TikTok, Tyler Le/Insider
Insiderの調査部門であるInsider Intelligenceが2023年8月末に発表した最新レポートによると、2023年、アメリカの成人はInstagram(インスタグラム)よりもTikTok(ティックトック)に多くの時間を費やしていることが明らかになった。
アメリカの18歳以上のTikTokユーザーは、2023年に1日合計44.3億分を同アプリに費やすと予測されており、これに対してInstagramは1日39.1億分である。
TikTokのアテンションタイム(広告に注目している時間)の優位性は、このアプリ全体のユーザー数がInstagramよりもはるかに少ないことから、注目に値する。
TikTokの2023年のアメリカにおける月間成人ユーザー数は8230万人、Instagramは1億1840万人とInsider Intelligenceは推計している。2023年3月、TikTokは全米の全年齢層のMAU(月間アクティブユーザー数)は1億5000万人だと発表した。一方、Instagramの親会社であるメタ(Meta)は、2022年10月にInstagramのMAUを全世界で20億人以上と発表している(ただしアメリカ国内の利用者数は公表していない)。
Instagramはユーザーの規模が大きく、Facebookなどメタ傘下の他のアプリとも連動しているため、広告費でTikTokを大きく引き離している。Instagramは2023年に成人ユーザー1人当たり1時間のアプリ利用でTikTokの約6倍の広告費を稼ぎ出す、とInsider Intelligenceは予測している。
Insider Intelligenceの予測によると、TikTokは2022年に1日の総時間数ではInstagramを抜き、2025年にはFacebookを抜くという。
Insider Intelligence
「Instagramはメタの一部であり、広告主はまだメタにこだわっています。TikTokはよくできていますし、間違いなく成長しています。ショッピングにも力を入れているし、もっとパフォーマンスベースの広告を重視している。でもまだメタと肩を並べるようなものではありません」
Insider Intelligenceのアナリスト、デブラ・アホ・ウィリアムソン( Debra Aho Williamson )はそう語る。
創業からまだそう時間が経っていないTikTokは、ユーザーを増やし、アテンションタイムを増やし、より多くのマーケターを惹きつけるものを作り上げることで、今後数カ月のうちに広告費で足固めをしていくものと考えられる。
アメリカの成人がTikTokに費やす1日の総時間は2019年から2023年の間に約547%急増したのに対し、Instagramの増加率は57%だ。しかし、TikTokの競合であるInstagramのリールは閲覧数を伸ばし続けており、TikTokの躍進をさまたげる可能性もある。
7月、メタのマーク・ザッカーバーグCEOは、リールの再生回数がFacebookとInstagram合わせて1日当たり2000億回を超え、年間売上高は100億ドル(約1兆4600億円、1ドル=146円換算)を超えると述べた。
「リールはInstagramの他のサービスやフィードの時間を食っています。リールのおかげでInstagramの全体的な時間が増加しているわけではありません。人々は毎年少しずつ似たような時間を増やしていて、リールはその一部にすぎません」(ウィリアムソン)
そして、ウィリアムソンはこう続ける。
「リールは間違いなく広告主にもユーザーにも支持されていますが、TikTokにはまだ全然及びません」
コロナの流行がより多くのアメリカ人をオンラインに向かわせたため、ソーシャルメディアとエンターテインメント系アプリの大半は、2019年から2023年の間にアテンションタイムを大きく伸ばした。
「パンデミックが始まった直後から、ソーシャルに費やされる時間が大幅に増加しました。パンデミックが終息すれば、人々は通常の生活に戻り、ソーシャルメディアにそれほど多くの時間を費やすことはなくなるだろうと当初は考えていました。しかし、コロナの流行と時を同じくしてTikTokが流行し始め、動画の存在感が増したのです」
しかしTikTokもInstagramも、アテンションタイムに関してはソーシャルエンターテインメントアプリの中で1位ではない。Insider Intelligenceの分析では、YouTubeがこの2社を凌駕し、TikTokに比べて1日あたり45億分多く視聴されている。
Insider Intelligenceは、調査、ウェブやモバイルのアクティビティ追跡サービスのデータ、政府のデータ、業界の専門家からのヒアリングなど、231のソースから約4926の指標を分析することで、アメリカのメディアアプリに費やされた時間を測定しているという。以降で、Insider Intelligenceのレポートから3つのポイントを紹介しよう。
1. ソーシャルメディアに費やす時間は増加傾向
Insider Intelligenceによると、2023年にアメリカでTikTokに費やされる1日あたりの時間は2019年から547%増加すると予測されているが、他のいくつかのアプリでも急増している。
例えば、Instagram全体の利用時間は2019年から2023年の間に57%増加すると予想されており、Snapchat(29%増)、X(旧Twitter、37%増)、Reddit(119%増)などのアプリでも、TikTokよりは低いが増加が予測されている。
一方、Facebookの利用時間は2019年から約2%減少するとの見通しだ。
2. アメリカの広告費はメタが絶対的な基準で、InstagramとFacebookがTikTokに勝っている
2023年のInstagramへの広告費(成人1人あたりの滞在時間で計測)は、TikTokへの広告費の約6倍。FacebookはTikTokの約5倍だった。
メタの広告ツールは「ボックスにチェックマークを入れるのと同じくらい簡単」であり、広告主がInstagram、Facebook、Messengerにコンテンツをプッシュするのは簡単なプロセスだとウィリアムソンは言う。
3. 忘れてはいけないのがYouTube
Insider Intelligenceは、TikTokとメタのFacebookやInstagramとの比較に重点を置いているが、アプリに費やされた総時間ではYouTubeがTikTokに圧倒的に勝っている。これは、YouTube動画の長さによるところも大きい。
Insider Intelligenceの予測によると、YouTubeは2023年、1日あたり約90億分の利用が見込まれている。ただしプラットフォームの規模を勘案すると、「TikTokユーザーがTikTokに費やす1日あたりの時間は、YouTubeユーザーがYouTubeに費やす時間よりも長い」とレポートは結論づけている。
TikTokは現在、新しい支払いプログラムを通じて、アプリに長編動画をアップロードするようユーザーに促している。