石器の発明から250万年、戦争の歴史はわずか1万年…8冊の本と考える「人はなぜ争うのか」

tmb_旬感本考

編集工学研究所

「私たちは常にばらばらになり得るのであり、だからこそ私たちは共にいようと努力する」
—ジュディス・バトラー『非暴力の力

小学生のとき、夏休みの自由研究で太平洋戦争を取り上げたことがある。従軍世代だった祖父に、質問したいことを書き連ねた手紙を送った。ほどなくして、レポート用紙複数枚に及ぶ返事が届いた。

サイパンでの壮絶な日々や日本人の暮らしぶりなど、当時の情景を語り伝える手紙の中で特に印象的だったのが、「戦争で、一番悲しかったことはなんですか?」という問いへの答えだった。

祖父は当時、海軍の船に乗っていた。その船で、上官が一匹のリスを飼っていたらしい。あるとき、そのリスが不意に死んでしまった。みんなで可愛がっていたリスだったから、屈強な男たちがそろって悲しみを分かち合ったのだという。それが、祖父が書いた「一番悲しかったこと」だった。

どうして、あらゆる極限状態の中から、この小さな出来事を伝えたかったのだろう。その後も祖父から戦争の話を聞くことがあったけれど、亡くした友人のことを語りながら声を震わせたり、砲撃を受けた船がどんなふうに海に沈んでいくかを冷たく硬い声で語ったりしたこともあった。そんな中での、一匹のリスの死。

このことを直接祖父に尋ねることはできなかったけれど(私にその準備ができる前に祖父は他界してしまった)、今はこう受け止めている。あの戦争の中にいたのは、すべて人間だったのだと。あのころ大きな物語に巻き込まれた誰も彼もが、小さな動物の死に涙する、一人の人間だったのだと。そんな心を持った人々の集団同士が、なぜ、あんなふうに傷つけ合わなければならなかったのか。祖父の手紙が残したそんな問いは、今も私の中でくすぶり続けている。

戦争は必然なのか?

世界から戦争がなくなることはない、そう言う人がいる。けれど武器を使った戦争の痕跡は、約1万年前以降にしか発見されないという。人類が農耕を始めた頃だ。地球上に霊長類が誕生したのは約6500万年前、類人猿が二足歩行を始めたのが700万〜400万年前、石器の発明は250万年前、武器を狩猟に使い始めたのは40万年前だ。繰り返しになるが、武器を用いた戦争の歴史は、1万年間。それでも、戦争は必然だと言えるのだろうか。

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