家具がない… アメリカのホテルチェーンが打ち出した、新たな長期滞在型ホテルが人気

室内の様子

WaterWalk

  • ホテルチェーンのウォーターウォーク(WaterWalk)は長期滞在型ホテルとしては異色で、客室の多くは家具がない。
  • こうした「家具なし」の部屋の宿泊費は、1泊2日で平均約400ドル(約5万9000円)だと同社のCEOは話している。
  • ウォーターウォークは現在、13店舗を展開している。

ミニマリストなデザインが好きなら、ウォーターウォークを気に入るだろう。拡大を続けるこのホテルチェーンは家具を一切置かない客室を用意することで、宿泊客に究極のミニマリズムを提供している。

だからといって、床で眠れということではない(できなくはないだろうけれど)。こうした客室を予約した宿泊客は、自分の家具を持ち込む(bring your own furniture:BYOF)ことが見込まれている。ただ、昔ながらのホテルがいいという人も、ウォーターウォークを敬遠する必要はない。家具付きの客室もあるからだ。

ウォーターウォークはホスピタリティ業界のベテラン、ジャック・デボア(Jack DeBoer)氏が2014年に立ち上げたホテルチェーンだ。2021年に亡くなったデボア氏は「レジデンス・イン(Residence Inn)」や「サマーフィールド・スイーツ(Summerfield Suites)」「キャンドルウッド・スイーツ(Candlewood Suites)」「バリュー・プレイス(Value Place)」のブレーンでもあった。


会社は孫娘のミミ・オリバー(Mimi Oliver)氏が指揮している

ホテル外観

WaterWalk

カンザス州ウィチタで祖父の事業を引き継ぐまで、オリバー氏はウォール街で働いていた。「もし自伝を書くなら『ウォール街からウィチタへ』というタイトルになるでしょう」とオリバー氏は話している。

ホテル滞在は、旅行の楽しみの半分を占めることもある —— 新しい家具が置かれた、見慣れないホテルの部屋を探検する時のワクワク感が嫌いな人はいないだろう

部屋の様子

WaterWalk

ウォーターウォークにはそういった楽しみはないかもしれない。だが、そこがポイントだ。

部屋はスタジオタイプから寝室が3つあるスイートまでさまざまだ

室内の様子

WaterWalk

キッチンや洗濯乾燥機など、設備の整った便利なアパートメントタイプもある。

ウォーターウォークは昔ながらの客室も提供している一方で、家具なしの客室が他の長期滞在型ホテルと一線を画している

室内の様子

WaterWalk

毎月家賃を払うアパートと考えればいい(Wi-Fi、水道光熱費込み)。

通常の賃貸物件と同じく、家具のないスイートに宿泊したい場合は一般的な"条件"をクリアする必要がある

室内の様子

WaterWalk

ウォーターウォークの公式サイトによると、クレジットスコアが550以上あること、月収が家賃の2.5~3倍あることなどがその条件に含まれている。

ただ、アパートと違って「賃貸」ではない —— ホテルであることには変わりない

室内の様子

WaterWalk

賃貸アパートのように、他の入居希望者が現れる前にと、慌てて申し込む必要もない。

家具付きの客室はヒルトンが手掛ける「ホームウッド・スイーツ(Homewood Suites)」を競合相手と考えていると、オリバー氏は話している

室内の様子

WaterWalk

これらの客室は、従来の長期滞在型の法人旅行者をターゲットにしている。仕事や研修で一時的な転勤を必要とする会社員などがこれにあたる。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの前は、こうした宿泊客を長期滞在型ホテルは狙っていた

ホテル外観

WaterWalk

しかし、出張旅行は観光旅行ほど回復していない。

ただ、オリバー氏にとって、これは大した問題ではないようだ。

今でも、ウォーターウォークの家具付きの客室を予約した客は平均100泊以上すると、オリバー氏はInsiderに語った

室内の様子

WaterWalk

時期にもよるが、宿泊料は1泊2日で約115ドルからで、200ドル以上になることもある。ハイシーズンだと、アリゾナ州フェニックスの店舗では1泊2日で250ドル近くすることも。

ただ、家具なしの客室ではやや状況が異なる

室内の様子

WaterWalk

ウォーターウォークの家具なし客室の利用客は、平均して約400泊するとオリバー氏は話している。

支払いは月単位だ —— アリゾナ州ツーソンの店舗では、家具なしの客室(寝室は1室)の宿泊料は月額約1500ドルからだ

ホテル外観

WaterWalk

法人旅行者以外だと、家具なしの客室を予約する客は一時的な住まいを期限を定めずに探していることが多い。家族連れ、個人、トラベルナース、デジタルノマドといった人々が利用している。

ウォーターウォークの新しい店舗にはロビーのラウンジ、焚火台やグリルのある屋外スペースなど、伝統的なホテルような共有スペースもある

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WaterWalk

「落ち着いて暮らすことのできる、家やアパートのように感じられるでしょう」とオリバー氏は話している。

実際、カンザス州ウィチタにある店舗には、約5年間"暮らしている"宿泊客がいるという。

オリバー氏によると、家具付きと家具なしの比率は「基本的に」半々だ

室内の様子

WaterWalk

ただ、最新の「Gen2」プロトタイプ店舗では、家具付きの部屋が家具なしの部屋よりも10%ほど多くなっている。ただ、必要があればウォーターウォークでは簡単に家具を入れたり出したりできるという。

カンザス州オーバーランドパークにあるウォーターウォークでは、家具なしの客室への需要が高まっている

室内の様子

WaterWalk

その一方で、ノースカロライナ州シャーロットでは逆に、家具付きの客室の方が予約が多いという。

家具がないホテルの客室は確かに普通じゃないかもしれない —— ただ、このコンセプトは今のところうまくいっている

室内の様子

WaterWalk

異例の長期滞在に支えられ、ウォーターウォークは「非常に高い稼働率」を見せていると、オリバー氏は話している。

ウォーターウォークの稼働率は、通常「80%台」だとオリバー氏は明かした

屋外スペースの様子

WaterWalk

そして、宿泊客は長期滞在するため、稼働率が「大きく下がる」ことはないという。

この"成功"のおかげで、ウォーターウォークは急速に成長している

室内の様子

WaterWalk

「今後24カ月で、ウォーターウォークの店舗数は倍増する見込みです」と広報担当者はコメントしている。

ウォーターウォークはホテルを一から建設することもあれば、既存の物件を再利用することもある

室内の様子

WaterWalk

ジョージア州サンディ・スプリングス(アトランタに近い)にある店舗は、かつてレジデンス・インだった建物を9カ月かけて128室のウォーターウォークに生まれ変わらせたものだ。

アイダホ州ボイシからフロリダ州ジャクソンビルまで、ウォーターウォークはアメリカ各地で12店舗を展開している

室内の様子

WaterWalk

年内にはフロリダ州ジャクソンビルに2店舗、アラバマ州ハンツビルに1店舗オープンする予定だ。

年明けにはサウスカロライナ州チャールストンでも建設が始まる

ホテル外観

WaterWalk

ウォーターウォークは他にも、ネバダ州リノやテキサス州オースティン、テネシー州ナッシュビル、フロリダ州といった「成長著しい」市場への進出も考えている。

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