カナダでは、メタが運営するFacebookとInstagramでニュースコンテンツにアクセスできなくなった。
Erin Scott/Reuters
メタ(Meta)は8月初旬、カナダのユーザーに対してFacebook上のニュースコンテンツへのアクセスを停止した。これにより、カナダの大手ニュース配信会社には好影響が出ている。
メタは8月から、カナダ国内でユーザーがCBC、グローブ・アンド・メール(The Globe and Mail)、CTVなどのニュース配信会社のFacebookページのリンクをクリックしたり、何らかのリアクションをすることすらできないようにしている。
新たな法規制のもとでは、メタはニュース配信会社とライセンス交渉を行い、コンテンツ使用料を支払う必要がある。だがメタが対応措置を講じたことで、今ではFacebookやInstagramを利用するカナダ在住の人々がニュース記事のリンクや投稿にアクセスすると、「カナダ人は本コンテンツの閲覧不可」という注意書きが表示され、遮断されてしまう。
注意書きには、この措置は「政府の法規制」に対応したものであることが付記されているが、カナダのニュース法が施行されるのは12月だ。
トルドー首相は「人々の安全より利益優先」と批判
カナダで広く読まれているニュースサイトについてシミラーウェブ(Similarweb)が行った分析によると、メタがニュースへのアクセスを停止する前の1年間、同国のニュースサイトへのアクセス数は横ばいでの推移から減少に転じていた。
シミラーウェブの分析を見ると、CBC、グローブ・アンド・メール、CTV、グローバル・ニュース(Global News)、ナショナル・ポスト(National Post)は2022年初頭以降、Facebook経由のアクセス数が着実に減少していることがわかる。この減少傾向は、2022年にメタが同社のSNSプラットフォームにおけるニュースコンテンツへの投資を減らし、その分のリソースを他の分野に投じることを決めた動きと一致する。
ニュースコンテンツを遮断するかのようなこのメタの行為は、極端に言えば、さらなるニュース離れを招いた。
山火事のシーズンを迎えたカナダが記録的な被害に直面しているにもかかわらず、メタはニュースを遮断する措置を続けた。カナダのトルドー首相は、こうした行動はFacebookが「人々の安全よりも企業利益を優先している」ことを示していると発言した。
メディア各社の利用量は増加
アップトピア(Apptopia)の分析によると、FacebookとInstagram上でニュースが遮断されたことで、カナダの大手ニュース配信会社各社の自社アプリはダウンロード数と使用量が増加しているという。
CTV、グローブ・アンド・メール、フランス語ニュース配信会社ラ・プレス(La Presse)のアプリは、メタのプラットフォームでコンテンツが読めた7月と比較して、8月のダウンロード数が数千増加している。
【8月の主要各社実績】
- グローブ・アンド・メール:アプリダウンロード数=98%増、1日当たりのユーザー数=27%増
- CTVニュース:アプリのダウンロード数=157%増、1日当たりの使用量=83%増
- ラ・プレス:アプリのダウンロード数=32%増、1日当たりの使用量=8%増
- ナショナル・ポスト:ダウンロード数=約10%、1日当たりの使用量=3%増
- CBCニュース:ダウンロード数、1日当たりの使用量ともに横ばい
メタがアクセスを遮断して以来、大手コングロマリット、ベル・メディア(Bell Media)傘下のCTVをはじめとする報道各社は、自社のニュースアプリをダウンロードするよう人々に呼びかけている。
ベル・メディアの広報担当者は次のように話す。
「当社では、ニュースアプリをダウンロードいただくか、従来通りウェブサイトをご覧いただくことで、国内外のインパクトのある情報やニュース速報を引き続き受信・共有できることを、テレビ、ラジオ、ネット配信を通じて視聴者にお伝えしています。ここ数週間、CTVニュースのアプリのダウンロードが増加していますが、これはカナダ人の視点に立ったネットニュースが読めることがいかに重要かを示しています」
今後はイギリスを含む欧州圏のニュース配信会社も、Facebookのフィード経由でニュースを読む習慣を人々に改めてもらうために、同様の措置を講じる必要性が生じる可能性がある。というのも、メタは9月5日、イギリス、ドイツ、フランスでFacebookのニュースタブを2023年末までに削除すると発表したからだ。
メタは2019年にニュースタブを立ち上げているが、人々は単に「ニュースを求めてFacebookにアクセスするわけではない」からだとメタは説明している。