本記事の著者、ホーリー・ジョンソン氏。
Holly Johnson
- FIREとは「financial independence, retire early(経済的自立・早期退職)」の略称で、ここ10年の間にこの潮流が高まった。
- 私はリタイア後の人生をエンジョイするためにお金をたくさん貯めて、50歳前に退職する計画である。
- 死ぬまで働かなければならないのはまっぴらごめんだ。複利は私の味方であり、いつでも選択肢を持っていたい。
私はこの10年間自営業として、週に50時間以上、飛行機や列車の中で、時にガソリンスタンドの駐車場でも働いてきた。日が昇る前から仕事を始められるように目覚ましをわざと朝4時にセットして、いく晩も、いく週末も、祝日もずっと働いてきたのだ。
今この原稿をタイプしている時でさえ、手に痛みを感じるけれども、書き終わるまでは止めないつもりだ。だが、私は仕事が好きだからとか、書くことに生きがいを感じているから働いている訳ではない。ましてや、請求書を支払うために一定額を稼がなければならない訳でもない。
私が働くのは、早期退職したいからだ。そして目下、あと7年ほどでそれが実現できそうだと目論んでいる。
なぜ早期退職を目指すようになったのか
私はいま40歳で夫は41歳。つまり、47歳と48歳でリタイアできるだろう。それまでにどのくらい投資できるか、投資リターンがどのくらいかによって、その時期は変わる。どんなに遅くとも、50歳では夫婦そろって悠々リタイアできるだろう。
望めばそれよりも早くリタイアできる可能性もあるが、多くのFIREブロガーが書いているような窮屈な早期退職は望んでいない。スーパーの特売日を狙って買い物したり、小さな家に住んだり、もう一生外食をしないなどという生活はまっぴらだ。
私たち夫婦は一般的に言うところのファットFIREを目指している、と言う人もいるだろう。ファットFIREとは、リタイア前のライフスタイルやそれを上回る生活を続けられるように、必要とする以上に資金を貯めることを前提としている。
私たち夫婦が目指すリタイア後のライフスタイルを送るには、高い生活水準を維持するのに十分な資産が必要だ。それは私たちにとっては、1年のうち数カ月を海外で過ごしながらも、自宅を維持し続けることとほぼ同義である。
もちろん、たとえあと40年以上働かなくても、ひと息つく余裕を持ち、二度とお金の心配をしなくてもいいように多くの資金を貯めたい。外食に行きたい、新しい台所道具を買いたい、自分が支持するもののために寄付したいと思ったときに、躊躇せずにそうできるようにしたいのだ。
だが、早期退職を目指す主な理由は「金持ちだ」と感じられるからではない。プロジェクトや締め切り、要領を得ないZoomミーティングに気を揉まずに、正真正銘自分の人生を歩めるからだ。
そう遠くない将来、私は朝起きてゆっくりとコーヒーを飲み、何時間もあてどなく新聞を読む。何カ月も世界中のお気に入りの町(アテネ? ザグレブ? ローマ?)に住み、あらゆる道を歩いて、今まで時間がなくて見られなかった、観光客がいないスポットの景色を楽しむ。納得のいく料理を4時間かけて一から作る。どこにも行く必要もないし、ほかに何もする必要もなく、こういう生活を送りたい。
それに、ボランティアの時間も取りたい。自分の時間や労力に対してお金が支払われなくても、関心のあるプロジェクトに全力を注ぎこみたい。
基本的にやりたいことは何でもトライしてみたい。だから、私は「働きたくない」と言ったのだ。
早期退職を目指す3つの理由
奇妙なことに、多くの人が早期退職を目指すなんて変だと考えているようだ。結局のところ、30代~40代の大半は、キャリアに邁進しており、まだ将来についてさほど心配していない。
だが、私は少し年を重ねてきたので、リタイアについて何も考えていないなんてどうにかしていると思う。むしろ、週に40時間以上働き、どこにお金を使うか考えておらず、ただうまくいくようにと願うだけなんて馬鹿げている。でも、これが私の年代の大半の信じられないほど悲しい現実だ。
