額に換算すると月間5万円までのショッピング利用が対象となる。

(5)金利優遇特典

金利優遇のスライド

auじぶん銀行の円普通預金の金利優遇が優遇される。

画像:筆者によるスクリーンショット

auじぶん銀行の円普通預金の金利は、「au PAYとの口座連携」「au PAYカード(ゴールド含む)の引き落とし口座」「au株コム証券とのリアルタイム口座振替」に設定することを条件に、金利が年0.2%(税引き後0.15%)になっている。

auマネ活プランに加入すると+年0.05%、さらにau PAYゴールドカードの引き落とし口座に設定している場合は+0.05%(いずれも税引前)の金利が増加し、最大0.3%(税引き後0.23%)の金利が受け取れるようになる。

auの特典解説ページによると、各種設定を済ましてauマネ活プランに加入して、au PAYゴールドカードの設定も済ましているとすると、仮に毎月平均100万円の残高が1年間あった場合、年間で税引き前最大3000円、税引き後最大2391円の利息を受け取れる計算になる。

なお、ゴールドカード紐付け条件も含めたauマネ活プランの優遇特典増加分(0.05+0.05=0.1%)の適用上限金額は月間平均残高1000万円となっているため、超過分に関しては年0.2%の金利が適用される。

(6)クレカ積立特典

積立のスライド

au PAYゴールドカードでの積立でもポイントが一定期間増える。

画像:筆者によるスクリーンショット

auカブコム証券では投資信託積立の引き落とし方法としてau PAYカード(ゴールド含む)の決済を選択でき、通常時は最大1%のPontaポイントが還元される。

これに対し、auマネ活プランに加入すると+0.5%還元率が増加。au PAYゴールドカードでの決済およびauカブコム証券でNISA口座を開設していると、さらに+1.5%(最大12カ月間)が上乗せされる。

ただし、そもそもの1%の還元も月間300ポイント、auマネ活プランのみの特典分(+0.5%)も月間150ポイント、ゴールドカード&NISA特典(+1.5%)も月間450ポイントとなっているため、最大積立額は月間3万円となる計算だ。

特にゴールドカード&NISA特典は初回積立から12カ月間という有効期限があるため、この+1.5%分は最初の投資を後押しする施策と考えるのが妥当だろう。

金融との融合でより強固になる「経済圏」に定住するか否か

クレジットカードを説明する勝木氏

au PAYゴールドカードについて説明するauフィナンシャルホールディングスの勝木朋彦社長。勝木氏は今回の新プラン導入で「ゴールドカードの加入率は現状では(au契約者全体の)2割ぐらいだが、5割まで引き上げる目標でいる」と目標を語った。

出典:KDDI

ここまで述べた通り、auマネ活プランには豊富な特典があるもののそれぞれ細かく条件が決められており、かつ最大の還元を狙うには兎にも角にも年会費1万1000円の「au PAYゴールドカード」が必須なのがわかる。

au PAYゴールドカードをすでに持っていれば、決済系の特典だけでも魅力的には見える。

ゴールドカードは持っていなくても、auじぶん銀行やauカブコム証券の口座を持っていれば、新プランとゴールドカード加入を検討するモチベーションにはなるかもしれない。

KDDIはauマネ活プランの特設サイトにシミュレーションフォームを用意しており、過去の自分の利用料などからauマネ活プラン加入でどのぐらいお得になるか計算できるようになっている。

経済圏について語る髙橋社長

「マネ活経済圏」について髙橋氏。髙橋氏は2008年のじぶん銀行発足から「KDDIは経済圏を拡大してきた」と自負するが、特に楽天の後塵を拝していることは認めており「一矢報いるべく、がんばっている」とも発言。

出典:KDDI

一方で、やはり感じるのは、通信と金融をすべてau経済圏の内側に収めていいのか、という不安だ。

髙橋社長は「(auマネ活プランに)入っていただいて魅力がなければ戻ってもらえる」と話していたが、要であるau PAYゴールドカードは与信審査が必要で、さらに加入すれば年会費が必ず発生する。

クレジットカードでの投資信託積立やNISA口座の開設も携帯料金のように「お得じゃなかったので来月から辞めます/変えます」といった類のものではなく、気軽に「試してみよう」とは感じない。

単にお得さだけを求めるのであれば、KDDIの中であれば中容量帯の「UQ mobile」、基本使用料0円のオンライン専用プラン「povo2.0」などの選択肢もあり、通信料金を下げて発生する余剰金を好きな銀行や証券会社で運用する……といった考え方も十分できる。

KDDIの3ブランド

KDDIはau以外の比較的安価な料金ブランドも持っている。それらのブランドでも通信と金融の融合を進めていく。

出典:KDDI

もし、他社からもっと自分に合ったお得な携帯料金プランが出たら? 今の自分の生活スタイルが大きく変わって無制限のデータ容量が必要なくなったら? 金融と比べて通信は業界的にも個人レベルでもミクロな動きが発生する。

携帯通信業界は総務省およびそのタスクフォースの指導のもと、競争を促進させるため、MNP(番号ポータビリティー)や2年縛りの原則禁止など、流動性を高める施策が施されてきた。

しかし、KDDIに限らず各キャリアも通信という規制産業とはいえ営利企業だ。固定回線とのセット割や家族割など、さまざまな手でユーザーを囲い込んできた。

KDDIが「業界初」と自称する通信と金融の融合も、こうした囲い込み施策(各キャリアは「経済圏」と呼ぶ)の一環なのは間違いない。実際、髙橋社長も会見では「たぶんずっと使っていただける」と自信を見せる。

消費者には、どこか1つの経済圏に腰を据えて各種特典を享受するか、特色あるサービスを都度選定していくか、より一層慎重に判断する時代がやってきたと言えるだろう。

なお、KDDIは前述のUQ mobileやpovo2.0に対しても通信と金融の融合を進めていく方針で、髙橋社長は「時期は言えない」としつつも「(auマネ活プランと)同じ形ではなく、ターゲットに応じたプランを提供していきたい」と述べている。

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