アマゾン(Amazon)が新たなサプライチェーンサービスを発表した。
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アマゾン(Amazon)は9月12日、同社のECサイト以外でビジネスを展開する販売事業者向けに、フルフィルメント(受注から配送までの業務全般)およびロジスティクス(物流の一元管理)を提供する新たなサプライチェーンサービスを始めると発表した。
「サプライチェーン by Amazon(SBA)」と呼ばれるこのサービススイートには、クロスボーダー(国際間)輸送のディスカウント、在庫の自動補充、在庫や配送状況の監視・追跡環境の改善、「アマゾン・ウェアハウジング&ディストリビューション(AWD)」サービス経由の低コストかつ長期間のバルク保管などが含まれる。
また、アマゾンは今後数カ月以内に別途、マルチチャネル物流サービスを導入する。販売事業者はアマゾンの施設を利用して複数の販売チャネル向けの在庫を一括補充できるようになる。
アマゾンはこれまで、同社のフルフィルメントセンター(物流拠点)に販売事業者の商品在庫を保管し、ピッキング、梱包、発送からカスタマーサービスまでを代行するサービス「フルフィルメント by Amazon(FBA)」の拡充に数十億ドルを投資してきた。
同社の販売パートナーサービス担当バイスプレジデント、ダルメッシュ・メータ氏はInsiderの取材に対し、今回発表した新たなサプライチェーンサービスを「大きな賭け」と考えていると語った。
従来のFBAに比べ、新たなSBAは販売プロセスのより早い段階から事業者のロジスティクス面をサポートすることに重点が置かれている。
販売事業者のビジネスは商品をメーカーから仕入れるところから始まる。中には海外に拠点を置くメーカーもあり、その場合、さまざまな問題が出てくる。
「販売事業者の方々はロジスティクスの問題を解決する必要に迫られます。
国境を越えて商品を移動させる方法、大量の商品をまとめて保管する方法、その商品を複数の異なる販売チャネルに流通させる方法……などなど、考えねばならないことは山ほどあります。
そうした全ての問題を解決しようと考えると、販売事業者の方々はどうしても、FBAが得意とするフルフィルメントおよびデリバリーサービスの活用に行き着くわけです」
また、メータ氏によれば、アマゾンの出店者(販売事業者)の多くはスーパーマーケット、アマゾン以外のオンラインマーケットプレイス、自社運営のリアル店舗や通販サイトなど、別のチャネル経由でも販売している。
「販売事業者の方々は基本的に、アマゾン向けとそれ以外でサプライチェーンサービスを分けて使うのを嫌がります。両方をまとめて管理してくれるサービスがあるなら、それを使いたいわけです。
管理業務を簡素化したいというのはもちろんですが、業務効率の改善やコスト削減など得られるメリットが他にもたくさんあります」
さらに、販売事業者はサプライチェーンサービスをSBAに一本化することで、効率的に商品を積載して輸送コンテナの数を減らし、在庫をひとまとまりにして管理を最適化できるとメータ氏は強調する。
アマゾンは近年、自社マーケットプレイス「以外」を主戦場とする販売事業者の業務支援を主眼とする新たなサービスをいくつか立ち上げてきた。
例えば、マルチチャネルフルフィルメント(MCF)を利用することで、販売事業者はアマゾン以外の販売チャネルで受注した商品でも、アマゾンの配送ネットワークを活用して配送時間を短縮したり、在庫を一括管理したりできるようになった。
また、2022年4月に発表された「Buy with Prime」サービスは、アマゾン以外のウェブサイトでも、迅速な発送、無料配送、返品無料といったプライム特典を利用できるようにするものだ。
同サービスを導入した販売事業者の自社ウェブサイトには、Buy with Primeボタンと配送情報が表示されるようになり、買い物客はアマゾンのアカウントに保存済みの支払い情報と届け先住所を使って決済を完了できる。
メータ氏はこのBuy with Primeサービスについても、今回の新たなサプライチェーンサービスを含めたアマゾンの継続的投資から「当然恩恵を受ける」ものと見込んでいる。
なお、Insiderは9月6日付記事で、カナダのEC大手ショッピファイ(Shopify)のBuy with Prime導入決定に際して、アマゾンがBuy with Primeアプリを同社向けにカスタマイズし、「ショッピファイの管理画面内で注文、プロモーション、カタログ掲載、税金を自動的に同期」できるようにした上、決済処理もショッピファイ側のサービスを使う仕組みに変更したことを「アマゾン側の妥協」として報じている。