iPhone 15 Pro(左)と同 Pro Max。
撮影:石川温
アップルが毎年恒例のスペシャルイベントを9月12日(現地時間)に開催した。
コロナ禍によって一時期はオンラインで開催されたが、昨年からはアップル本社にあるスティーブ・ジョブズシアターで再びリアル開催するようになった。
コロナ中のオンライン開催により、ライブのプレゼンテーションではなく、事前収録の動画がシアターで流れるというスタイルが定着。実際、現地で取材している記者もYouTubeに流れる動画をシアターで鑑賞している。
ただ、動画プレゼンが始まる直前にはティム・クックCEOが登壇し、メディアに挨拶。もちろん、プレゼン終了後はハンズオンで実機を触ることが可能だ。現地で取材するからこその「ネタ」もちゃんと仕入れられる。
今回、ハンズオンで最も気に入ったのが、iPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxだ。新たにチタニウム素材をフレーム部分に採用している。
iPhone 15 Proのチタン素材の「軽さ」
恒例となったスティーブ・ジョブズシアターのハンズオン展示の様子。
撮影:石川温
実際に持ってみると、丸みを帯びており持ちやすいだけでなく、自然に「軽い」と声を上げたくなるほど軽量化していた。
iPhoneに関して筆者は、iPhone 14 ProとiPhone 14 Pro Maxの2台持ちをしている(Androidは「別腹」として持っているが)。そのため普段から、どれくらいの重量感かはよくわかっているが、iPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxは手にしただけで、軽さの違いがハッキリとわかる。
スペック的にはどちらのモデルも前モデルに比べて19gしか軽くなっていないのだが、持った感覚はスペック以上のインパクトがある。
ハンズオン会場で来場者の自撮りに応じるティム・クックCEO。
撮影:石川温
もうひとつ気に入っている点が、望遠撮影だ。
iPhone 15 Pro Maxでは5倍の光学ズームに対応している。これまでも光学ズームを搭載しているAndroidスマートフォンがいくつもあったが、「ペリスコープ」といって、本体のなかに望遠鏡のような構造を内蔵させてズームさせていた。そのため、本体の厚みが増したり、重くなったりという弱点があった。
しかし、iPhone 15 Pro Maxでは、レンズから入った光を内部で4回屈折させて、距離を稼いで光学ズームの画像を作り出している。
iPhone 15 Pro Maxの5倍光学ズームの仕組み。この薄いレンズ機構のなかで4回屈折させてズーム倍率を実現している。
出典:アップル
実際、ハンズオン会場で試したが、従来と変わらぬサイズ感で、手軽に光学5倍ズームが使えるのはとても便利だ。
筆者の場合、仕事柄、記者会見で登壇者やプレゼンを撮影する機会が多い。本来なら、ズームに強い本格デジカメを持参するのが望ましいが、光学5倍ズームがあれば、iPhone 15 Pro Maxだけで取材するという機会が増えるかも知れない。
アップル発表会の「既視感」の正体
撮影:石川温
今回、動画プレゼンを視聴していた際、ちょっとした「既視感」に包まれた。
「このプレゼン、どこか聞いたことがあるぞ」と思い出してみたら、iPhone 15のプレゼンが、9月1日に発表となったソニー「Xperia 5 V」によく似ているのだ。
Xperia 5 Vは前モデルである「Xperia 5 IV」に比べて、メインカメラが1つ減って、2つ構成となっている。従来はどちらかといえば「ハイスペックな位置づけのXperia 1のコンパクト版」という位置づけだったが、Xperia 5 Vはキャッチプレーズを「新しいスマホ。新しいワタシ。」と銘打ち、明確に「若者」にターゲットを絞ってきた。
Xperia 5 Vではカメラが2つになったものの、広角レンズで24mmと48mmでの撮影が可能としており、「2つのレンズに3つの画角」といったアピールをしている。
撮影:石川温
一方でiPhone 15でも、今回から4800万画素カメラが搭載されているが、クロップし、1200万画素で記録することで、通常のデジタルズーム時に発生する画質劣化がなく撮影できる点をアピールしていた。プレゼンでは「まるで3つ目のカメラがあるようです」と語るほどだ。
結局、どちらのスマートフォンも「画質の劣化がないから、3つ目のカメラがあるのと同じ」という主張が共通している。
おそらく、ソニーもアップルも、ソニーのイメージセンサーを採用しているのだろう。その仕様を生かそうと思うと、結局、同じアプローチで画質を高めつつ、機能性をアピールすることになってしまう……ということなのかもしれない。
ソニーとアップルに共通しているのは、ハイエンドモデルは徹底的に「プロ向け」を意識したスペックにしているのに対して、エントリーモデルは「若者」をターゲットにしている点にある。
今回、iPhone 15ではガラス素材に色を浸透させた背面ガラスを採用し、全体的に淡い色合いとなっている。一方のXperia 5 Vも色合いは抑えめな感がある。
カメラを2つにすることで価格は抑えるものの、SNSで写真を大量に共有する若者のために、「センサーの技術で3つカメラがあるのと同じ」とアピールしているソニーとアップル。
まさにXperia 5 VとiPhone 15は、ガチで若者を取り合うライバルになるのかも知れない。