三井不動産が「危機管理センター」初公開。商業施設は災害時にこう対処する

危機管理センター

災害時に本部機能を果たす危機管理センター。平時は無人だが、宿直が毎日災害対策本部の立ち上げ訓練を行っているという。

撮影:土屋咲花

災害時、オフィスビルや商業施設はどのように働く人や顧客、テナントの安全を確保し、被害を最小限に抑えるのか ——。

9月1日の防災の日を前に、東京ミッドタウン八重洲などのオフィスビルや商業施設を手掛ける三井不動産が、自社の防災に対する取り組みを公開した。

災害時の対策拠点を初公開

デモンストレーション

オフィス対応を担うチームのデモンストレーション。災害時は各地の施設と画面でつながり、被災状況や対応についてやり取りする。

撮影:土屋咲花

災害時に災害対策本部として機能する「危機管理センター」を報道向けに初めて披露した。

三井不動産の危機管理センターは、本社オフィスもある日本橋室町タワーの8階にある。

壁面に大画面モニターを備えた広々とした一室で、テナント対応、オーナー対応、オフィス対応などのチームごとにテーブルが並んでいる。有事の際には社員がそれぞれの役割名が書かれたビブスを着用して対応にあたる。

システムを立ち上げると、大画面モニターには三井不動産が管理する各地のビルの防災センターの様子が映し出される。この危機管理センターが各地の施設と連絡を取り合いながら、被害状況の確認や復旧にあたるという。

平常時は無人だが、会議室などの他用途には使用しない。こうした常設体制は2005年から取っているという。夜間は2人の宿直担当者が近隣のホテルに泊まり、災害発生時に徒歩で駆けつけられるようにしている。

三井不動産ビルディング本部の江崎正東さんは、

「我々が勤務している時間を月曜から金曜日の午前9時から午後5時半とすると、その時間は1週間のうちの25パーセントしかないんです。平日の夜間と土日の2日間を足すと75パーセントです。圧倒的に高い確率で、勤務時間中ではない夜間か休日に(災害が)起こるだろうと想定をしています。なので、とにかく宿直の2人がここに駆けつけて対策本部を立ち上げられるようにしています」

と説明する。

防災センターは労働環境に配慮、仮眠室はカプセルホテル級

3月に開業した、東京ミッドタウン八重洲の防災センターも公開した。施設2階にある防災センターでは日々、約30人体制で施設内の監視に当たっている。

防災センターのマルチモニターには、施設内のカメラの映像が常時切り替わりながら映し出される。施設全体のカメラの数は、六本木の東京ミッドタウン(800個)よりも多い1000個が設置されているという。

防災センター従業員の労働環境にも配慮しているとして、プライバシーに配慮した仮眠室や休憩室も公開した。

休憩室は、駐車場のスタッフらも含めた120人程度の管理運営スタッフが利用する。これまでは管理会社別に設けられていたが、共通にすることでコミュニケーションの促進をはかり、有事の際に連携が取りやすくする狙いという。

bedroom

防災センター従業員の仮眠室。これまでは相部屋に2段ベッドが主流だったが、ロールカーテンでプライバシーを確保できるカプセルベッドにしている。

撮影:土屋咲花

休憩室

防災センター従業員らの休憩室。

撮影:土屋咲花

「共助」「自助」を促進

防災フェア

東京ミッドタウン八重洲では、一般来場者にも防災への意識を高めてもらおうと「防災フェア」を開催した。

撮影:土屋咲花

首都直下型地震は、30年以内に70%の確率で起こるとされている。三井不動産では、消防などの「公助」に頼らず、地域と連携した「共助」やテナント企業などに「自助」を促す取り組みも進めている。

地域と連携した取り組みでは、解体前のビルを活用した消火器の放射訓練やエンジンカッターによる破壊訓練など、稼働しているビルでは実施できないような実践的な訓練を東京消防庁と合同で行っている。こうした実践訓練は今後、消防団や地域の町会とも連携して実施していくという。

テナントを始めとした企業向けには、定額制のBCPコンサルティングサービス企業として3月に立ち上げた「アンドレジリエンス」を通して災害対応力の強化を支援している。会員企業数は非公開としたものの、「想定よりも大手企業からの引き合いがある」(担当者)という。

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