腕を曲げスプリットを行い、見事な運動能力と筋力を見せるシンガポールの70歳の男性。
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- ブルーゾーンの住民たちは、トレーニングジムに行くことはほとんどない。
- 彼らは、歩き、踊り、社交することで、意図せずに運動の恩恵を受けている。
- 長期的な健康増進のためには、運動を社交的で楽しいものにすれば継続できる。
健康的に長生きするためには、高級なフィットネススタジオやトレーニング器具などは一切必要ない。
ネットフリックス(Netflix)の番組『100まで生きる:ブルーゾーンと健康長寿の秘訣(Live to 100: Secrets of the Blue Zones)』によると、「スーパーエイジャー(Super Agers)」と呼ばれる世界の長寿の人々は、トレーニングジムに通わなくても運動の効果を得ているという。
ブルーゾーンとは、イタリア、ギリシャ、日本、コスタリカなど世界で人々が最も健康で長寿の人々が数多く居住する地域のことである。
ナショナル・ジオグラフィック(National Geographic)の探検家、ダン・ベットナー(Dan Buettner)は「ほとんどの人は、運動は週に数回のジムで集中的にするものという間違った考えを持っている」とInsiderのヒラリー・ブルック(Hilary Brueck)に語っている。
「定期的な運動に対するアメリカ人のアプローチは、ジムに行ったり、気合を入れてトライアスロンに挑戦したり、5キロ走ったり、クロスフィット(CrossFit)やヨガをやることだ。でもそれで十分に効果が得られるまで続くのは、数パーセントの人だけ。ほとんどすべての人が、ほぼ失敗する」
ブルーゾーンに住むスーパーエイジャーたちは、ウォーキング、階段を登る、ダンスをするといった簡単な活動をすることで、80代、90代、さらには100歳を過ぎても強く、活力や健康を保っている。
ウォーキングは健康増進のための最も簡単な方法のひとつ
ブルーゾーンの住民の多くにとって、歩くことは日常生活の中で自然な一部になっている。シンガポールのように車を利用することにお金がかかる地域では、1日に1万歩以上歩くのは簡単なことで、彼らは1日に約4マイル(約6.4km)、約1時間歩くという。
「自覚していないが彼らは運動している。自然に一日中体を動かしているのだ」とベットナーは言う。
1日のほとんどを車からデスク、ソファへに移動して過ごす人にとって、それは大変なことに思えるかもしれない。だがありがたいことに、我々はウォーキングの恩恵を受けるために車を売ったり、別の国に移住したりする必要はない。
1日の歩数を1000歩増やすだけで、早死や心臓病などの病気を防ぐことができるという研究結果もある。
階段を使えば高強度エクササイズの効果もプラス
簡単なウォーキングは寿命を延ばす方法として科学的にも証明されているが、ブルーゾーンの住民の多くは、一歩進んだ方法を実践している。
ブルーゾーンのひとつであるイタリアのサルデーニャ島のような標高差のある地域に住む人々は寿命が長いと言われている。その理由のひとつは、彼らが日常的に階段や坂道を上り下りするためである。
「長生きしたいのなら、高いジムの会費を払う代わりに、エレベーターに乗るのをやめて階段を使うことから始めてはどうだろう」とベットナーは言う。
最近の研究によると、階段を上ったり、食料品を運んだりするような心拍数を上げる運動を1日に数回、1回につき1分行うことで、早期死亡のリスクを減らせることができるという。
これらの運動は、筋トレ「HIIT(ヒット)」のクラスを修了するよりもはるかに短い時間(さらに汗もかかない)で、長寿を大きく後押しする。
グループでの運動は継続に効果的
ベットナーによると、多くの運動習慣の大きな欠点は、一時的にやってみるものの長期的に続かないことだという。
「アメリカでは、ジムの会員権に数十億ドルが費やされているもののほとんど使われていない。我々は良かれと思ってやっても、変化をもたらすほど長く運動習慣を続けることができない」
もうひとつのブルーゾーンであるカリフォルニア州にあるロマリンダの住民たちは、ピックルボールのコートやプールでの運動を地域のイベントにするという解決策を見つけている。
ハーバード大学(Harvard University)の古人類学者ダニエル・リーバーマン(Daniel Lieberman)によると、仲間を見つけることが運動へのモチベーションを維持する最良の方法のひとつであることが研究で示されているという。
「運動を社交的なものにすることで、責任感が生まれ、社会的な結びつきを促進し、継続できる可能性が高まる」とリーバーマンは言う。これは地元のレクリエーションセンターのキックボールトーナメントに参加する場合でも、友人と公園を散歩する場合でも同じことが言える。
ダンスは心臓の健康を高める、楽しくて社交的な方法
ギリシャのイカリア島という地域では、社交的になることや意図せずに体を動かす方法を見つけることなどのブルーゾーンのフィットネス戦略の長所を組み合わせ、パーティをトレーニングにする方法を実践している。
この地域の人々には、何時間も続くパネギリス(panegyris)と呼ばれる伝統的な行事がある。
「彼らは一晩中踊っている。あなたは、『それがどうした、パーティなんだし』と言うかもしれない。実際、1時間のランニングと1時間のダンスのカロリー消費量はほぼ同じだ。しかし、ダンスの1時間はとても楽しい」とベットナーは言う。
同時に、ダンスをする人々は社交的になり、音楽を鑑賞し、そう、ワインも楽しんでいるが、これもまた長寿の可能性と関連性が指摘されている。
このギリシャ的な活動へのアプローチは、我々の多くがいかに運動と苦しみを結び付けているかを浮き彫りにしている。運動を日常生活に取り入れ、楽しく一貫性のあるものにする方法を実践するブルーゾーンの人々とは対照的だとベットナーは話している。
「我々は体を動かすことは楽しいということを学んでいるところだ」