セルフレジは、アメリカ人を孤独にするテクノロジーのひとつだ。
Andrew Kelly/Reuters
- セルフレジはアメリカ人をより孤独にするテクノロジーかもしれない。
- ほとんどの客はセルフレジを好むが、結果としてレジ係とのつながりが希薄になる。
- テクノロジーが発展し、ここ数十年と比べて今のアメリカ人は一人で過ごす時間が長くなっている。
アメリカ人はかつてないほど孤独になっており、セルフレジがその原因の一部である可能性があるという。
小売業者はますますセルフレジに依存するようになっている。2023年8月28日にロサンゼルス・タイムズが報じたところによると、セルフレジは労働力を節約するかもしれないが、同時に、社会科学者が「弱い社会的つながり(weak ties)」と呼んでいる客とレジ係のような気軽な関係も減らしてしまっているという。
ゲーム業界のニュースを扱うウェブサイト「プレイUSA(PlayUSA)」の調査では、アメリカ人の3分の2が、テクノロジーによって他者との交流が難しくなったと回答している。アメリカ公衆衛生総局(Surgeon General)も2023年、テクノロジーによって悪化した孤独が健康に及ぼす影響を警告する報告書を発表している。
セルフレジは何年も前から存在するものだが、そのテクノロジーは最近ますます多くの店舗に拡大している。例えば、スーパーマーケットチェーンのクローガー(Kroger)には、セルフレジだけを設置した店舗が2023年7月からテネシー州で営業していると地元テレビ局のWKRNが報じている。またアマゾン(Amazon)は何年もかけて顧客がレジの手間を省き店舗から出られるテクノロジー「ジャスト・ウォーク・アウト(Just Walk Out)」に取り組んでおり、アマゾン・フレッシュ(Amazon Fresh)にセルフレジを増設している。
プレイUSAの調査によると、約66%の人が人間が管理するレジよりもセルフレジを好むと答えている。特にZ世代にセルフレジは人気で、84%が人のいるレジよりもセルフレジが好きだと回答している。
しかし、他の世代の人たち、特に年配の世代の買い物客は、従来レジで行われるような対面でのやりとりを好む傾向があるという。南カリフォルニアの食料品店アルバートソンズ(Albertsons)で買い物をしている72歳のダリル・ジョーンズさん(Darryl Jones)は、この店で親しくなったレジ係とジョークを交わすのが好きだとロサンゼルス・タイムズに語っている。
「こういう些細なことが人間である重要性を本当に高めている。コンピューターは冷たい。礼儀も奪ってしまう」
セルフレジは、アメリカにおいて孤独を促進している潜在的要因のひとつにすぎない。多くのアメリカ人は、公共の場が多く、人との交流が容易な都市に住む金銭的余裕がないという。その代わりに、住宅費の高騰によって、近隣住民との交流があまり存在しない郊外や農村部に住まないといけいないのだ。
公衆衛生総局の報告書によると、アメリカ人は21世紀初頭よりも一人で過ごす時間が増えており、例えば、平均的なアメリカ人がひとりで過ごす時間は、2003年と比較し、2019年は月24時間増えているという。