Illustration: Derplan13/Shutterstock, Alona Stanova/Getty Images, Design: Business Insider Japan編集部
「英語学習には興味があるけれど、なかなか上達しなくてやる気をなくしてしまう」「楽しくないので長続きしない」……あなたもそんな経験はないだろうか。
この連載では、海外映画やドラマを楽しみながら、かつ英語学習にも活かす方法をご紹介。ナビゲーターはAI英語学習アプリ「abceed(エービーシード)」を運営するGlobee代表の幾嶋研三郎さんだ。
毎回1つの作品を取り上げ、ビジネスパーソンがすぐに活用できるフレーズも教えてもらう。
この週末はあなたもおすすめ作品にどっぷりハマりながら、英語学習に挑戦してみてはいかがだろうか。
9月10日に閉幕した「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」、皆さんはご覧になりましたか? 今回の大会は沖縄(日本)、フィリピン(マニラ)、インドネシア(ジャカルタ)の3カ国で開催され、32チームが16日間の熱戦を繰り広げました。
10日の決勝戦では世界ランク11位のドイツが同6位のセルビアを83‐77で下し、初の世界一を獲得したことでも話題となりました。
また、日本代表(世界ランク36位)は今大会通算3勝2敗の19位となり、1976年モントリオール五輪以来48年ぶりとなる自力での五輪出場を獲得。まさに歴史的快挙とも言える活躍に、日本中が大いに盛り上がりました。2024年のパリ五輪での活躍が今から楽しみですね。
さて、そんなバスケット熱がいまだ冷めやらない方におすすめなのが、1999年にある高校のバスケットボール・チームで起こった実話をもとに描く感動ストーリー『コーチ・カーター』です。
2005年に公開されたこの映画は、スポーツ映画にありがちなCGや編集によりうまく見せる演出がほとんどなく、キャストが実際にプレーしていることでも話題となりました。今回はこの『コーチ・カーター』を題材に、英語を楽しく学んでいきましょう。
ビジネスパーソンにおすすめ『コーチ・カーター』
舞台は全米有数の犯罪都市として知られていたリッチモンド。この街にあるリッチモンド高校では、大学へ進学する者はごくわずか、卒業生の半分が逮捕されるという落ちこぼれたちの集まりだった。それは高校のバスケットボール・チーム「オイラーズ」も例外ではなく、ほとんど試合に勝ったことがない有様。そんなオイラーズに、高校OBであるケン・カーターがコーチとして赴任してくる。彼が掲げた厳しいルールに生徒たちは戸惑い、反発するが……。
リッチモンド高校バスケットボール部のコーチを任されたケン・カーター(サミュエル・L・ジャクソン)は、進学率と犯罪率は比例すると考え、部員たちがバスケットボールで奨学金を得て大学へと進学できるよう奮闘します。そうすれば犯罪に手を染めずに済む暮らしが得られるからです。
この映画の舞台は高校なので、一見ビジネスパーソンとは縁遠い話のように見えますが、実はビジネスシーンでも使用できるフレーズが随所に隠れています。映画はアフリカンアメリカンの発音が主なため、最初は聞き取りづらく感じるかもしれません。でも耳を慣らしていけば、徐々に単語を拾えるようになりますよ。
TOEIC500点からの初級者におすすめ
『コーチ・カーター』の再生時間は2時間17分、総語数1万7468語、フレーズ数は2645です。
リスニング難易度の指標の1つであるWPM(1分あたりのワード数)で比較すると、ネイティブの会話は約160台、早口の人だと約200台、TOEICは平均150台なのですが、『コーチ・カーター』の会話部分は平均140。前回ご紹介した『トランスフォーマー』と同様にTOEICの難易度で表すと500点程度、英検だと準2級レベルの学習者のリスニング学習に最適な作品です。
それでは、作中に登場するフレーズの中から、日常のシーンでも役立つ表現をご紹介します。
活かせる映画フレーズ
フレーズ1「The clock is ticking.」
母校のバスケットボール部のコーチになって欲しいと依頼されたカーターコーチは、自営業も営んでいるため両立ができるか分からず妻に相談します。そのシーンでのフレーズです。
The clock is ticking.
