投資・資産だけでなく、予定の管理にもExcelを使うと、筆者は言う(写真はイメージ)
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- 表計算ソフト「Microsoft Excel」は、筆者にとって究極の投資管理ツールだ。
- Excelならデザインや構成を自分好みに組み立てられることに、何よりもロイヤリティを感じているという。
- 何でも円グラフ化できる、メモしやすい、いくらでもシミュレーション可能、資産推移も記録可能、家計簿としても秀逸——が、その理由だ。
表計算ソフト「Microsoft Excel」は、私にとって究極の投資管理ツールだ。いや、万能の資産管理ツールとも言える。知人からは「Excel魔」と揶揄されるが、個人的にこれに比肩するツールは他にない。
投資・資産関連だけなく、スケジュール管理など、どんな場面においても、Excelは役に立つ。それぞれ便利なツールが多数提供されているが、ひと通り試した結果、やはりExcelで管理する方が自分には合っていた。
なにしろ、アプリなどでは、指定の使い方しかできない。一方、Excelならデザインや構成を自分好みに組み立てられる。これは、なによりもロイヤリティを感じてしまうメリットだ。
なぜExcel主義者になったのか?
私が本格的にExcelを使うようになったのは、本業である化学関連企業に勤め始めてからだ。そこではExcelを重用する文化が根付いており、本来はPowerPointを使うべきプレゼン資料もExcelで作成されていた。
職務の性質上、「表」(各成分の特徴や危険性、各分析結果を記したものなど)で説明する場面が多い。そのため、Excel利用は確かに合理的である。とはいえ、なんでもExcelで済ます文化を、当初はネガティブに“古風”と捉えていた。しかし、毎日触れていると慣れてしまうもの。いつの間にか親しみすら感じていたようだ。
勤務先にもExcelにも慣れ、プライベートで株式投資を始めてから1年経ったころ、資産状況をしっかり管理しようと思いたった。しかし、PCやスマホでさまざまなツールを試したものの、グラフが見づらかったり、メモ書きができなかったりと、なかなかしっくり来るものが見つからない……。
そこで、使い慣れたExcelを試しに使ってみた。すると、社内業務で培った技術が活かされ、自分なりに見やすい表やグラフが、スルスルと実現できるではないか。まさに「これだ!」と感じた。以降、私にとってExcelは、究極の投資管理ツールとなっている。
おおよそ1週間に2回程度、欠かさず記録・管理。さらにデータはクラウドに保存しているため、外出先でも閲覧可能という状況にしてある。
いちから始めるなら、最初は不便に感じるかもしれない。しかし、自分にジャストフィットしたものを作れる自由度の高さがExcelの良さだ。基本的な使い方であれば、プログラミングも不要である。
今回は筆者が投資管理ツールとして、Excelにこだわる5つの理由を紹介しよう。
1. 何でも円グラフ化できる
新NISA制度が注目されるなか、最近では初心者の間でも低リスクで投資できる投資信託が注目されている。かく言う筆者も投資信託を購入しているが、その投資判断において、Excelは非常に役に立った。
投資信託を選ぶ際は、組入銘柄対象国の構成比率が重要な判断基準の1つだ。こうした項目は、運用会社の公式ページや交付目論見書などの資料から確認できる。
しかし、それらは文字・金額が羅列された表が記載されているだけで、具体的な構成比率がイメージしづらいことが多いのだ。さらに、他の商品と比較する際は、複数の資料のデータを比較する必要があり、面倒くささが倍増する。
3つの投資信託の構成比率を円グラフ化したもの(数値はサンプル)
筆者作成
そこで、筆者は組入銘柄や国別比率についてExcelに記載し、円グラフ化した。これで一目瞭然だ。例えば4種類の新興国投信から選ぶ場合、同じシート上でそれぞれの国・業種別比率が反映された円グラフを表示。そこで、望ましくない国・業種の比率が比較的高い商品があれば、候補から外す。個別株を比較する際も同様、近年の業績推移を同じシート上に記載しておけば、どっちの企業が堅調かすぐに判断できるはずだ。
2. 補足情報をメモしやすい
補足情報をメモしやすいのも、Excelならではのメリットだ。先述の投資信託だけでなく個別株の投資判断表や、保有している資産構成比率を管理した表においても補足情報をメモしやすい。
