本記事の著者であるスー・アーヴェンとその夫。
提供:スー・アーヴェン
2020年、私と夫はパンデミックのさなかにレイオフされた。でもレイオフされる前から疲れ切っていたのも事実だった。私は時給10ドルの仕事でこき使われていたし、夫は介護施設に薬を届ける契約運転手として働いており、週に1日しか休みがなかった。
労働時間を減らすためには、もっと別の方法で収入を得る必要があるのは明らかだった。つまりは副業だ。そこで夫婦でさまざまな副業に手を出してみたが、残念ながらどれもうまくいかなかった。
ブログとアフィリエイトを始めたものの、これで成功するにはSNSで大勢のフォロワーがいなければダメだとすぐに気づいた。ネット通販も試してみたが、仕入れコストがかさむうえ、特にパンデミック期間中は中国からの配送に信じられないくらい時間がかかった。自動販売機を購入して設置することも考えたが、これも初期費用がかかるし、パンデミック中に儲かる仕事とは思えなかった。
もはやお手上げか……と思っていた時に、YouTubeで見つけたのが「Amazon KDP」だった。KDPとは、「キンドル・ダイレクト・パブリッシング」(Kindle Direct Publishing)のこと。アマゾンを通じてさまざまなものを自費出版できる仕組みだ。
自費出版には小説やエッセイ、写真集のような「コンテンツ力の高い」ものもあるが、私たちの戦場はそこではない。ノートや日記帳、手帳、フィットネス記録帳、旅日誌、ぬり絵帳、パズルブックなどの「コンテンツ力の低い」出版物だ。
アマゾンで実際に私たちが販売しているスケッチブック。
提供:スー・アーヴェン
出版なんて難しそうと感じるかもしれない。だが、商品をデザインして出品しさえすれば、あとはアマゾンがその商品を販売し、印刷と顧客への発送も請け負ってくれる。売れればそのたびに印税を受け取ることができるのだ。
YouTubeで動画を何本か見た後、私たちも挑戦してみることにした。デザインスキルもライティングスキルもなかった私たちだが、2020年6月にAmazon KDPで販売を開始し、1カ月目から利益を出すことができた。
今では月平均5000~1万ドル(約72万〜145万円、1ドル=145円換算)の収入があり、これまでで最も成果が出た月は1万7000ドル(約246万円)の収益を得ることができた。
Amazon KDPのメリットの1つは、自分の好きなように時間をかけられることだ。隙間時間の副業として始め、軌道に乗ったら主な収入源に変えることもできる。私たち夫婦は今ではKDPをフルタイムの収入源にしている。だが、まずは副業としてやってみることをお勧めする。
デザイナーでもライターでもない人が、KDPで成功するための重要なポイント3つを紹介しよう。
デザイン前のキーワード調査が重要
私たちは、週に10個程度のデザインを制作し、KDPで出品している。売れ行き良好なのは、罫線入りノート、スケッチブック、日記帳、手帳、ToDoリストなどだ。現在は200以上のデザインを制作して出品しており、利益を上げ続けている。
新しいデザインを作る前に大事なのは、アマゾンの検索結果を調べることだ。
例えば、「ノート」を検索した時に花柄のノートが上位に表示されていれば、それに合わせてデザインを考える。リサーチは1時間で終わることもあれば、何日かかけて詳しく調べることもある。
この一手間をかけることで、売れる可能性を最大化できるのだ。
アートの学位やデザインスキルは不要
アメリカでは一般的な「走行距離記録帳」。
提供:スー・アーヴェン
私たちは「キャンバ(Canva)」というサードパーティー製のアプリを使って、すべての表・裏表紙とページを制作している。この方法の良いところは、何といっても芸術的な才能を必要としないことだ。
実際のデザインにどの程度の時間がかかるかは、商品のジャンルによって異なる。日記帳やノートなら表紙と裏表紙をつくればいいだけなので、通常は45分から1時間程度でデザインできる。
ぬり絵帳のようにコンテンツの多いものは、2~3時間程度かかる。この類の商品の制作には「キャンバ・プロ(Canva Pro)」を使い、会員サービスに含まれている豊富なイラストの中から合いそうなものを選んで利用している。
出品時にSEOを重視
私たちがデザインしたハロウィンの罫線入りノート。
提供:スー・アーヴェン
デザインが完成したら、アマゾンに出品する。その際、売れる可能性を最大化するために、できる限りのキーワード対策とSEO対策をしている。
ここでも、他にどんな商品が一番売れているのか調べ、その結果から対策を考える。また、商品の価格は、同じサイトで売られている類似商品の平均価格に近い水準に設定することをお勧めする。
デジタル商品の販売は、諸経費がほとんどかからない。在庫の保管料も不要だし、Amazon KDPのアカウント開設や、アマゾンへの出品にかかる初期費用も必要ない。商品の価格にもよるが、印刷代金を差し引いても売れるたびに1~5ドルが手元に残る。
本当の不労所得というものは存在しないが、Amazon KDPはそれにかなり近いと思う。アマゾンには毎月数百万人もの買い手が訪れるため、制作する全てのデザインが永久に利益をもたらす可能性を秘めている。
特に景気の先行きが不透明な時期は、誰でも家で愛する人たちと自由に過ごす時間を増やしたり、経済的な安定を得られるようにしたりするべきだと思う。その点、KDPはパソコンさえあれば、誰でも世界中のどこからでもチャレンジできる。72歳の祖母に遊び半分でやり方を教えたことさえある。
あれこれ副業に手を出してみた経験から言うと、Amazon KDPはいつでも始められる副業の中でもかなり効果的な選択肢じゃないかと思っている。Amazon KDPのおかげで、「静かな退職(quiet quitting)」をすることもなく、自分の裁量で在宅ワークができている。
KDPのデメリット
KDPにも短所はある。最大のデメリットは、売上予測が非常に難しいということだろう。1500ドル稼げる日もあれば、50ドルの日もある。事業主として、浮き沈みを想定しておくことが必要だ。
また、すぐに成功することを期待してもいけない。祖母にも、最初は1つも売れなくてもがっかりしないでと言い聞かせた。
だが、出品しているデザインが多ければ多いほど、売れるチャンスも増える。私たちの場合、10種類のデザインをつくって試行錯誤するなかで、ようやく売れるようになった。
※この記事は2022年11月11日初出です。