決断も迫られているしな。
単語 tick には名詞で「カチカチという音」、動詞で「(時計が)カチカチと音を立てながら進む」といった意味があります。ですからこのフレーズを直訳すると、「時計がカチカチと音を立てながら時を刻んでいる」となります。ニュアンスとしては「期限が迫っている」となり、何かを決められた期限までに終わらせる必要がある際に活用することができます。
では、ビジネスパーソンが日常的に使える使用例を1つ挙げてみます。
We only have 3 weeks left to complete this task. The clock is ticking.
この仕事を終わらせるためには3週間しかない。締め切りが迫っている。
ビジネスシーンでは何かと期限がつきものです。このフレーズを覚えておくと仕事をするうえでもとても便利ですので、ぜひ覚えてみてください。
フレーズ2「(Someone) is all yours.」
コーチを務めることを決めたカーターコーチが前コーチから部員に紹介されるシーンでのフレーズです。
They're all yours, coach.
ではどうぞ。
(SO) is all yours. を訳すと「(人)を好きにしていいよ」と言った意味になります。新しく会社に入った人について紹介し、部署長や一緒に働く同僚にその人のことを任せる際にもぴったりのフレーズです。「(人についての紹介は済んだので)あとのことはよろしくお願いします」といったニュアンスですね。
ではここでも、ビジネスパーソンが日常的に使える使用例を1つ挙げてみます。
This is our new HR member, Sarah. Please give her a tour around the office and show her to her desk. She’s all yours.
こちらは私たちの新しい人事部のメンバー、サラです。彼女にオフィス周りのことを教えてあげてください。ではよろしくお願いします。
こちらのフレーズも難易度はそこまで高くなく、覚えておくと表現の幅が広がってとても便利です。
フレーズ3「(動詞) open ~ up for comments」
教育を重視するため、部員全員が好成績をとるまで部活を停止することを決めたカーターコーチは、教育委員会から詰問会に呼び出されます。教育委員会がカーターコーチに部員たちと交わした「バスケットボール部員であるための契約」について確認し、詰問会に出席している保護者に意見を共有するように求めるシーンでのフレーズです。
I'd like to open this board meeting up for comments.
皆さんの意見をお聞かせください。
(動詞)open ~ up for commentsには「〜を発言のために自由の場とする」といった意味があり、「皆さんのご意見をお聞かせください」と言ったニュアンスになります。
ビジネスシーンで使用できる例も挙げてみましょう。
If anybody has any concerns they would like to raise, I’d like to open the floor up for comments.
もし何か懸念点がございましたら、この場で意見をお聞かせください。
例文のように the floor とセットにして使われることも多いのですが、この the floor は文字通りの「床」を表すのではなく、「発言が許可された場所」といったニュアンスがあります。例えば「I would like to give the floor over to Greg.」とすれば、「グレッグに発言が許可された場所を渡す=次はグレッグが話す番です」といったニュアンスになります。
会議などで情報を共有した後に出席者たちから意見を募りたい時などには、ぜひこのフレーズを使ってみてください。
今回はバスケを題材とした映画をピックアップしてみましたが、自分の好きなスポーツ映画から英語を学ぶと、同じフレーズを学んでもより頭に残りやすいものです。
英語学習はとにかく、楽しみながら行うことが上達への近道。自分の好きなスポーツ映画を入り口に、英語学習を楽しんでみてください。
幾嶋研三郎:株式会社Globee 代表取締役社長。2015年3月に慶應義塾大学法学部卒業。2014年6月、大学在学中に株式会社Globeeを創業。英語学校の運営を通して、IT×英語教育の可能性を感じ、『学習量×学習効率の最大化』をミッションとしたAI英語学習アプリ「abceed」(現在登録ユーザー数300万人を突破)と、『学習支援効率の最大化』をミッションとした反転学習プラットフォーム「abceed for school」の開発を行う。
※今回ご紹介した『コーチ・カーター』はabceedで配信中です。