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コロナ禍で外出や人に会う機会が制限された時期、1人で「キャリア」「人生」を見つめ直した方は多いようです。
どう働くか、どう生きるかを深掘りするうちに、「自分のパーパス(ライフワーク)って何だろう」と追求し始めた方も……。
実際、転職相談をお受けしていても、以前に比べて「年収・ポジションを上げたい」と希望する方の割合が減り、やりがいを求める方が増えていると感じます。
人生100年時代、70代以降も仕事をすることが当たり前の時代がやってくると、「パーパス」という軸=モチベーションの源泉を持っていないとつらくなるかも——と、そんな声も聞こえてきます。
確かに、私が出会う方々を見ていても、パーパスを持っている方は年齢を重ねてもいきいきと、楽しそうに活動していらっしゃいます。
私自身も、パーパスが明確になっていることで、重要な選択をする時の判断を迷うことはありませんし、困難な状況もポジティブに乗り越えられていると感じています。
そこで今回は、自分が一生をかけて追いかけるべきパーパスの見つけ方をお伝えします。
自分の感情がポジティブに動いた出来事を振り返る
パーパスを見つけるには、まず、自分自身を知ることからスタートしましょう。
日頃、同僚や部下、お客様などが何を考えているかを観察している方であっても、自分自身のことは客観視できておらず、メタ認知が低い状態で意外と理解できていないことが多いものです。自身の心の動きに目を向けてみましょう。
私が20代の頃から毎日行っている習慣があります。
夜、就寝する時に、今日1日の出来事の中でうれしかったこと、楽しかったこと、感謝したことなど、ポジティブに感情が動いたことを思い出すのです。
「こんな人に会えた」「こんなことを言われてうれしかった」など、些細なことでかまいません。自分が喜びや幸せを感じた場面を思い出し、感謝しながら眠りにつきます。
このようにポジティブなマインドになると、眠っている間にも「幸せホルモン」と呼ばれる「オキシトシン」の分泌作用が数倍増すと言われています。
当然、朝の目覚めも心地よいものになります。そして、ポジティブな感情が意識に刻み込まれることで、自分がうれしいこと、楽しいことを無意識の中で自然と引き寄せるようになるといいます(これは量子力学的にも実証されているのだそうです)。
確かに私自身も、会いたかった人に偶然会えたり、良い方向へ向かうターニングポイントが予期せず訪れたりと、効果を実感しています。
「眠りにつく時、ポジティブなマインドになる出来事を思い出す」、ぜひ試してみてください。
「引き寄せ」の効果はあくまで副次的なもの。それ以前に、「自分はどんなことに喜びを感じるのか」を明確に認識できるようになります。
「夢中になった瞬間」を思い出す
自分の過去も振り返ってみましょう。
子どもの頃から現在に至るまで、いくつかのターニングポイントがあったはずです。
その時、どのような考えからその意思決定をしたのか、重視した判断基準とは何だったのかを考えてみてください。
もちろん偶発的にその方向へ進んだこともあると思いますが、やはり何らかの感情が動いてその選択をしたのだと思います。
また過去の経験で、ワクワクしたこと、夢中になって取り組んだこと、自分が輝いていた「ハイライト」シーンなども思い出してみましょう。
それらをたどってみることで、「これがやりたい」「こうありたい」の原点に気づくかもしれません。
例えば私の場合、過去のハイライトシーンや楽しかった出来事を思い起こすと、「仲間と一緒に」という共通項が浮かびます。1人で黙々と何かに取り組むより、チームやクラス単位で行動したり目標を目指したりすることに幸せを感じていました。
それを自覚しているので、今もさまざまなテーマのコミュニティに積極的に参加していて、そこでつながった人々からエネルギーを得ていると実感します。
自分にさまざまな切り口の質問を投げかけてみる
さまざまなテーマで、自分に質問を投げかけてみるのもおすすめです。例えば——
- これまでに読んで感動した本は?
- これまでに観て感動した映画・ドラマは?
- リスペクトする人物は?(実在の人物でも架空の人物でもOK)
- 好きなキャラクターは?
- 好きな食べ物は?
- 好きなスポーツは?
- なりたいと思ったことがある職業は?
- 学生時代の友人、前の会社の同僚などで、今もつながっているのはどんな人?
- 書店で思わず目が行くテーマは?
- まとまった休暇が取れたら何をしたい?
そして、質問(Question)に対する答え(Answer)を出したら、「それはなぜなのか(Why)」まで掘り下げて考えてみてください。自分の価値観が浮き彫りになってきます。
なお、こうしたワークを、友人や同僚と一緒に行うのも効果的です。
自分のことをよく知っている人と対話すると、「○○ってこういう人だよね」「○○はそういうとこあるよね」と、自分では意識していない自分に気づかされるものです。
自分にタグ付けし、新たなご縁を引き寄せる
自分のパーパスになり得るテーマは、必死に探しても見つからないこともあります。
それよりも、日々の自分の感情の動きを意識してみてください。それを重ねているうちに、気づいたら見つかっていた、ということも。日常を過ごす中で、ふと目の前に現れるものなのです。
そして、自分を表現するワード、自分が興味あるテーマを、どんどん「タグ付け」していってください。タグに関する書籍を読んでみたりセミナーに参加してみたりと、そのタグをベースに仲間を探し、一緒に探求してみてください。
ちなみに、私が自分に付けたタグは40以上もあります。
「転職エージェント」「キャリア支援」「エグゼクティブサーチ」をはじめ、「ワーキングマザー」「地方創生」「婚活支援」「スポーツ(ラグビー・アメフト)」などなど。
自分に付けたタグのいくつかが、いずれ意外なところでご縁が結ばれ、パーパスにつながっていく可能性があります。
タグ=自分のブランドであり、それを磨き上げていくことができます。
SNSを利用している方であれば、自己紹介欄の自分のタグをより適切なものに書き換えたり増やしたりすることで、新たな機会や出会いを呼び寄せるかもしれません。
また、自分が興味を持っているテーマ、自分を表現できるテーマの「サードプレイス」を持つのもおすすめです。
サードプレイスとは、職場でも家庭でもない、自分の居場所。自分の価値を発揮できる場所です。サークル活動、勉強会、NPOでのボランティア、地域コミュニティ、副業など、何でも構いません。
志や目標と同じする人々が集まる場所に身を置き、「自分が必要とされている」「自分の価値が認められている」と感じることで、パーパスの発見につながるのではないでしょうか。
※この記事の初出は2022年1月10日です。
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森本千賀子:獨協大学外国語学部卒業後、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。転職エージェントとして幅広い企業に対し人材戦略コンサルティング、採用支援サポートを手がけ実績多数。リクルート在籍時に、個人事業主としてまた2017年3月には株式会社morichを設立し複業を実践。現在も、NPOの理事や社外取締役、顧問など10数枚の名刺を持ちながらパラレルキャリアを体現。2012年NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」に出演。『成功する転職』『無敵の転職』など著書多数。2男の母の顔も持つ。