総務省はヤフーの何を問題視した? キーは電気通信事業法の「目的規定」だった

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撮影:Business Insider Japan

Yahoo! JAPANの検索サービスにおいて、一部の検索クエリ(検索ワード)に含まれる位置情報が韓国のNAVERに送信されていたとして、総務省が30日、ヤフーに対して行政指導と要請を行った。

プライバシーポリシーへの記載が、利用者への周知において不十分であるとして、総務省は「違反ではないが望ましくない」と判断。さらなる利用者への周知と安全管理措置の実施を求めた。

一連の問題をめぐっては、ヤフー側からもお知らせが配信されているが、非常に端的なもので、総務省がどこを問題視したのかは見えづらい。一体、何があったのか。

行政指導の背景で何が起こっていたか

ヤフーに対する行政指導の書面

ヤフーに対する行政指導の書面。

撮影:Business Insider Japan

Yahoo! JAPANの検索サービスでは、以前からグーグルの検索エンジンを利用している。検索エンジンだけでなく検索連動型広告配信システムもグーグルの仕組みを採用しているが、新たな検索サービスの開発検証において、NAVERに業務委託していた。

従来から、Yahoo! JAPANの検索サービスではプライバシーポリシーの範囲内で「外国にある企業を含むパートナー企業に利用者のパーソナルデータを提供する場合がある」といった内容を記載している。

ヤフーへの取材によると、NAVERとの業務委託でも、同様のプライバシーポリシーで運用していた。その中で、5月18日から7月26日までの間は検索エンジンにおける試験運用を実施し、一部の利用者の検索関連データを取得。約756万のユニークブラウザーの検索クエリなどのうち、約410万のユニークブラウザー分の位置情報をNAVERに提供する形になっていた。

保管されていたデータは、NAVER内で物理的に提供情報のコピーなどが可能になっていたことで、安全管理措置が不十分だった……というのが総務省の指摘だ。

ヤフーは取材に対して、もともと各国の企業とも協力してサービス向上に向けた開発検証を進めており、その1社がNAVERだったと説明。その中で、今回の試験運用期間では「Yahoo! JAPANで検索されたクエリのうちの一部がNAVERに送信されており、その一部には市区町村レベルまでの位置情報も含まれていた」という趣旨の説明をしている。検索クエリには個人を特定する情報は含まれておらず、アカウントなどとも紐付いていなかったという。

総務省が問題視したのは電気通信事業法の「目的規定」

総務省

撮影:今村拓馬

総務省への取材によると、指摘の根拠は電気通信事業法の第1条にある「その利用者等の利益を保護し、もつて電気通信の健全な発達及び国民の利便の確保を図り、公共の福祉を増進することを目的とする」という目的規定だ。

ヤフーのプライバシーポリシーにおける記載だけでは、どういった情報が、どのように提供されるのかが明らかではなく、総務省は「利用者の利益を保護する目的規定に照らして不十分」だと判断した。

同時に、ヤフー自体は各パートナー企業との契約で安全管理措置を定めていたが、韓国の巨大IT企業であるNAVER内では、物理的なコピーなどが可能な状態になっていたことも、総務省は問題視した。

ただし、いずれも電気通信事業法に対して「違反」だったとは認定せず、あくまで不十分だったことに対する「指導」という位置づけにとどめている。

総務省の指導でヤフーの何が変わったのか

ヤフー

総務省の行政指導を受けて、Yahoo! JAPANのトップページに追加された「ヤフーの検索関連データの取り扱いについて」へのリンク。

撮影:Business Insider Japan

指導を受けてヤフーでは、「パーソナルデータの活用」ページに「Yahoo! JAPANの検索サービス・検索連動型広告配信システムおよび検索関連データの取扱いについて」を追加した。また、Yahoo! JAPANのトップページに「ヤフーの検索関連データの取り扱いについて」というリンクを設けてアクセスできるようにもなっている。

上記指導に加えて総務省は、ヤフーなどの電気通信事業者において、特定の利用者情報の適正な取り扱いを定めた規制(特定利用者情報規律)に基づき、「どういった情報が、どのような目的で収集されたか、どのような安全措置を行っているか」などを公表するなどの対応を求めている。ただ、こちらはあくまで要請の形だ。

なお、10月1日付けてヤフーと合併を予定するLINEは2021年、NAVERとの関係で個人データを韓国のサーバーに保管する際の不適切な取り扱いなどが問題になった。一方、今回の総務省の行政指導の原因となった事象は、以前からYahoo! JAPANで実施されてきた検証の一環であり、2021年に起こった問題との関連はないとヤフー側はコメントしている。

LINEとヤフーは9月1日、プライバシーポリシー利用規約も統合することを公表した。統合以降は、こうした外国企業を含めた第三者への情報送信は、新プライバシーポリシーで規定されることになる。

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