KDDIは2024年内にスマートフォンと衛星の直接通信によるメッセージサービスを開始すると発表した。
撮影:小林優多郎
KDDIは8月30日、Space Exploration Technologies(以下、スペースX)と、2024年内に衛星とスマートフォンの直接通信サービスを提供すると発表した。
通信にはKDDIがすでに保有する携帯電話向けの周波数帯域を使用するため、同社は「(現在)ご利用中のauスマートフォンのまま衛星と通信が可能」としている。
ただし、電波関連法令の整備とスペースXの衛星の打ち上げの進捗次第になるため、正確な時期や仕様、価格設定は未定となっている。
計画では2024年中にSMS(ショートメッセージ)の送受信が提供され、衛星通信の許容量次第で、音声やデータ通信サービスに拡大していく方針だ。
auと「UQ」「povo」でもサービス展開の予定
KDDI髙橋誠社長(左)とSpace Exploration TechnologiesのSenior Vice President of Commercial BusinessのTom Ochinero氏。
撮影:小林優多郎
30日に開催された会見には、KDDIの髙橋誠社長とスペースXでコマーシャルビジネス担当のバイスプレジデントを務めるTom Ochinero(トム・オチネロ)氏が登壇した。
髙橋社長は今回の施策について「(地上)基地局を介すわけではないのが大きなポイント」と語る。
これは、KDDIが現在一部の基地局のバックホール(基地局をつなぐネットワーク)として利用し、法人向け営業も担当している衛星インターネットサービス「Starlink(スターリンク)」とは違い、特別なアンテナや地上基地局経由ではなく、文字通りスマホだけで使えるサービスであることを強調した形だ。
KDDIはスマホ自身が衛星と通信すること強調している。
撮影:小林優多郎
また、会見では高価格帯・大容量の「au」だけではなく、低〜中価格帯の「UQ mobile」、オンライン専用プランの「povo 2.0」への展開も示唆された。
一方、オチネロ氏は今回のサービスについて「アジアで初めて始める」と、KDDIとの2021年から続く提携関係をアピール。
スペースXが展開する他の国でも、サービスが利用できる。
撮影:小林優多郎
さらに、国内で該当サービスを使えるユーザーは、日本国内と同様なスマホと衛星の直接通信サービスを提供する予定のアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スイスでもSIMカードの交換等をせずに、サービスを受けられると明かした。
「地上のネットワークに繋がれない人がスターリンクで当たり前のように接続できる」と話す Ochinero氏。
撮影:小林優多郎
まずはSMSからの提供となる点についてオチネロ氏は、SMSが「ネットワークの容量や遅延の影響を受けにくい」ことを挙げ、サービス開始の際にはユーザー体験を重視した結果だと述べた。
とはいえ、オチネロ氏も「今後データサービスにも広げていきたい」とサービス拡張には意欲的。ただし、KDDIとスペースXともに「技術的な検証が必要」という見解を示している。
楽天モバイルより先んじて開始時期を予告したKDDI
KDDI髙橋社長は、都内のプラネタリウムを使って大々的にサービスを予告した。
撮影:小林優多郎
KDDIの髙橋社長は今回の施策を「いつものスマホで空が見えれば、どこでもつながるサービス」と表現。
他の携帯電話事業者との競争環境において「これからの差別化のポイントは非日常をつなぐこと」と述べた。
会見の中では明確に言及しなかったが、国内通信事業者で衛星通信に取り組む例として、楽天モバイルが念頭にあることが想像できる。
取材陣からの「(今回の)衛星通信サービスは、楽天モバイルへのローミングに含まれるか」という質問に、「含まれない」と回答するKDDIの取締役執行役員 松田浩路氏(左)。
撮影:小林優多郎
楽天は4月26日にアメリカのAST SpaceMobileと共同で、世界初となる「低軌道衛星と市販スマートフォンの直接通信試験」による音声通話が成功したと発表していた。
4月のリリースはあくまでアメリカでの実験例だが、楽天モバイルは国内でも衛星通信サービスを開始し、通信サービスエリアの急速な拡大を狙っている。
ただし、その時期はいまだに明確には定まっておらず、KDDIはSMSに限るものの「2024年内」と発表することで、そんな楽天モバイルの鼻を明かした格好になる。