DE&Iはサービスのあり方を変えるか。日本の明るい未来を作る “自由なあと払い”

コバリ・クレチマーリ・シルビア氏

真のDE&Iを成長エンジンに──多様な人材が集まり、買い物時の “決済方法の選択肢を広げる”サービスの提供を通じてDE&Iを体現している企業がある。近年話題のBNPL(Buy Now Pay Later=あと払い)を提供するリーディングカンパニーのPaidy(ペイディ)だ。

ダイバーシティこそ、イノベーションの源泉」と断言する同社は、一体どんな企業なのか?CSO兼CMOとして最高戦略責任者を担い、マーケティング、PR、UXデザインも統括するコバリ・クレチマーリ・シルビア氏に聞いた。

「買い物は“浪費”ではなく、将来への“投資”」

コバリ・クレチマーリ・シルビア氏

コバリ・クレチマーリ・シルビア氏/Paidy CSO&CMO ハンガリー出身。東京大学教養学部卒業後、ストラテジストとして広告代理店のJWT(J. Walter Thompson)に入社。2006年、アメリ力の本社に転勤になり、ニューヨークと東京を拠点に5大陸のFortune 500及び日系大手企業の事業戦略・マーケティング戦略を手掛ける。イギリスのHult Ashridge大学でMBAを取得、電通を経てアーンスト・アンド・ヤング(EY)に入社。その後Netflixを経て、2019年12月から現職。日本語含む4ヶ国語を流暢に話す。共著に『スタートアップ・ニッポン 最高に明るい未来を創る10のヒント』(ダイヤモンド社)がある。

日用品から嗜好品まで、毎日の暮らしに欠かせない買い物。これまで当たり前だと考えていた決済方法には、実は数々の「めんどくさい」が隠れている。Paidyはそこに目をつけた。

「『ペイディ』はスマホだけで欲しいものを今すぐ購入できるシンプルな設計で、面倒な事前登録は必要ありません。ペイディアプリを活用いただくと、支払い方法や回数、期限を柔軟に設定できるのが大きなメリットです」(シルビア氏)

多くの人の「“今”欲しい」をかなえるべく、国内初のBNPLサービスとして2014年に生まれた「ペイディ」。

現在、日用品から旅行、家電、デジタルコンテンツまで幅広い分野で導入が進み、Amazon.co.jp(※1)、Apple、Qoo10、星野リゾートをはじめ国内の70万店舗以上で利用できる。

中でも特徴は、分割手数料無料(※2)の分割払いが利用できること。これまで躊躇していた大きな金額の買い物も賢く叶えることができるようになった。決済方法の選択肢が広がることは、日々の買い物だけでなく、自己投資のハードルを低くすることにもつながるとシルビア氏は説明する。

買い物は“浪費”ではなく、将来への“投資”だと考えています。

何かを買うことでより良い日常が実現したり、目標のための努力が可能になる。『ペイディ』は、お買い物を通してみなさんの小さな夢から大きな夢までサポートしたいと考えています。

さまざまなライフスタイルが存在する中、一人ひとり状況が異なるからこそ、支払い方法も多様化しなければなりません。

ペイディは“自由なあと払い”として、お客様それぞれが自身の目的に応じて自由で主体的にお支払い方法やお金の管理をデザインするという、新しいお買い物との向き合い方を提案しています」 (シルビア氏)

アプリのダウンロード数は1000万をすでに超え(2023年7月発表)、サービスを利用する顧客の年齢層も幅広く、男女差もない。中でも反響が大きいのは若年層、特にZ世代だという。

「コスパ(コストパフォーマンス)やタイパ(タイムパフォーマンス)を重視するZ世代に今、マネパ(マネーパフォーマンス)という価値観が広がっています。

スマホで自分らしく賢くお金を使い、効率的に管理したいという思いが強いようです。そこに弊社のサービスがぴったりハマった。

ユーザーに共通しているのは“自立したお金の使い方をしたい”という思いを持っていること。まさにそこに価値観の共通点があると感じます」(シルビア氏)

パーパスはサービス設計から企業の社員教育まですべての礎に

DE&Iを体現したサービスについて語るシルビア氏

個人情報を取り扱う金融サービスゆえ、サービスを展開する上では“信頼”が第一。ネガティブな感覚や誤解をもたらさないよう、アプリのデザイン設計はシンプルなUI/UXにこだわり透明性を重視。誰ひとり取り残さないサービス作りを心掛けている。

「幅広いターゲットに何かを提供しようとすると、平均的なものになりがちです。

しかし、世の中に“平均的な人”は存在しません。

文面一つをとっても、多様な価値観に対して“意思のある買い物をサポートしたい”という思いを前提に、どんな方にも伝わるような簡潔な内容を意識しています」(シルビア氏)

“意思のある買い物”は、「夢に自信を、心に余裕を持てる世界を作る」というPaidyのパーパスを語る上で重要なキーワードだ。

だが、シルビア氏は「このパーパスは単なるスローガンではない」と話す。

「サービス開発から人材採用、社員の行動指針まで、すべての土台になっています。この土台がずれると中途半端なものになり、一貫性を失いひずみが生まれる。

ユーザーは価値観の接点がないとサービスを選んでくれません。そのためにはサービスも社員の行動も、何が期待されているかが明確に分かることがとても重要です」(シルビア氏)

ユーザーがサービスを選ぶうえで重要になるという “価値観の接点”。アプリ内ペイディカードの画面において、DE&Iの企業文化がサービスに落とし込まれた象徴的なエピソードを明かしてくれた。

