ジャスティン・ムーア氏は、より良いブランド・パートナーシップを獲得する方法をコンテンツ・クリエイターに教えている。
Ampersand Studios
ジャスティン・ムーア(Justin Moore)氏と妻のエイプリル(April)氏は、YouTubeの黎明期からコンテンツクリエイターとして活躍してきた。
2人は2009年にYouTubeへの動画投稿を始め、以来さまざまな形でYouTubeで活動してきた。ムーア氏は自身のコンテンツ制作を行いながら、この7年間はインフルエンサーマーケティングの代理店も経営している。
彼自身は自分のコンテンツでブランドとのパートナーシップを500件以上獲得し、2013年以降、400万ドル(約5億8000万円、1ドル=145円換算)以上を稼いだ(Insiderはムーア氏提供の資料でこの情報を検証した)。
ムーア氏は「クリエイター・ウィザード(魔術師)」と名乗り、他の人の指導も始めた。インフルエンサーたちに対してスポンサーシップの獲得方法を教える人気のコースを運営しており、2032年までに、指導したクリエイターたちがブランドとの提携を100万件獲得することを目標にしているという。
ムーア氏は、コースの一環として教えているメソッドをInsiderに教えてくれた。
ムーア氏のR.O.P.E.ピッチメソッド
ムーア氏によれば、ブランドへ売り込む際にクリエイターが犯す最大のミスは、自分自身のことばかり話してしまうことだという。
「彼らはこんなふうに言います。
『こんにちは、ジャスティンです。フォロワーが10万人います。フォロワー層はこんな感じです。私のYouTubeチャンネルの平均視聴者数はこれくらいです。ぜひ、貴社とコラボレーションする方法を見つけたいと考えています』。
それを聞いて私はこう言うのです。
『おめでとう。あなたの宣伝文句は削除されました』
なぜなら、ブランドはそんなことを気にしていないからです」
ブランドへの売り込みでは、そのクリエイターがブランドに何を提供できるのか、そしてブランドのマーケティング目標達成に対しどのように貢献できるのかということについて、もっと伝える必要があるという。
そこで「R.O.P.E.メソッド」の出番だ。
Justin Moore
ムーアの手法において、クリエイターのピッチは、そのブランドが現在取り組んでいる、あるいは過去に実施したことがあるキャンペーンと「関連性がある(Relevant)」ものでなければならない。そのようなキャンペーンをソーシャルメディアや過去のプレスリリースで見つけるのは、比較的容易なことだ。
「オーガニック(Organic)」は、クリエイターがすでに自分が公開したコンテンツに売り込みを結びつけることで、自分のオーディエンスがブランドの製品と親和性があり、見込み客になり得ると説明できることを意味する。
「証明(Proof)」の目的は、クリエイターが過去に成功を収めた提携案件や、他のブランドのために作ったコンテンツを示すことだ。そして「実行しやすい(Easy to execute)」 は、クリエイターが「コラボレーションの方法を見つけたい」と言うのではなく、ブランドに対しコンテンツのアイデアを実際に売り込むことを意味する。また、クリエイターはレスポンスよく、かつプロフェッショナルであることを心がけなければならない。
「10年前に売り込みを始めたときは『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』でした。あらゆる人にテンプレートのコピペを送り、変えたのは基本的に宛名だけ。100件出しても、返信があるのは2、3件でした」
ムーアによれば、「R.O.P.E.メソッド」は時間がかかるものの、単なるテンプレートメールに比べ、返信が届く可能性も高まるという。
キャンペーンの目標を必ず聞くこと
ブランドに売り込む際、クリエイターは最初に必ずブランドの目標を聞くべきだとムーア氏は言う。キャンペーンの種類が変われば必要なアプローチも異なり、クリエイターが請求できる金額も大きく変わってくる。そのためムーア氏は、コンテンツの料金表などの提示は避けることを勧めている。それは医者が患者に対し、症状について尋ねる前に処方箋を出すようなものだという。
ムーアによれば、インフルエンサーマーケティングキャンペーンには目的別に3つのタイプがある。彼はこれを、「A.R.C.(認知、再利用、コンバージョン)フレームワーク」と呼んでいる。
ブランド認知(Brand awareness):製品やサービスについて口コミを広めること。通常、このようなキャンペーンで企業が従う指標は比較的緩やかなもの(エンゲージメントやインプレッションなど)であるため、より簡単に高い報酬を得られる可能性がある。
コンテンツの再利用(Content repurposing):コンテンツを持ち込み、ブランドのソーシャルチャンネルや有料広告で再利用すること。これは、フォロワーや経験の少ないクリエイターが、ブランドに自分のコンテンツ制作スキルをアピールするための方法となり得る。
コンバージョン(Conversion):このキャンペーンは、アプリのダウンロード数やトライアル数、または製品販売数など、特定の販売成果の推進を目的とする。これは通常、価格交渉が難しい。それは、顧客1人の獲得にかけられる費用について、ブランドが特定の指標に従っていることによる。
Justin Moore
コンテンツの多様化はブランドとのより良い取引を生む
企業とコラボレーションするチャンスを増やすには、クリエイターがさまざまな種類のコンテンツを提案し、ブランドのニーズに訴え、カスタマイズされたアプローチを提供できることが重要だ、とムーア氏は話す。
ブランドによっては、ポッドキャストやYouTube動画のように、顧客とのより長い対話を好むかもしれないし、TikTok(ティックトック)やInstagram(インスタグラム)リールのように、より手っ取り早い動画を望むこともあり得る。ニュースレターのような文字コンテンツを好むブランドもあるだろう。
「もし、あなたが『一芸に秀でた』タイプなら、パッケージを作成してさまざまな種類の提案を行うのは難しいでしょう」