ワークマンは女性向けインナーに本格参入する。
撮影:横山耕太郎
ワークマンが「女性向けの高機能なインナー(肌着)市場」に本格参入する。8月30日、2023年の秋冬新製品発表会で発表した。
5年後の目標として、国内シェア5%、ワークマン全体の売り上げの2割にあたる500億円を目指すと打ち上げた。
高機能なインナーを「次の成長エンジン」と位置づけるが、高機能インナー市場は「ヒートテック」や「エアリズム」で知られるユニクロが圧倒的な知名度を誇っており、新規参入は簡単ではない。
ワークマンは女性向け商品の開発に注力し、積極的な出店を進める一方で、物価高や既存店舗での売り上げの低下により、2023年3月期は13年ぶりに減益となり成長が鈍化しつつある。
インナー市場「日本にはジャイアントがいる」
プレゼンする土屋哲雄専務。
撮影:横山耕太郎
製品発表会でプレゼンテーションに立った土屋哲雄専務は、高機能インナーの市場についてユニクロを念頭に「日本にはジャイアントがいる」とし、次のように話した。
「最近(ユニクロの)社長は若くなりましたが、トップの企業とガチで戦ったら、うちは勝てっこありません。我々が生き延びるための生存最低シェアは5パーセントだと考えている。5パーセントをうまく差別化してくるというのがこの話のミソです」
ワークマンによると肌着市場は、男性・女性合わせて1兆円規模。肌着は購入頻度が高いことからも、来店動機を高める意味でも、最重要アイテムだとしている。
ファンケル開発の素材「保湿」が売り
ワークマンが発売する「保湿下着」を着たモデル。
撮影:横山耕太郎
保湿下着は全8アイテムを販売する。
撮影:横山耕太郎
ワークマンが9月から全国の店舗で販売する女性向けのインナーは、「保湿」をウリにしている。
肌着の素材には、化粧品大手・ファンケルが開発した素材「セラミドヴェール」を使用している。ワークマンによると、「セラミドヴェール」には保湿成分を配合した糸が使われており、一般的なポリエステルに加えて水分量が多く、50回洗濯しても効果が持続するという。
新製品発表会には、ワークマンの社外取締役に2023年6月に就任したYouTuberの濱屋理沙氏も参加。濱屋氏はワークマンが発売するインナーについて「他社製品で冬に非常に人気が高い吸湿発熱の繊維を使ったものは、乾燥肌やアトピー性皮膚炎のある方はかゆくなってしまうことがある」と言及した。
「私も実際、非常に背中が乾燥して痒(かゆ)くなって、つい血が出てしまうほどかいてしまうこともあるんですが、背中に自分でクリーム塗るのってすごく大変なんです」(濱屋氏)
「ユニクロが一番良い市場を取っている」
撮影:横山耕太郎
ワークマンの戦略は、徹底して「ユニクロと戦わないこと」だ。
女性向け保湿下着は、全8アイテムを展開。価格はキャミソールが税込み980円、8分袖ランドネックが同1500円。11月にはソックス(税込み399円)やタンクトップ(同980円)、レギンス(同1900円)などが発売予定という。
一方で、ユニクロの「ヒートテックキャミソール」は同1290円、「ヒートテックウルトラライトタートルネックT(長袖)」は同1290円だが、さらに温かさをアピールする商品「タートルネックT(極暖・長袖)」は同1990円だ(ユニクロのオンラインサイト参照)。
冬場での暖かさをアピールするユニクロに対して、ワークマンが打ち出したのは「保湿」と、ターゲットも違う。
土屋氏はBusiness Insider Japanの取材に対し、「ユニクロは真ん中で1番いい市場を取っており、そこを取ることはできない」と話した。
「例えばその周辺でアトピーがひどい人や、子供の虫刺されを嫌がる人など、ちょっと市場をずらして5%を狙う。そこを外れたらいけなと思っています」
将来的には、超防寒や超冷感のインナーや、花粉を防げたり、疲労に効果があったりするインナーの開発なども考えているという。
夏向けのインナーは来春発売
ワークマンが来春に発売予定のインナー。
撮影:横山耕太郎
また2024年春には、汗を吸って放出する下着「シン・呼吸するインナー」も発売予定で、このインナーには旭化成と共同開発した繊維を使用する。
春に発売するこのインナーは、キャミソールが同780円、カップ付きタンクが同980円での発売を予定している。
「価格面でユニクロが高いなと感じる人に来てほしいと思っています」(土屋氏)
銀座に新業態、9月1日開店
デザイン性の高い商品の開発を進めるワークマンだが、増収増益が続いている。
撮影:横山耕太郎
ワークマンは2023年9月1日、新業態となる「Workman Colors」の1号店を銀座にオープンする。新業態ではよりデザイン性の高い商品を扱うといい、今後は新宿や渋谷、大阪の梅田などの繁華街に10店舗ほどの出店を計画しているという。
一方で足元の業績は、増収減益が続いている。8月に発表した2024年3月期第1四半期決算では、売上高にあたる営業総収入は前年同期比5.9%増加の353億500万円だったが、純利益は4.2%減の45億6500万円だった。
この現状について土屋氏は「うちは損益分岐点が56.9パーセントの会社で、値上げしなくても利益がでている」と話す。
「(既存店の売り上げは)すでに伸び切っている面がある。なので新規出店を進めたいが、賃料など条件が厳しくて出店ができていない」
期待がかかるインナー市場への本格参入については、「これまではデザインが地味なこともあり、あまりやってこなかった」と話す。
「(事業成長のためには)トップライン(売上高)を増やさなきゃいけないということもあり、真面目にやっていきたい。まだまだインナーの新製品についてはアイデアがたくさんあるので」