日本のソウルフード・おにぎり。
2023年の流行グルメの一つに挙げられるのが、ジャパニーズソウルフードとして名高い「おにぎり」だ。
大塚の有名店「ぼんご」やその系列店を筆頭に、SNSではおにぎり専門店が話題。
しかし、子どものことから慣れ親しんでいる味であり、コンビニを通じて安くて手軽なおにぎり供給システムが全国に張り巡らされている日本において、この盛り上がりを不思議がる読者も多いのではないだろうか。
おにぎりは、本当におにぎり専門店で買うべきものなのか。都内で買えるおにぎり専門店から、定番の具・さけと梅のおにぎりを招集し、食べ比べてみた。
都内で買えるおにぎり専門店6選
鮭と梅のおにぎりが大集合。
店舗のセレクトは、大塚のぼんご以外、編集部のある渋谷からアクセスしやすい立地で6店舗を選んだ。
- おむすび権米衛(首都圏)
- 米屋のおにぎり屋 菊太屋米穀店(東京・大阪)
- 三田精米店(桜新町)
- 戸越屋(戸越銀座・渋谷)
- TARO TOKYO ONIGIRI(虎ノ門・人形町)
- おにぎりぼんご(大塚)
比較にあたって、以下の3つの基準を設けた。
- 米の硬さ:硬い・やや硬い・普通・やや柔らかい・柔らかい
- 鮭のしょっぱさ:しょっぱい・ややしょっぱい・普通・ややしょっぱくない・しょっぱい
- 梅の酸っぱさ:甘い・やや甘い・普通・やや酸っぱい・酸っぱい
味わうのは、20代から40代の編集部員男女4人だ。とはいえ、我々はグルメメディアでもないので、徹底比較というよりは、あくまで主観的な意見も交えた記事であることをご留意いただきたい。
満場一致のボリューム感「おむすび権米衛」
左:紀州南高梅 150円、右:紅さけ 190円
- 米の硬さ:やや硬い
- 鮭のしょっぱさ:ややしょっぱい
- 梅の酸っぱさ:やや酸っぱい
2023年9月現在、首都圏に51店舗とパリ・ニューヨークにも店舗を構える、元祖おにぎり専門店。駅構内やオフィスビルなど、アクセスの便利な場所にあるので、毎日手軽に購入できるのがいい。
5つの中でも一回り大きいサイズで、持ってみてもずっしりとした重みを感じる。紅鮭も梅も、そしてお米の量もたっぷりで、しっかりお腹に溜まる感じがある。それでいて100円台に収まる価格とあって、満場一致で「コスパがいい」という評価となった。
紀州南高梅は、昔ながらのザ・酸っぱい塩梅干しで、これが好みという編集部員も。
一方で、「ガッツリ感はあるが、お米がギュッと凝縮されすぎて食べ進めづらい気がした」という意見もあった。
老若男女におすすめできる「菊太屋米穀店」
左:梅 250円、右:紅鮭 330円
- 米の硬さ:やや硬い
- 鮭のしょっぱさ:ややしょっぱい
- 梅の酸っぱさ:普通
5つの中で、「どんな人にも食べやすいバランス感」と評価されたのが「菊太屋米穀店」。
東京と大阪の百貨店を中心に5店舗出店しており、手軽にお米屋さんのおにぎりを楽しむことができる。小ぶりなサイズではあるが、「お米の塩加減もちょうどいい」ので、「いい意味でクセがない」万能おにぎりだ。
紅鮭は330円(税込)と、梅と比べても高価格な設定とあって、フレークではなく贅沢に切り身を使用している。ガッツリ鮭を味わいたい時もおすすめだ。
お米の粒感が欲しいなら「戸越屋」
左:うめ 300円、右:しゃけ 330円
- 米の硬さ:普通
- 鮭のしょっぱさ:普通
- 梅の酸っぱさ:やや甘い
しっかりとした粒感が好みという人には「戸越屋」がおすすめ。本店は戸越銀座だが、渋谷・道玄坂にもイートインスペースを設けて出店しているのでアクセスしやすい。
お米は「ふっくらしているのに、米の粒が立っている」とのコメントが。オフィスから一番近い距離に位置していることもあって、まだほんのり温かい状態であったので、少し公平性には欠けるかもしれない……。だが、冷めたものを口に運んでも、粒感は残ったままだった。
