リチウムイオン電池の生産には、児童労働や環境破壊がつきまとっている。
Patricia Pinto/Reuters
- ウクライナでの戦争がリチウムイオン電池を含むクリーンエネルギーの研究に拍車をかけている。
- リチウムイオン電池の製造には児童労働が伴うことが多く、環境に悪影響を及ぼす可能性もある。
- ポーラー・ナイト・エナジーによると、砂の電池は、リチウム電池と同等の効果があり、児童労働などの人権侵害や環境破壊を軽減すると言われている。
ウクライナへのロシアの侵攻は、奇妙なことではあるが良い結果ももたらしている。それは、ロシアの原油への依存を減らし、再生可能エネルギー利用の目標を達成するため、ヨーロッパ全体が新たに活性化したことである。
また、拡大を続ける電気自動車(EV)市場で使用されるリチウムイオン電池に代わる、より安全な電池の研究にも拍車をかけている。
ワシントン・ポストによると、砂で作られた電池の研究が盛んになっているという。
ウクライナ戦争がヨーロッパ全域でのクリーンエネルギー研究を加速させている
太平洋評議会(Atlantic Council)のグローバル・エネルギー・センター(Global Energy Center)で欧州エネルギー安全保障担当副局長を務めるオルガ・ハコヴァ(Olga Khakova)は、「ロシアによるウクライナへの侵攻は、ヨーロッパにおけるクリーンエネルギーへの関心を高めた」と述べた。
「ロシアは、ウクライナでの地政学的な目的をできるだけ容易に達成するために、ウクライナが同盟国からの支援を受けられないか、最低限の支援しか受けられないようにしたかった」とハコヴァは言う。
「それを確実にする方法のひとつが、ロシアのエネルギー供給へ大きく依存させることによって、ヨーロッパを人質に取ることだった」
クリーンエネルギーによる解決への取り組みは、ヨーロッパ全体のエネルギー専門家間の協力を促進し、あらゆる面で新たなイノベーションにつながっているとハコヴァは述べた。
「気候政策のいくつかに関しては常に緊張があり、異なる見解が存在する」とハコヴァは述べ、「しかし、ヨーロッパがこのような多くの問題を脇に置いて、一致団結してこのエネルギー危機を乗り越えようとしているのを見ていると、レジリエンスとイノベーションはまだ存在している」とした。
その結果もたらされた重要なイノベーションのひとつが、人権侵害や環境破壊につながるリチウムイオン電池に代わる新たな電池の開発である。
リチウムイオン電池の代替品は砂の電池
このような新しい研究が相次ぐ中、フィンランドのポーラー・ナイト・エナジー(Polar Night Energy)は、リチウムイオン電池に匹敵するパワーを持つ砂でできた電池を製造しているとワシントン・ポストが伝えている。
研究者がワシントンポストに語ったところによると、「砂電池」は太陽や風によって生成されたエネルギーを蓄え、熱に変換する。その熱をエネルギーとして使用するときまでファンの助けを借りて、砂が保持し、維持することができるという。
この電池の開発は、リチウムイオン電池の2つの重要な構成要素、コバルトとニッケルの採掘に伴う人権侵害や環境破壊の軽減に役立つ可能性がある。
アムネスティ・インターナショナルによると、コバルトの採掘は児童労働に大きく依存しているという。世界で最もコバルトを産出しているコンゴ民主共和国だけでも、約4万人の子どもたちがコバルト鉱山で働いているとアムネスティ・インターナショナルは推定している。
ハコヴァは、ウクライナでの戦争はこれらの重要な鉱物の採掘と加工に適切な基準を設定する方法について、ヨーロッパ中のエネルギー専門家間の議論を加速させていると述べた。
コバルト産業で蔓延している人権侵害にとどまらず、リチウムイオン電池は環境に有害な影響を与えている。リチウムイオン電池による火災は増加の一途をたどっており、中には消火に数百人の消防士を必要とする事故も発生しているとCNNは2023年初めに報じている。