ペイディカードのダミーネーム

ジェンダーレスな名前をダミーネームとして採用。細かなディテールにまでDE&Iの考えが行き届いている。

「一般的に、氏名欄に載せるダミー名のほとんどが【TARO YAMADA】などの男性名義ですよね。

『ペイディ』では、性別を限定しない表現にしたいと考えて【AYUMU YAMADA】と表記しています。男女、またどちらにも属さない方みなさまに当てはまりうる名前で、社員の声をきっかけに変更した例です。

小さなことだけれど、こうしたディテールにも気を遣うことで、受け取り方も変わるのではと期待しています」(シルビア氏)

39カ国から集まる多国籍なメンバーを束ねるリーダーに必要な力とは

オフィスの風景

オフィスには多国籍な社員たちの写真が飾られている。

足し算文化は簡単だ。リスクを回避するために丁寧に説明しようとすると、どうしても文字数は多くなりデザインも煩雑になる。

シンプリシティーに重きを置く引き算の企業文化を醸成するうえでは、多様性のある社員と常に「これは本当に必要か?」と細かく議論を交わし、不要なものを極力削ぎ落とす作業を欠かさないという。

とはいえダイバーシティが進んでいる企業であればあるほど、さまざまなアイデアが飛び交い意思決定が難しい場面も多いはずだ。同社は約220人の社員を抱え、うち6割が外国籍。その国籍は39カ国にものぼる。

「これまでアフリカ以外のすべての大陸で仕事をしてきましたが、ここまで多様な人材が集まる会社で働くのは初めてです。私にとっての当たり前は隣の人にとっての当たり前ではない。だからこそ、議論を重ねることで新しいアイデアが生まれます。企業の方針が明確であれば、リーダーの決断もぶれません」(シルビア氏)

ユニークなメンバーを統括するリーダーに必要な要素として、アジェンダ設定、まとめる力、社員への権限委譲の3点をシルビア氏は掲げた。

「アジェンダを設定しないと収集がつかずに議論が終わってしまいます。全体をまとめることは時に辛い場面もありますが、多方面に気を配りマルチタスクをこなすことが得意な人はリーダーに向いていると思います。

そして重要なのは、オーナーシップを持たせて社員の成長を促すこと。新しいことに挑戦すること、多様な環境に身をおいて学んでいく姿勢を大事にすることをメンバーには伝えています」(シルビア氏)

同社には現在、アメリカや韓国に在住しながら働くPRチームをはじめ、海外拠点で働く社員も多数いる。外部からは「業務は成り立っているのか?」と心配の声がかかる時もあるようだが、シルビア氏は「絶対に成り立つ」と念を押す。

「むしろ、文化の違いに触れることで視野が広がる。辛い経験もすることでしょう。そこからタフになるのです。オーナーシップをもち、リソースフルにもなる。メリットがたくさんあります」(シルビア氏)

上司の「余計なお世話」がDE&Iの弊害になる

オフィスでメンバーと話すシルビア氏

柔軟な働き方を認め、多様かつインクルーシブな職場環境がPaidyのイノベーションの中核を担っている。

異なるバックグラウンドを持つ多様なチームにも関わらず、メンバーには共通点があるという。それは、“日本のお買い物体験をより良いものにすること”という情熱。実際にサービスを通じた成果が見えたとき、さらにモチベーションが高まり、やりがいに繋がっていく。

シルビア氏は「いくら多様な人材を集めても、インクルージョンがないと組織としては成り立たない」とも付け加える。

例えば、女性を重要ポストに登用するうえでは、適切なサポートやシステムが用意されていなければ一つの数字だけで終わってしまう。それでは、真のDE&Iを実現しているとは言えない。

「背景が異なる人が働きやすい環境作りが重要です。

そのための視点として、“相手のことを思っているつもりでも実は相手のためにはならないことがある”というものがあります。

例えば、新婚のメンバーに対して、次の海外出張のメンバーに招集するのは遠慮しておこうかという考え方。変に相手のことを考えて不必要な想定をするのは、余計なお世話です。決めるのはその人なのですから。一人ひとりに適切なタイミングで積極的にチャンスを与えることが重要なのです」(シルビア氏)

この考え方は、個人がパフォーマンスを出せるように個々に合わせてリソースを調整することで、公平な土台を作るというEquity(公正性)に通じる。

そのためにもシルビア氏は、チーム一人ひとりとのコミュニケーションを怠らない。

ユーザーだけでなく社員に対する透明性も重要視し、定期的に個別に話す時間を作り社員の本音を引き出すようにしている。

コバリ・クレチマーリ・シルビア氏

最後にシルビア氏は「個人の買い物意識も年々変化している」とも指摘した。

「以前ユーザーの方から、<あきらめていたものが、「ペイディ」のおかげで購入できて夢に近づいた>という声をいただいたことがあります。少しでも夢の後押しができたと感じて、大変うれしく思いました。

小さな買い物はもちろんのこと、一生物を分割で賢く買ってもいい。

サービスを通じて、人々の意識や行動の変化につながり、より充実した毎日と夢を実現してもらえたら、こんなに嬉しいことはありません」(シルビア氏)

買い物にまつわる小さなストレスを解消し、お金の使い方の選択肢を広げ、ポジティブな未来への背中を押すPaidy。そのサービス実現の背景には、真のDE&Iがあった。DE&Iをサービス作りの土台とし、その価値を社会に還元するPaidyがもたらすインパクトは、これからも注目を集めそうだ。

(※1)Amazon、Amazon.co.jpおよびそれらのロゴはAmazon.com, Inc. またはその関連会社の商標です。

(※2)口座振替・銀行振込のみ無料。以下同様。


ペイディの詳細についてはこちら

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