公式サイトによると、しゃけはオーブンで焼いたものを手作業でほぐしているとのことで、「香ばしい」というコメントも多かった。
素人には握れないふわふわ食感「三田精米店」
左:南高梅 210円、右:鮭 210円
- 米の硬さ:やややわらかい
- 鮭のしょっぱさ:ややしょっぱい
- 梅の酸っぱさ:甘い
都心から少し離れた、ローカルおにぎり屋さんも見ていこう。桜新町の「三田精米店」は、お米のプロが作ったおにぎりとあって、お米の食感から編集部員を唸らせた。
「一口食べただけで分かるお米のふわっふわな食感に感動」「自分で握ったらこのふわふわ感は出せない」といったコメントが挙がったように、やわらかめのお米が好みであれば要チェックのお店だ。
鮭も、戸越屋同様に「香ばしさ」を感じる。一方で、梅おにぎりは5つの中で「ダントツに甘い」という意見も目立った。「大人には甘すぎるかもしれないが、子どもには食べやすい梅おにぎり」かもしれない。
海外の人にもおすすめな「TARO TOKYO ONIGIRI」
左: ふみこ農園の梅薬味 280円、右:銀しゃけ 塩こうじ 250円
- 米の硬さ:やや硬い
- 鮭のしょっぱさ:ややしょっぱくない
- 梅の酸っぱさ:やや甘い
先日、こちらの記事の反響も大きかった「TARO TOKYO ONIGIRI」。オフィスワーカーの胃袋を支える虎ノ門店は駅の出口を出てすぐのところに位置している。
いわゆる「進化系おにぎり」専門店で、おにぎりは従来のものと異なり、縦置きでは自立してくれない設計だ。海苔は直前に巻くタイプで、まずは横置きで彩りや具材のパターンを目から味わう楽しみもある。
だが、塩麹で味付けされている銀しゃけは、甘さも感じられるが、どこか「現代風で食べ慣れない感じ」だという。梅薬味は複数の具材で構成されているからこそ、「おにぎりとしてのまとまりに欠ける」という意見もあった。
シンプルな味付けのおにぎりを食べ慣れているからこそ違和感を覚えるものの、「海外の人にはウケが良さそう」「スナック感覚でやみつきになる」というコメントもあった。
具の満足感が高い「おにぎりぼんご」
左:うめ 350円、右:さけ 350円
- 米の硬さ:普通
- 鮭のしょっぱさ:ややしょっぱい
- 梅の酸っぱさ:酸っぱい
おにぎり比較に欠かせない、人気の火付け役・ぼんご。事前に電話で予約したおにぎりを受け取りに店舗へと向かうと、開店前でも道の向こう側まで行列が続いていた。
1個350円と決して安くはないが、最後まで具がたっぷりで、どこの箇所を食べてもお米だけになることがない。
特にさけは、フレークでもほぐし身をしっかりと感じられて、満足感がある。海苔も香り高く、オフィスまでの道中で水分を含んでしなしなに仕上がり、お米によく馴染んでいる。
一方で、編集部からは、極端に硬い・やわらかいというわけではないものの、「お米のおいしさはそこまで感じない……」というコメントが。
梅は思わず顔をすぼめてしまうほど酸っぱいが、贅沢にたっぷりと入っている。その分、酸っぱさがしんどく感じてしまう人もいるようだ。
「おにぎりは一体感」
日本に住んでいたら、日常的に口にしているおにぎりとあって、その好みは千差万別。
今回の食べ比べでも、あえてランキングをつける必要はないと判断したが、編集部で人気が高かったのは「三田精米店」だった。お米のふわふわな握り具合はもちろん、具材のクオリティも十二分に高く、200円台前半という買いやすい価格設定も高評価につながった。
最後に、元グルメ雑誌の編集部員からの「おにぎりは一体感」という言葉で、第1回おにぎり食べ比べ大会は幕を閉じた。