NASAとロッキード・マーティンが開発中の超音速かつ低騒音の飛行機「X-59」のイメージ図。
NASA/Lockheed Martin
- NASAは民間企業に対し、商業的な超音速飛行を「現実化」するように要請した。
- NASAによると、マッハ2から4で飛ぶ航空機を既存の50の飛行ルートで使用するという。
- NASAはソニックブームの音を抑えた独自の超音速機「X-59」のテストを開始している。
ロンドンからニューヨークまで1時間半以内で乗客を運ぶという超音速旅客機の開発計画において、NASAは新たな節目に到達した。
2023年8月22日、NASAはボーイング(Boeing)とノースロップ・グラマン(Northrop Grumman)が、「マッハ2以上の旅を実現する」ためのロードマップを開発する契約を獲得したと発表した。
両社は他の業界パートナーとともに、時速3045マイル(約4900km/h)、つまりマッハ4まで到達可能な飛行機の試作機を開発する予定だ。
NASAによると、現代の航空機の最高速度は時速約600マイル(約965km/h)で、製造中止となった超音速ジェット機コンコルドでさえ、最大速度は時速約1340マイル(約2179km/h)、つまりマッハ2をわずかに上回る程度だった。
NASAは、既存の約50の民間飛行ルートに、超音速飛行の旅客市場があると判断している。
NASAの極超音速技術プロジェクトの責任者であるメアリー・ジョー・ロング-デイビス(Mary Jo Long-Davis)によると、同機の設計はNASAの高度な高速移動戦略にとって「非常に重要」なものになると語っている。
超音速飛行を実現するためには、より静かである必要がある
このニュースは、NASAが独自の超音速機のテストを開始する中で出て来たものだ。
ロッキード・マーティン(Lockheed Martin)と共同開発したNASAのX-59は、音速の壁を破りながら、大きなソニックブーム(航空機が超音速で飛行する時に発生する衝撃波によって起こる大音響)を優しい「衝撃音」に抑えた設計がなされているとNASAは2023年7月の声明で述べた。
NASAのX-59。2023年6月19日、カリフォルニア州パームデールにあるロッキード・マーティン・スカンクワークスで。
NASA/Lockheed Martin
これは重要な実験である。というのも、アメリカでは約50年以上にわたって陸地上空の非軍事的な超音速飛行が連邦規制によって禁止されているからだ。
NASAによると、1973年に施行されたこの禁止令は、しばしば大きな音に驚かされ、自分たちの財産に損害を与えられることを恐れる一般市民調査からの「強い影響」を受けているという。
NASAによると、ソニックブームは、爆発音や雷鳴と同程度の約110デシベルの騒音を発生させるという。
「X-59によって、『迷惑なソニックブームをもっと静かなものにする』ことで、超音速飛行産業の新たな騒音基準を設定したいと考えている」と、X-59のソニックブーム風洞試験の主任研究員ジョン・ウォルター(John Wolter)は語っている。
NASAによると、X-59は製造された工場から移動し、現在は飛行の安全性を確認するために地上試験が実施されている。NASAは2025年にX-59を特定の地域上空で飛行させ、騒音が許容できるものかどうか確認する予定だ。
2023年4月、NASAの超音速飛行の騒音低減を目的とするミッション「クエスト(Quesst)」のミッション統合マネージャーであるピーター・コーエン(Peter Coen)は声明で「我々は間違いなく超音速飛行の歴史に新たな章を刻む準備ができている。空の旅を2倍の速さで、しかも安全で持続可能で、以前よりもずっと静かなものにする」と述べている。