Z世代など若者を中心に話題となったBeReal。ここへきてマーケティング責任者を求人しているが……。
NurPhoto/BeReal and screenshots from TikTok.
フランス発の写真共有アプリスタートアップ、BeReal(ビーリアル)が、初のマーケティング担当者を採用する予定だ。だがソーシャルメディア専門家は、当初の話題性を取り戻すには遅すぎるのでは、と話す。
BeRealのウェブサイトに掲載されていた求人広告(現在は削除)には、同社はコミュニケーション・マーケティング責任者を探しており、リーダーたちとと協力して「あらゆる形態のコミュニケーションにまたがるグローバル戦略を展開する」ことが任務になるとあった(この広告は、外部の求人サイトでまだ閲覧することができる)。
この広告によると、求人中のこのポジションではさまざまな地域にまたがる外部エージェンシーとの関係性をマネジメントし、「主要なレポーターたち」との関係を構築・維持する責任を負うことになる。また、この幹部はアメリカかヨーロッパいずれかを拠点とする可能性があるという。
InsiderはBeRealにコメントを求めたが回答はなかった。
BeRealは2020年設立。2022年にアメリカのアプリストアのトップに躍り出ると、インターネット上にはBeRealのミームがあふれ、ブレイクの瞬間を迎えたように思われた。
ユーザーの元にはBeRealのアプリから毎日ランダムな時間に通知が届く。通知を受け取ったユーザーは2分という制限時間内で、インカメラとアウトカメラで撮影することができる。ユーザーは自分のBeRealを公開するまで、友人の投稿画像を見ることはできない。
まやかしで機能偏重、影響力を追い求め、広告だらけのソーシャルメディアアプリが主流となるなか、BeRealは“解毒剤”となることを標榜していた。
勢いを取り戻すには大胆なピボットが必要
しかし専門家たちは、BeRealは2022年の人気急上昇に乗じるタイミングを逃したと見ている。
アプリに関する統計情報を分析するアップトピア(Apptopia)のデータによれば、2023年7月のモバイルアプリのDAU(1日あたりのアクティブユーザー数)は前年比35.4%減となっている。
BeRealは8900万ドル(約130億円、1ドル=145円換算)以上を資金調達しているが、従業員数は40~50人程度と少なめだ(同社はエンジニアリング担当副社長やシニアiOSエンジニアなど、他の職務も募集している)。
一部の業界ウォッチャーは、BeRealは新機能のリリースが遅すぎたせいでユーザーの関心を保ちきれず、Instagram(インスタグラム)やTikTok(ティックトック)といった競合他社に追随される余地を与えてしまったと話す。また、知名度の点で劣るBeRealがどのようにして収益を上げるつもりなのかも明確でない。
BeRealが2022年のあの勢いを取り戻すには、ユーザーがアプリでコンテンツを作成し、このアプリでもっと遊びたいと思う理由を強化する必要がある——メディアエージェンシーのマインドシェア(Mindshare)でチャネル・ソリューション担当デジタル戦略パートナーシップ事業責任者を務めるコリン・ケネディ(Colin Kennedy)は、そう指摘する。
「BeRealの新しいマーケティング・コミュニケーション責任者は、ブランドや著名人、インフルエンサーとの関係性を築いて支持と信頼を集め、InstagramやTikTokのようにもっと全体的にユーザーへの影響力を生み出す必要があります」(ケネディ)
だがつまるところ、BeRealは大胆にピボットしないかぎり、立て直しを図るには遅すぎるかもしれないと専門家は話す。テクノロジーアドバイザリー会社TBDグループの創業者であるポール・アームストロング(Paul Armstrong)はBeRealの独自性について、今の形では人々を呼び戻すだけの吸引力はなく、大手に簡単に模倣されてしまうと話す。
「法外な広告費をかけてド派手なインフルエンサー売り込み施策を回すのでもなければ、この状況を好転させられるマーケティング/コミュニケーション担当者はいないでしょうね」(アームストロング)