備忘録として「A国の不動産市況が悪化している」と表のどこかにメモしておけば、投資信託を選ぶ際にうっかりA国の不動産銘柄比率の高い商品を選んでしまうリスクはなくなるはずだ。反対に、「安価な今のうち」だという見方をして、購入判断の1つにもなりうる。
銀行口座の残高を記載した表では「100万円貯まったら10万円の○○を買う」、「250万円を超えた分は米国株に回す」といったメモも貼付可能。家計簿アプリでもメモ書きは可能だが、メモと表・グラフが別ページに表示されるため、メモしたことを見落としかねない。PCの画面上で表とメモを同時に表示できるのは、Excelの醍醐味といえよう。ちなみにメモはセル上ではなく背景に色を付けた”テキストボックス”に記載しておくのがオススメだ。
3. いくらでもシミュレーションができる
オール・カントリー型投資信託に400万円、ホテル関連REITに100万円、純金積立に100万円、普通預金に500万円……と、実際に商品を購入していなくても、Excel上であれば、いくらでも自由に想定で組み立てることができる。事前のポートフォリオシミュレーションとして、Excelは秀逸だ。投資初心者には、何となく手元に100万円、200万円あるから株を始めようとする嫌いがあり、目的や判断基準もなく、何となく複数の個別株を有している人も多い。
事前にシミュレーションをしておけば、各商品のリスクを勘案した健全なポートフォリオを組めるようになるだろう。筆者の場合は投資用資産の2割を”捨て金”として比較的リスクの高い銘柄に回しておき、残りの8割でやりくりするシミュレーションを立てている。やや難しいが、各商品の予想利回りやリスクを考慮して10年後の資産額を算出し、どのポートフォリオが望ましいか現時点で判断するといった使い方も可能だ。
4. 資産推移も記録できる
シミュレーションを立てた後、実際に投資や貯蓄を始めることになるが、ここでも筆者はExcelを活用している。「挿入」のタブから2-D縦棒グラフを選択し、その中にある「積み上げ縦棒」グラフを活用すれば、各資産比率を表示した資産推移グラフを作れる。どの段階でどの資産が増減しているのかひと目で判断できるのだ。
また、個人の好みにはなるが「積み上げ面」グラフでも、同様の推移表を作り出せる。これまでの資産推移が事前のシミュレーションと解離していれば、ポートフォリオ変更の判断基準にもなるはずだ。
資産推移を「積み上げ縦棒」グラフにしたもの(数値はサンプル)。
筆者作成
なお資産推移グラフでは、「2」の項目で紹介したように随所にメモを記載。株であれば「米国市場全体の好調で伸びた」、新興国投信であれば「インド市場の活況で伸びた」など資産が増減した各要因を記載するのだ。そのうえで、預金額が減り続けてしまった場合、「旅行が続いてしまった」と補足すれば、今後の戒めにもなるだろう。
5. 家計簿としても秀逸
これまで紹介した例よりも頻繁に使うことになるため面倒かもしれないが、毎日の支出管理にもExcelは適用可能だ。食費や日用品、レジャー費などを日々記載し、毎日の推移をExcelで管理する。そうすることで、節約を心がけ、無駄な出費を抑えられるようになるはずだ。
家計簿アプリでも同じことはできる。だが、長期間の推移を1画面で確認できるのは、やはりExcelのメリットといえる。クラウドに保存し、スマホから利用できるようにしておけば、外出先でも随時記入可能だ。
細かい人はレシートの画像をExcel上に貼り付けておくのも良いだろう。ただし画像ファイルを添付するとファイルが重くなってしまう。そのため、「図の圧縮」は忘れないでおきたい。
まとめ
なお、この5つ以外にも、Ecxcelなら他のアプリやツールを併用することなく、1つのファイルで管理できる点や、記入しながら金融商品の勉強にもなるといったことが利点としてあげられる。
一方で、Excelで投資・資産管理を行うと、口座情報を自動で反映できない、セキュリティ面に気を使う必要がある(漏れてもいいように口座番号・個人情報を記載しない)など、アプリと比較した際のデメリットはある。
しかし、既存のアプリやツールでの管理は、どんなものでも妥協した部分が出てきてしまうのが現実だ。自分で背景色やUIをデザインし、必要に応じて数式やマクロを活用したExcelファイルには愛着がわく。私にとって、これに勝る魅力はない。