ワシル・ダウド氏はニュージャージーを拠点に活動する21歳のフードクリエイターだ。
Wasil Daoud
フードクリエイターのワシル・ダウド(Wasil Daoud)氏は、朝起きると、次のTikTok(ティックトック)動画を撮影するために必要な食材と手順、そして料理を提供する相手について考える。
ダウド氏は2015年、13歳の時にYouTube(ユーチューブ)向けに動画を撮影してコンテンツ制作を始めた。ほとんどの動画はユーモラスな寸劇だったが、2020年3月にTikTokに参入した時点で、彼はクリエイターとしてのキャリアを本格的に追求するようになった。現在21歳の彼はInsiderにこう語る。
「コンテンツクリエイターになることは長年の夢でした。友人がやっているのを見て、自分も始めてみようと思ったのがきっかけです。子どもの頃は、動画や笑えるものに夢中だったから、コメディに特化することにしました」
彼が最初に制作した数本のTikTok動画は、親友と撮影した寸劇で、自分の家族の共同生活を面白おかしく取り上げたものだった。
「中東にルーツがあることが、私が最初にバズッた大きな理由でした。中東系コミュニティで、動画がとらえた家族の風景が共感を得て、大げさな演出が面白がられたんです」
2021年には題材を料理へとシフト。現在は彼が大盛りの料理を作り、ホームレスの人々に配るという内容の動画を中心に投稿している。
彼は投稿した動画について「とんでもない料理を作っている」と表現しており、大量の食材を集めて料理を作るというのがその内容だ。最初は、彼が作る料理のほとんどは食用ではなかった。ケチャップは食用色素と糊でできており、調味料はさまざまな色の砂を混ぜて作ったものだった。2022年から本物の食材を使うようになり、食事として無償提供できるようになった。
現在、ダウド氏はSnapchat(スナップチャット)、YouTube、TikTok、Facebook(フェイスブック)で合計約1400万人のフォロワーを持つ。メインで活動しているのは約1200万人のフォロワーがいるTikTokだが、YouTubeではより長編のコンテンツやショート動画を投稿するようになり、最近ではSnapchatショーも始めた。
クリエイターとしての収入のほとんどはブランドとの契約からで、TikTokにスポンサードコンテンツを投稿し、その対価を得ている。ダウド氏はこうした有償パートナーシップからの収入額は公表していないが、広告収益分配プログラムを通じての収益もあり、Insiderは彼が提出した書類を確認した。
その書類によると、2023年1〜7月の過去7カ月間にYouTube、Snapchat、Facebookから直接支払われた報酬はおよそ2万3350ドル(約338万6000円、1ドル=145円換算)にのぼる。オンラインコンテンツの閲覧者の大半をTikTokユーザーが占めているが、TikTokから直接支払われた報酬は少額で、今年に入ってからは300ドル(約4万3500円)だった。
プラットフォームから直接得た報酬の内訳
YouTube:9380ドル(約136万円)
Facebook:9265ドル(約134万4000円)
Snapchat:4704ドル(約68万2000円)
各プラットフォームの広告収益分配プログラムで収益化
ダウド氏は長編コンテンツの広告を通じてYouTubeとFacebookから直接収入を得ている。最初に活動の中心にしているTikTok向けの動画を撮影して投稿し、それから他のプラットフォーム向けに転用する。これはYouTubeへの乗り換えを進めている他のTikTokerと同様だ。この方法のおかげもあって、YouTubeは直接報酬が支払われるソーシャルメディア・プラットフォームとして最大の収益源になった。
「少し前にYouTubeで長編動画の収益化が承認されましたが、実際に長編動画を制作していたわけではなかったので、収益はありませんでした。ショート動画の収益化で状況が一変して、今の収入になりました」
ダウド氏はまた、収入源としてのFacebookの重要性を強調し、クリエイターを含む多くの人々がFacebook収益化のポテンシャルを知らない、と語る。彼が今年Facebookから直接得た収入はYouTubeでのそれには及ばないものの、その差は100ドルほどしかない。
「多くの人がFacebookは死んだと思っていますが、そんなことはありません。私のコンテンツはいつもFacebookで火がつくのです」
ダウド氏は、マネージャーとクリエイター育成会社ジェリースマック(Jellysmack)の支援も得ながらSnapchatショーにも進出した。Facebookのストーリーズとは異なり、通常3〜5分の長さのSnapchatショーは有効期限がなく、Snapchatのディスカバー(Discover)フィードでも宣伝される。ダウド氏をはじめクリエイターたちはコンテンツに表示される広告から収益の一部を得る。
「最初のエピソードですぐに稼ぐことができました。大きな収益でした」
料理を配ることがコンテンツの大部分に
2021年にカリフォルニア州ロサンゼルスに転居したダウド氏は、高層マンションの外にホームレスが多くいることに気づいた。
「ニュージャージーでは、ロサンゼルスほど多くの路上生活者を見かけることはありません」
彼はコンテンツの方向を変え、本物の新鮮な食材を使って大皿料理を自ら作り(たとえば80ポンド〔約36kg〕の生地を使って約200枚の手作りピザを作るなど)、食べきれなかった分を住居のない人々に配る活動を撮影するようになった。出会った路上生活者にはいつも口頭で撮影の同意を求めているという。
それ以来、彼はニュージャージーに再び引っ越し、エンジェリンク(Angelink)というクラウドファンディング・プラットフォームを通じて料理を無償提供するための資金集めをしている。彼のフォロワーは、ソーシャルメディア上のプロフィールのリンクから寄付することができる。
「大金を稼ぐあまり世間離れしていると思われたくないので、できる限り恩返しをしようと頑張っています」