ブラックホールは互いの重力に捕まり、衝突または反発する可能性がある。
NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello
- ブラックホールは宇宙を毎秒1万7500マイル(約2万8000km)のスピードで動くと、科学者が算出した。
- Physical Review Lettersに発表された研究結果によると、それは光の10分の1の速さだ。
- この発見は新しい物理法則を明らかにする可能性があると、ある専門家は話している。
科学者が宇宙の速度制限について算出した。そして、これは新しい物理法則の扉を開く可能性がある。
この速度の限界はブラックホールと関連性がある。それは、非常に高密度であるため、その重力が光も含めて近くにあるものは何でも永久に捕らえてしまう。ブラックホールが黒く見えるのは、このためだ。
2つのブラックホールが互いの重力の影響を受ける場所にいると、衝突または反発を起こす。反発して宇宙の果てまで飛ばされるとき、その最大速度はいくらになり得るのか。
この問いに、2人の科学者が最新のPhysical Review Lettersで発表した研究結果で答えている。2人は、ブラックホールの反発速度はおよそ時速6300万マイル(約1億km/h)であると考えている。
これは1秒間に約1万7500マイル(約2万8000km)進むスピードで、光の10分の1の速さだ。1.4秒で地球を1周できる。
新しい物理法則の扉
世界で初めてのブラックホールの写真。オレンジの輪は、ブラックホールに吸い込まれる際に加熱された物質でできた雲だ。
Event Horizon Telescope Collaboration
共同著書のカルロス・ルースト(Carlos Lousto)は、この発見による大きな影響について強調した。
「我々は、普遍的な説明となり得る何かの表面を引っ掻いただけだ」とロチェスター工科大学の数学・統計学のルースト教授はLive Scienceに語った。
「速度の限界に関するこの新しい発見は、宇宙における最小のものから最大のものまで、すべてについて我々が理解する方法を変える可能性もある」と彼は付け加えた。
ルースト教授とその同僚は、アインシュタインの一般相対性理論を使い、相互作用する2つのブラックホールが時間経過とともにどのように変化するかをシミュレーションした。
2つのブラックホールが相互作用している様子の想像図。
NASA/JPL-Caltech
彼らは1381通りのシミュレーションを行い、最接近距離や自転速度(ブラックホールは自転する)などの細かい要因について微調整を行った。
そして、反発するブラックホールがの速度は最大で時速およそ6300万マイルまで達する可能性があると算出した。しかし、それは我々が今日知っている物理法則によって確立された方程式に従ったものだ。
もしブラックホールがこの限界速度を超え、時速6300万マイル以上で反発するところを天文学者が観測したらどうだろう。そのような謎は、科学者たちにまだ見ぬ物理法則の説明を求めさせることになるかもしれない。
我々が知っている物理学をひっくり返した発見は、これだけではないだろう。科学者が現在の物理学モデルでは何かを見失っていることを示す重大な謎がまだいくつもある。新しい粒子、不安定すぎる粒子、予測以上に拡張する宇宙の証拠などは、新しい物理学につながる可能性がある。
速度の限界を超えるブラックホールを見つけることも、宇宙で何が起きているのかを知る手掛かりを見つけることになる。
「ブラックホールの動き方が我々の理解から逸脱していることを示す可能性のある状況で、自然がこれを超えるかどうか見ることはとても興味深い」と、今回の研究には関与していないフロリダ大学の物理学のイムレ・バートス(Imre Bartos)教授はLive Scienceに語った。