2019年5月、ユタ州イーグルマウンテンで撮影された建設中のフェイスブック・データセンター。
George Frey/Reuters
- AIコンピューティングには持続可能性の問題がある。
- テック企業は今も環境にあまり悪影響を与えない投資先だと考えられているが、現実はそうではない。
- ワシントン大学の研究者は、「メッシュネットワーク」や「先住民によるデータプライバシーへの取り組み」が解決策につながると述べている。
ビッグテックは、ESG投資家や持続可能性を重視する消費者にとって安全な投資先だと考えられてきたが、業界大手のマイクロソフト(Microsoft)、アマゾン(Amazon)、グーグル(Google)、メタ(Meta)がAI機能を開発・展開する中で、新たな現実と衝突しつつある。
AIモデルは、訓練する際に電力消費の激しいGPUが必要であり、新たなデータセンターでは膨大な量の電力と水を消費することから、環境に悪影響をもたらすとみなされるようになったのだ。
アマゾンの主要なデータセンターは米バージニア州北部にあり、そこでは本社のあるシアトル市全体で消費される以上の電力を生産している。グーグルのデータセンターが2022年に消費した水の量は、前年比20%増の52億ガロン(約200億リットル)となった。メタの「Llama 2」も大量の水を消費する。
AIの開発競争における主要なプレーヤーは、高まる環境負荷をいかに相殺しているかをアピールしている。例えばマイクロソフトは、アリゾナデータセンターで1年の半分以上の期間にわたって外気冷却だけでサーバーを冷却し、その間、水は使わないことを約束している。またグーグルは、AIチップ大手のエヌビディア(Nvidia)と提携し、2030年までにオフィスやデータセンターで使用する水の120%を地域の水資源に補充することを目指している。
これらの取り組みは巧妙なマーケティングであることが多いとワシントン大学のジャーナリズム・メディア・デモクラシーセンターの共同ディレクター、エイドリアン・ラッセル(Adrienne Russell)は言う。
「テック業界は、デジタル・イノベーションを持続可能性と両立するものとして見せるために、長い間努力を重ねてきたが、実際はそうではない」とラッセルはInsiderに語っている。
彼女は、クラウド・コンピューティングへの移行や、アップルによるマーケティング手法を例に挙げ、テック企業が業界をカウンターカルチャー、自由、デジタル革新、持続可能性と結びつけようとしていると指摘する。このような手法が、AIをより環境に優しいものとして見せるためにすでに利用されているという。
8月に行われたエヌビディアの第2四半期決算報告で、ジェンスン・フアン(Jensen Huang)CEOは、AIの基礎となる「アクセラレーテッド・コンピューティング」のプラットフォーム(同社が販売)について「GPUコンピューティング」よりもコスト・エネルギー効率が高く、環境への負荷も少ないと述べた。
だがデータはその逆を示している。コーウェン・リサーチ(Cowen research)の調査報告によると、AIデータセンターは従来の施設の5倍以上の電力を必要とする可能性があるという。また、カリフォルニア大学リバーサイド校の研究者で、最新のAIモデルがどのようにリソースを使用するかについて研究しているシャオレイ・レン(Shaolei Ren)によると、一般的なクラウドサーバーが300から500ワットの電力を消費するのに対し、GPU(通常エヌビディアが供給)を搭載したAIサーバーは2キロワット消費するという。
「持続可能性とデジタル・イノベーションが両立できるというのは間違った情報であるにもかかわらず、『成長は続く』『すべてを大規模に拡張しても問題ない』として、このような1つのタイプのテクノロジーがすべてに適合すると語られることがある」とラッセルは言う。
AIを巡る機運の高まりとその環境フットプリントは、企業が大規模言語モデル(LLM)をより多くの業務に組み込もうとするにつれて拡大するだろう。
ラッセルは、「メッシュネットワーク」や「先住民によるデータプライバシーへの取り組み」のように、より持続可能なイノベーションに焦点を当てることの方が良いアプローチだと考えている。大手テック企業にあまり依存しない独自の方法で、データ・プライバシーの管理やインターネット接続を設定しているコミュニティもある。
「どんなに小規模だとしても、実際に持続可能なテクノロジーが設計されている例をピンポイントで示すことができれば、環境的にも社会的にも持続可能でない巨大なテクノロジーについて考え、批判できるようになる」と彼女は述べた。