スキルに合った“職業”をAIが即座に提案。ベネッセが13億円出資の米・スカイハイブとは何者か

スカイハイブCEO

米スタートアップ・SkyHive(スカイハイブ)のショーン・ヒントンCEO。

撮影:横山耕太郎

自分のスキルが分からない、スキルを生かした職種が分からない ──。AIがそんな悩みを解決してくれる未来は、すぐそこまで来ているかもしれない。

過去の仕事内容を書いた職務経歴書をアップロードして、待つことわずか数十秒。

「コンテンツ企画(レベル3)」

「プレゼンテーションスキル(レベル2)」

「ビジネス戦略(レベル1)」

AIが職務経歴書の内容を分析し、レベル別に保有スキルをすぐに可視化してくれる。中には自分では全く気がついていないようなスキルも教えてくれる。

それだけではない。

AIプロダクトメネージャー(保有スキルとのマッチ48%)、情報テクノロジースペシャリスト(保有スキルとのマッチ45%)……。自分のスキルとマッチするおすすめの職種が提示され、その職種に就くために必要となるスキルや、それが学べる講座まで提案してくれる。

2017年創業、日本ではベネッセが資本業務提携

サービス画面

スカイハイブのサービス画面。職務経歴書を入れるだけで、その内容からAIがスキルを可視化する。

撮影:横山耕太郎

このサービスを開発したのは、2017年にカナダで創業し、アメリカに本社を置くSkyHive(スカイハイブ)だ。

日本では教育大手・ベネッセが2023年4月、スカイハイブと資本業務提携を結び、1000万ドル(約13億円)を出資した。国内では2024年3月までに本格展開を始める見通しだ。

スカイハイブはアメリカやヨーロッパ、日本など世界各国の労働市場データを分析し、職種と必要なスキルを結びつける「独自のスキルデータベース」を保有している。

そのため、職務経歴書のデータをアップロードするだけで、過去の経歴から身につけたスキルが抽出でき、スキル保有を裏付ける十分な情報を確認できた場合には、そのレベルも評価できる。

ベネッセによると、カナダ政府やEU、ニューヨーク市など公的機関が導入しており、製薬大手メルクや、アクセンチュアといった大企業など約2000社でも利用実績がある。

ジョブ型を超え「スキル・ベース雇用」へ

CEOら

スカイハイブのCEO(右)とCTOが来日した。

撮影:横山耕太郎

来日したスカイハイブのショーン・ヒントン氏がBusiness Insider Japanの取材に応じ、日本での展開について語った。

「かつては『フォードの工業デザイナー』とくくられていた職業でも、今では仕事の内容がどんどん細かく規定されるようになった。

細かく労働力が規定されたことで、ジョブレベルでの採用が難しくなっている。そこで注目されるのが『スキルに基づいた採用』です」

ヒントン氏が言う「スキル・ベース雇用」では、求められる専門的な職務の経験だけを見るのではなく、「コミュニケーション」や「リーダーシップ」などの一般的なスキルも含めて注目する。募集職種に必要なスキルと、求職者が持っているスキルがマッチしているのかを重視する採用方法だ。

「例えば『フォードの工業デザイナー』と表現するだけでは表せないような、カテゴリーを超えた共通するスキルセットがある。共通スキルから人材を探すことで、効率よく見つけられる可能性があります。

それこそが、現代において『スキルは新しい通貨』と言われるようになった理由です」

終身雇用が根強い日本市場

サービス画面

自分のスキルにあった職業をAIが提案してれる。中には見慣れない職種もある。

撮影:横山耕太郎

日本でも人材獲得に苦心する企業は多い。

リクルートワークス研究所が2023年7月に発表した「中途採用実態調査(2022年度実績、正社員)」によると、2022年上半期に「中途採用で必要な人数を確保できなかった」と回答した企業は52.7%にのぼる。また「必要な人数を確保できた」企業と「確保できなかった」企業の割合の差(中途採用確保D.I.)はマイナス6.9ポイントとなり、比較可能な2013年度下半期以降で最も低い値となった。

採用難は深刻化しているが、日本では新卒一括採用によるメンバーシップ型雇用が根強く、ジョブ型雇用が浸透しているとは言い難い。

そんな日本で、スキルベース雇用は定着するのだろうか?

ヒントン氏は「終身雇用など日本型雇用はすでに消え始めている」と指摘する。

「グローバル化、デジタル分野での労働市場の拡張、そして純然たる人口減少という3つの要因によって、日本型雇用は変わってきている。

テクノロジーが引き金となり終身雇用の壁が破られるのではなく、すで壁の崩壊が起きている

ベネッセ、リスキリング企業狙う

岸田首相

日経リスキリングサミットに参加した岸田総理(2023年9月1日撮影)

撮影:横山耕太郎

一方で社員のスキルの可視化は、リスキリングを取り組む大企業のニーズも高い。

岸田政権はリスキリング支援に「5年で1兆円」の予算化を表明したこともあり、大企業を中心に社員のリスキリングを推進する機運が高まっている。ただリスキリングの課題として、社員に何を学ばせればいいか分からない、学んだスキルを活かす場所がないなどの声は少なくない。

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