2020年12月9日、米アリゾナ州のユマ試験場上空で、空軍のF-22ラプターとF-35AライトニングIIが、低コストの無人機XQ-58Aヴァルキリーと編隊を組んで飛行している。
U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. James Cason
- アメリカ空軍は、AIを活用した協働型戦闘機の製造に58億ドルの予算を要求した。
- 自律型航空機は、特攻任務の遂行やパイロットの保護に理想的だと空軍は述べている。
- 人権擁護派は、テクノロジーに命を奪わせることは道徳的な境界を越えていると批判している。
アメリカ空軍は、AIパイロットによって操縦される無人航空機を少なくとも1000機、場合によってはそれ以上を研究・製造するために、数十億ドルの予算を求めている。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)によると、空軍の共同戦闘機(Collaborative combat aircraft:CCA)プログラムの候補となりうるXQ-58Aヴァルキリーは、生身のパイロットが苦戦するようなシナリオにおいて、人間が操縦する航空機の援護や機動を行うロボット飛行士として機能することを目的としている。そして、人間が戻ってくる可能性が低いミッションにも適している。
今年後半には、メキシコ湾上空で、標的を追跡して攻撃する独自の戦略シミュレーションのテストが行われる予定だとNYTは報じている。
Insiderは以前、ヴァルキリーは時速550マイル(約885km/h)で巡航できると報じている。 運用高度は4万5000フィート(約1万3000m)、航続距離は3000海里(約5556km)だ。 他にも研究開発が進められています。
議会がまだ承認していない予算見積書には、ヴァルキリーのような共同戦闘機やそのシステムを製造するために5年間で58億ドル(約8450億円)の経費が計上されている。 この要求は、空軍による数年間にわたるヴァルキリープラットフォームのテストの後に行われた。同プラットフォームで、この航空機はF-22、F-35のデータリンク、そして人工知能を活用して無人航空機を制御する空軍のスカイボーグプログラムに使用されてきた。
NYTは、議会の試算を引用し、空軍の共同戦闘機の費用は、消耗品なのか、精巧な極上ものなのかよって、300万ドルから2500万ドル(約4億3700万円から約36億5000万円)になるだろうと報じた。 最も高いものであっても、パイロットが搭乗する有人航空機よりもはるかに安いが、どちらも部隊にとっては価値のあるものだ。
アメリカ空軍と国防総省は、Insiderのコメント要請に応じていない。ヴァルキリーを製造するクレイトス・ディフェンス(Kratos Defense)は、プログラムの機密性を理由に、共同戦闘機に関するコメントを控えた。
空軍の次世代制空権システムの取り組みは、無人共同戦闘機に支えられた友人次世代戦闘機の開発を通じて制空権を確保することに重点を置いており、広範な軍事的支持を集めているが、人権擁護派は、計画に含まれる無人戦闘機が「ターミネーター」的なディストピア的未来への道を開くことを懸念している。
自律型致死兵器の国際的な制限を提唱しているヒューマン・ライツ・ウォッチの武器部門のアドボカシー・ディレクター、メアリー・ウェアハム(Mary Wareham)はNYTに対し、 「人間ではなくコンピューターセンサーが人間の命を奪うことは、殺人を機械に外注することで道徳的な境界線を踏み越えている」と述べた。
非営利団体「フューチャー・オブ・ライフ・インスティテュート」など、AI兵器に反対する他の団体は、こうしたAI兵器の進歩を「虐殺ロボット(slaughterbots)」と呼んでいる。というのも、兵器におけるアルゴリズムによる意思決定は、戦闘の迅速化を可能にし、紛争の急速なエスカレーションや予測不可能性、さらには大量破壊兵器を生み出す危険性を増大させる可能性があるからだ。
アントニオ・グテーレス(António Guterres)国連事務総長は2019年の時点で、「人間の関与なしに命を奪う力と裁量を持つ機械は、政治的に容認できず、道徳的に嫌悪すべきものであり、国際法によって禁止されるべきである」と述べている。