電動キックボード、免許不要で利用も事故も急増。最大手Luupに聞く現状

安全講習

東京駅前で開かれた電動キックボードの安全講習会で、Luupに試乗する参加者。

撮影:土屋咲花

2023年7月の改正道路交通法の施行で、一定の条件を満たした電動キックボードは運転免許がなくても乗れるようになり、「自転車同等レベル」の乗り物になった。街中を颯爽と走る姿を見たことがある人もいるのではないだろうか。

利用者数の増加に伴い、交通事故も増えている。東京都を管轄する警視庁によると、電動キックボードが絡む人身事故は2023年7月の1カ月間で、2023年1~6月の半年間に発生した件数の約半数に上った

9月6日には歩道を走行していた電動キックボードと歩行者が衝突し、歩行者が骨折する事故が発生。9日に逮捕された容疑者の女が利用していたのは、シェアサービス事業者「Luup(ループ)」の車両だった。

利用者に全問正解が必須の交通ルールテストを課しているループは、

「走行可能な場所について(容疑者が)『知らなかった』と話していることについては残念に感じております。

今回起きてしまったことは事実として重く受け止め、歩行者を含む街の全ての方々の安全を確保するために何ができるか、常に考え、今後も継続的な改善を図っていきたいと考えています」

とBusiness Insider Japanの取材に応じた。なおループでは、「ひき逃げ」はアカウント停止となる重大な違反として扱っているという。

新たな近距離モビリティの浸透に伴う交通安全の問題に、関係事業者はどう対処していくのか。

利用者は増加

道交法改正チラシ

電動キックボードに関する法改正を知らせるチラシ。

撮影:土屋咲花

電動キックボードはこれまで、原動機付自転車に位置づけられ、運転には運転免許が必要だった。2023年7月の法改正では、最高速度が時速20キロメートルを超えず、大きさなどの要件を満たした電動キックボードを「特定小型原動機付き自転車(特定原付)」に区分。この区分の電動キックボードは16歳以上であれば運転免許は不要、ヘルメットの着用も努力義務となった。

rule

交通ルールの概略。この他にも細かいルールがある。

警察庁などの資料をもとに、編集部が作成。

※詳しい交通ルールはこちら

この法改正で、多くの人に電動キックボードという近距離モビリティの選択肢が開けたことになる。

「法改正以降、色々な人たちの認知・認識に留まったというのもあってライド数(乗車回数)は伸びています」

ループ広報・渉外部長の池上翔氏は、法改正後の変化をこう語る。

アプリの月間ダウンロード数は、法改正前と比較して2~3倍に増えた。電動キックボードの最高速度が、法改正後に時速15キロメートルから時速20キロメートルに変わったことで、利用者の移動距離も伸びているという。

ループは2023年8月末時点で、全国8都市に約4200の専用駐車場(ポート)を設置している。ポート数は同年4月から約1.4倍増えた

事故割合「変わらず」

安全講習

警察署にLuupが協力する形で開かれた安全講習会。交通ルールや電動キックボードの扱い方を周知した。Luupは7月1日の法改正以降、計17回の安全講習会を行った。

撮影:土屋咲花

ループでは、ユーザーが交通事故に遭った場合、同社へ報告するよう呼びかけている。

ユーザーの事故はどのようなものが多いのか。池上氏は

「どうしても最初は乗り慣れないことによる操作ミスで、軽微な事故を起こしてしまうというものが大半です。ハンドルの切り返しが難しかったり、アクセルを押し込みすぎたりとか、手元が不慣れなことに起因する事故が多い傾向がある」

と話す。

具体的には、転倒などの単独事故のほか、停車・駐車中の車に接触する事故が多いという。警視庁も、電動キックボードの人身事故は単独事故の割合が高く約4割を占めるとして注意を呼びかけている。

7月の法改正以降は、運転免許を持っていない人も電動キックボード(特定原付)を利用できるようになったが、事故の傾向について「教習所に通っていない人が起こす事故で特徴的なものがあるかというと、今のところそういった傾向は見てとれない」(池上氏)という。ユーザーの増加に伴い事故件数は増えているが、「ライド数当たりの事故件数という点で見ると、あまり変化がない」(池上氏)。

交通違反による検挙数も増えている。NHKなどの報道によると、全国の電動キックボードによる交通違反での検挙は7月で406件あった。ループでは以前から、警察と連携した交通違反の認知や、飲酒運転といった重大な違反を確認した際にはアカウントを凍結するなどの措置を取ってきた。今後、こうした対策のさらなる強化を検討しているという。

Popular

あわせて読みたい

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み