ポール・グレアム。2011年撮影。
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- 生成AIの台頭を、テック界の重要人物たちが称賛している。ポール・グレアムもその1人だ。
- AIツールの急速な拡大は、ウェブの様相や使われ方に影響を与えている。
- グレアムは最近、料理に関することを検索した時に、それが必ずしも良いことばかりではないことに気が付いた。
テック界の最重要人物たちもご立腹だ。生成AIが、信頼できる質の高いウェブコンテンツの品位を貶める可能性があるからだ。
ベンチャー・キャピタリストで起業家、有名なスタートアップ・アクセラレーターのYコンビネーター(Y Combinator)共同創業者でもあるポール・グレアム(Paul Graham)は9月1日、X(旧Twitter)で、簡単な質問の検索ですら、作者や単語が不明確、あるいは信用できないコンテンツのせいでウェブが混乱状態に陥っていると不満を漏らした。
「オンラインであること(ピザ窯の温度)を調べていると、AIが生成したSEO(検索エンジン最適化)の餌でないものを探して、記事の日付をチェックしていることに気が付いた」とグレアムはXで愚痴をこぼした。
これはベンチャー・キャピタリストのトーンの変化だ。わずか数週間前、グレアムは称賛していた。AIは「何の役に立つか分からない技術などではない」と。そうではなく「開発者たちが存在すら知らなかった、はるかに多くの問題への解決策だ」と述べていた。また「テクノロジーの久々のビッグウェーブ」であるとして、一般市場の投資家らに対し、まだほとんど非公開のスタートアップに投資する方法を提案していた。
OpenAIのChatGPTが発表されてからまだ1年も経っていないが、生成AIツールの急速な普及によって生まれた問題や懸念は多い。
グレアムが経験したように、誰が書いたものなのかという問題がある。現状、AIが作ったコンテンツに名札を付ける義務も規制もないからだ。現在、欧州議会にかけられている規制案、AI法(AI Act)が年末に通過すれば、それも変わる可能性がある。
品質の問題も重要性を増している。AIツールが誤った情報を堂々と提示する傾向にあるからだ。一方で正しい権威ある情報を提示する場合にも、多くは法的に別の企業や個人に属する著作物に基づいている、またはそれに近いものであるため、合法性や著作権などを巡る新たな懸念が生じることになる。
AIは、本格的な情報危機に陥る可能性がある。元グーグル検索(Google Search)のエンジニアリング・ディレクターで、現在はクラウド・プラットフォーム、バーセル(Vercel)の最高技術責任者を務めるマルテ・ウブル(Malte Ubl)はXで、ウェブコンテンツの「AI汚染」は放射性降下物の影響に似ていると述べた。
「私が使ってきた例えは、最初の核実験前に作られた『低バックグラウンド鋼』だ」