数字は嘘をつかない。投資信託会社のバンガード(Vanguard)が最近公表した調査によると、米国の個人型確定拠出年金である401(k)プランのすべての年代の平均額は12万9157ドル(約1900万円)だった。35歳~44歳で見ると平均残高はわずか8万6582ドル(約1270万円)であり、45歳~54歳では16万1079ドル (約2380万円)である。
毎年15万ドル(約2210万円)以上稼いでいる富裕層でさえも、401(K) の平均残高は29万8851ドル(約4410万円)であり、中央値は15万4989ドル(約2290万円)だ。
誰に訊いても、これらの数字では足りないのは間違いない。早期退職についての私の考え方に興味を持ち、自分もやってみようと思った読者に、私が次第に見方を変えた3つの気づきをご紹介しよう。
1.死ぬまで働かなくていい
最近のデータによると、平均退職年齢は約64歳で、一部の州ではそれよりも遅い。一方、アメリカ疾病予防管理センターによると、米国の平均寿命は78.7歳だ。
つまり、現状のままであれば、人生最後の10年間かそこらを楽しみ、自分の思うように生きるまで、40~50年働く可能性があるということだ。残念なことに、その頃には多くの人が健康問題を抱えて、多くの夢を追い求められないか、所得が限られて資金的な余裕がなくなる。
私が言いたいのは、リタイア後に世界中を旅行したくても健康状態が万全でないとか、事前に計画していなければその資金がないとか、そういう状況に陥る可能性がある、ということだ。
2.選択肢は常に多い方がいい
現時点で私たち夫婦は、10年以内にリタイアできると確信しているが、だからと言って必ずしもまったく働かなくなるわけではない。むしろ、どちらかというとバッファーを持つために、あるいは、現在9歳と11歳の子供たちが家を出る年齢に近づくので、大学進学資金を増やすために、働き続けることも十分にあり得る。
また、ドバイにファーストクラスで行ったり、モルジブの水上コテージに泊まったりというような、普通はしないような思い切った豪華旅行を賄えるように、特別プロジェクトに関わり続けるかもしれない。
だが、早期退職のための貯蓄が大事なのは、仕事を辞めたいと思ったらその選択肢を手にできるからだ。早くから貯蓄を始めず投資をしていなければ、望むか望まざるかに関わらず、働き続けなければならないだろう。
3.複利は魔法だ
長い間に痛いほど身に染みてわかったもう1つのことが、驚くべき複利の力だ。多くの人は複利の効果を実感していないと思う。退職口座に200万ドル(約2億9500万円)とか600万ドル(約8億8600万円)とか貯めたいと思うならば、実際にはそれほどの金額を貯蓄する必要はない。
定期的に十分な金額を投資に回すだけで、お金が増えていく仕組みができる。あとは複利に任せればよい。
例えば、40歳までに150万ドル(約2億2150万円)貯めて、50歳でリタイアするとしよう。40歳までに150万ドルを投資に回して10年間7%で運用すれば、50歳になるときには、1円も退職口座に追加しなくても290万ドル(約4億2840万円)以上に増えることになる。これは単なる事例だが、複利の魔力を存分に表している。
だれもが早期退職を目指せるわけではないし、人によってはどんな形でもリタイアできないことは十分承知している。だが、早期退職が可能な人が、最終目標や計画をまったく立てずに、何十年も汗水たらして働くのはもったいないように見える。
こうした計算をしてみれば、想定よりも早い退職は自分が考えている以上に達成可能だとわかるだろう。比較的若い頃から準備を始めればなおさらだ。少なくとも、電卓を叩いて、複利で運用すると目標がどのくらいで達成できるのか計算してみるべきだろう。今から遠くないある日、未来の自分が今のあなたに感謝するかもしれない。