コンビニ3社のロゴ。
Business Insider Japan
2023年9月1日の「防災の日」は、死者・行方不明者数が10万人を超えた国内最大級の災害である「関東大震災」から100年の節目の日だ。
全国津々浦々にネットワークを張り巡らし、いまや私たちの生活インフラのひとつであるコンビニは、各社が災害発生時に地域の支援を担う機能を持たせていることはあまり知られていない。
「コンビニと災害」をテーマに、セブンイレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソン各社に対応指針を聞いた。
トイレ、水道水、道路情報が利用可能な「帰宅困難者支援協定」
まず3社に共通するのは、各自治体と結んだ「帰宅困難者支援協定」だ。
同協定は、地震などの大規模災害によって多くの帰宅困難者が発生した場合に、地域に点在するコンビニや外食チェーンが「水道水」「トイレ」「道路情報」の提供等の支援を行うことを自治体との間で取り決めておくものだ。
これは阪神・淡路大震災(1995年1月)の際に、交通機関が途絶えた状況下では「通勤・通学者や観光客を速やかに避難させるための支援が何よりも欠かせない」という体験に基づいてつくられた。同協定に参加したお店は、「災害時支援ステーション・ステッカー」を掲示することになっている。コンビニの店頭に貼られているのを見たことがある人もいるだろう。
「災害時帰宅支援ステーション」ステッカー。
出典:内閣府
セブン&アイ・ホールディングス広報は「私たちは、多くの自治体と災害時の物資支援協定を結び、要請があれば可能な範囲で水や食料などの支援を行う体制を整備しています」としている。
ファミリーマート経営企画部経営企画グループ潮顕彰(うしおあきら)マネジャーも「全国の都道府県と『災害支援協定』を結んでおり、自治体からの要請に応じて食品(おむすび、パンなど)や飲料水、日用品(下着、タオル、軍手など)の物資を提供する」と話す。
ファミリーマート経営企画部経営企画グループ潮顕彰マネジャー。
撮影:杉本健太郎
トイレを貸すか貸さないかは「オーナー判断」
ただし、注意が必要なのがトイレは全てのコンビニで利用できるわけではないということだ。3社とも共通して、トイレを客に貸すか貸さないかはフランチャイズ店舗の場合、あくまでオーナーの判断になると言う。
ファミリーマートは「最終的には加盟店のご判断」(潮顕彰氏)、ローソン・リスク・情報セキュリティ統括部部長の石合大悟氏は「(トイレを貸せない店舗があるのは)防犯上の理由」としている。例えば、トイレに行くのに「在庫置き場やスタッフルームを通ってしまう場合」(ローソン・石合大悟氏)など、レイアウトの問題で貸せないことがあるのだ。セブンイレブン・ジャパンも同様の回答だった。
災害時に「本当にニーズがあるのは“おにぎり”」
災害が発生してもオーナーが営業可能だと判断した場合、コンビニは営業を続ける。この場合、オーナーや店員自身も被災者であるケースもあるので、あくまで安全第一で判断するという点では3社とも共通している。
「安全に配慮しながら、災害時でも営業を継続すべきとオーナー様が判断した場合には、オーナー様と店舗従業員にて運営します」 (セブン&アイ・ホールディングス広報 )
災害時に売れるもの、ニーズがある商品も気になる。
ローソン・石合大悟氏は、「(求められるのは)ウェットティッシュと日持ちするカップラーメン」だという。ただし、食料は同じものを食べ続けていると飽きが生じる。ローソンでは「本当にニーズがあるのはワンハンドで食べられるおにぎり」(石合大悟氏)だと考えている。
ローソンの特徴として、店内に調理スペースを設けた「まちかど厨房」を約9200店舗で展開していることが挙げられる。この厨房では、物流がストップし、在庫が入ってこなくても、店内にストックした材料を元に、出来立てのフードを提供できる。お弁当の具材がない時は、「災害時のメニュー」として塩飯おにぎり(税込み100円)を提供するオペレーションになっている。
ローソン石合大悟リスク・情報セキュリティ統括部部長。
撮影:杉本健太郎
地震、水害のほかにも雪害、土砂災害、感染症など、コンビニ各社は災害に備えて地域支援を準備をしている。
もし自身が被災してしまったら、近所のコンビニが助けになるかもしれないことは覚えておきたい。