2023年も残り数カ月、株式市場はどう動くのか。「最悪の展開は免れた」とする米資産運用大手ウェドブッシュ・セキュリティーズ(Wedbush Securities)の見立ては…。
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米資産運用大手ウェドブッシュ・セキュリティーズ(Wedbush Securities)のエクイティリサーチディレクター、ケビン・メリット氏は近ごろ、年初来の株式市場の状況を総括した上で今後の展開を予想し、いま投資先として最も推奨される銘柄をリストアップした。
2023年はここまで、前年よりはるかに良い相場が続いてきたと大枠言えるが、株価パフォーマンスは銘柄やセクターによってまちまちだ。
メリット氏の最近の顧客向けメールによれば、例えば、グロース(成長)株はバリュー(割安)株を上回るパフォーマンスを発揮し、グロース株の中でもハイテク銘柄はバイオテック銘柄を大きくアウトパフォームしている。
そうしたパフォーマンスのばらつきは企業の業績見通しにも当てはまる。市場全体の1株当たり利益(EPS)は3四半期連続で減少したものの、(利益を伸ばした企業も多く)アナリスト予想を上回る水準で踏みとどまった。
ただ、そうした銘柄やセクターの個別の動向以上に、年初来の株式市場のパフォーマンスを決定づけた最重要のエレメントは、おそらく米連邦準備制度理事会(FRB)による引き締め的な金融政策だろう。
FRBのタカ派スタンスを示唆する兆候を見逃すまいと、投資家たちはパウエルFRB議長や米公開市場委員会(FOMC)の構成メンバーである地区連銀総裁らの発言に耳を澄ませ、次なる動きの端緒を探ろうとしてきた。
消費者物価指数(CPI)の構成には粘着性の高い(価格が変動しにくい)品目も含まれるため、インフレ動向の見極めや沈静化は容易ではないが、そんな中でもFRBは都度適切な判断を下して対処してきたというのがメリット氏の評価だ。
もちろん、2022年3月に今回の利上げサイクルに着手、23年に入っても粘着性に悩まされペースダウンには至らず、利上げを繰り返してきた経緯から、当初インフレは一過性などと主張していたFRBが本当にソフトランディングを実現できるのか、いまだに疑念を抱いている人も少なくない。
それでも、メリット氏は最悪の事態はすでに回避されたと考えている。
「いずれにせよ、物価動向に影響を及ぼすよほどネガティブなサプライズがない限り、FRBのタカ派スタンスはすでにピークアウトしており(8月のジャクソンホール会議は2022年のそれに比べてはるかに穏やかな内容だった)、ここから先は景気ないしは企業業績の動向が株式市場の方向性を決めることになるでしょう」
景気後退に関する複数のシナリオ
さて、2023年も残すところ3カ月余りとなったが、これから株式市場ひいては米経済はどのような動きを見せるのだろうか?
メリット氏は前出の顧客向けメールで以下のように分析している。
「少なくとも現時点では、(パンデミック下で進んだ)貯蓄超過と(都市封鎖などの行動制限の反動としての)ペントアップ需要のおかげで、米経済の深刻な景気後退入りは回避されたように見えます。
いずれにせよ、いま足元で確認できる労働市場の指標は堅調。経済成長の推移も合わせて考えれば、素晴らしいとか懸念点が見当たらないとか言える状況ではありませんが、やはり底堅いと言っていいでしょう」
仮に景気後退入りした場合、S&P500種株価指数が大幅下落に至らず踏みとどまる、いくつかのサポートレベルが想定されるとメリット氏は指摘する。
景気後退が「さほど深刻でない、もしくは長期化しない」場合、3200から4000の間でサポートが形成される。しかし、景気後退が想定以上に深刻化した場合、2500前後がより強力なサポートとして機能することになるという。
ただし、ロシア・ウクライナ戦争、台湾をめぐる米中対立激化の可能性、パンデミック対応で3年間続いた猶予期間の終了に伴う学生ローン返済の再開など、経済の先行きについては数々のダウンサイド(下振れ)リスクがあるとメリット氏は警鐘を鳴らす。
一方で、悲観すべきことばかりでもなく、メリット氏によれば、プライベートエクイティ(未公開企業を対象とする投資ファンドあるいはそれを手がける会社)の投資待ち資金が積み上がっていること、インフレが急速に沈静化する可能性、AI向けの投資増、ロシアの政権交代など、アップサイドをもたらすポジティブな要素もある。
いま投資すべき「23銘柄」
メリット氏は、株式投資については基本的に「中立」と判断している。現時点では、投資家は債券投資を通じて利益を得るチャンスの方が大きいというのがその主な理由だ。
とは言え、いま投資しておく価値があると考える銘柄もメリット氏の頭の中にはある。
景気や市場の低迷と無関係にパフォーマンスを発揮する銘柄、例えばマイクロソフト(Microsoft)やアルジェンX(argenx)、チェック・ポイント・ソフトウェア(Check Point Software)、アマゾン(Amazon)やセルシウス・ホールディングス(Celsius Holdings)らがそれだ。
メリット氏が注目する上記のような銘柄は、ウェドブッシュ・セキュリティーズのアナリストチームが厳選した最も高評価の銘柄が名を連ねる「ベストアイデアリスト」に全て含まれている。
上記リストの年初来リターン(9月1日まで)はS&P500種指数を4.6%アウトパフォームしている。
以下、ウェドブッシュの「ベストアイデアリスト」23銘柄を紹介しよう。同社アナリストが設定した目標株価も付した。
アップル(Apple)
Markets Insider
[目標価格]230ドル
アマゾン(Amazon)
Markets Insider
[目標価格]180ドル
アセンディス・ファーマ(Ascendis Pharma)
Markets Insider
[目標価格]187ドル
アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)
Markets Insider
[目標価格]95ドル
ビージェーズ・レストランツ(BJ's Restaurants)
Markets Insider
[目標価格]42ドル
ブッキング・ホールディングス(Booking Holdings)
Markets Insider
[目標価格]3450ドル
セルシウス・ホールディングス(Celsius Holdings)
Markets Insider
[目標価格]なし
チェック・ポイント・ソフトウェア(Check Point Software)
Markets Insider
[目標価格]150ドル
デッカーズ・アウトドア(Deckers Outdoor)
Markets Insider
[目標価格]614ドル
ジェロン(Geron)
Markets Insider
[目標価格]6ドル
アイマックス(IMAX)
Markets Insider
[目標価格]26ドル
ムーンレイク・イミュノセラピューティクス(MoonLake Immunotherapeutics)
Google Finance
[目標価格]86ドル
マイクロソフト(Microsoft)
Markets Insider
[目標価格]400ドル
M&Tバンク(M&T Bank)
Markets Insider
[目標価格]165ドル
ネットフリックス(Netflix)
Markets Insider
[目標価格]525ドル
ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(New York Community Bancorp)
Markets Insider
[目標価格]17ドル
ペガシステムズ(Pegasystems)
Markets Insider
[目標価格]65ドル
リージョンズ・ファイナンシャル(Regions Financial)
Markets Insider
[目標価格]24ドル
シリコン・モーション・テクノロジー(Silicon Motion Technology)
Markets Insider
[目標価格]85ドル
テナブル・ホールディングス(Tenable Holdings)
Markets Insider
[目標価格]55ドル
テンピュール・シーリー・インターナショナル(Tempur Sealy International)
Markets Insider
[目標価格]55ドル
テスラ(Tesla)
Markets Insider
[目標価格]350ドル
ウェスタン・デジタル(Western Digital)
Markets Insider
[目標価格]60ドル