『三体』だけ聴く、Netflixみたいに使う…Amazonオーディブルの魅力をユーザーたちが語る

AmazonAudibleは日本では2015年にサービスを開始した。

AmazonAudibleは日本では2015年にサービスを開始した。

Jakub Porzycki via Reuters Connect

Amazonが提供する音声配信サービス「Audible(オーディブル)」のユーザー数が右肩上がりで伸びている。

2022年1月27日に定額聴き放題プランに移行してから、国内の会員数は12月までに約50%増加、総聴取時間は約2.8倍になっている。

2015年から2022年までの会員数の推移。

2015年から2022年までの会員数の推移。

Audible, Inc.

2023年のデータはまだ出ていないものの、CMの放送などもあり、認知度には拍車がかかっている可能性が高い。

人気の秘密はどこにあるのか? オーディブルユーザーにその魅力を聞いたところ、コロナ禍以降のライフスタイルの変化がその背景にあることが見えてきた。

まずは、2年前からオーディブルを使い始めたというアカサカさん(仮名、40代男性)だ。アカサカさんは2年前から中国の人気SF『三体』※シリーズしか聴いていない。オーディブルを使い始めたきっかけはコロナ禍だったという。

※「三体」シリーズは、本国版が合計2100万部、英訳版が100万部以上の売り上げを記録。翻訳書として、またアジア圏の作品として初のヒューゴー賞長篇部門に輝いた、現代中国最大のヒット作。

通勤時間の減少で本を読む時間がなくなった

「オーディブルを使い始めたのが2年前なんですけど、その時はキャンペーンで無料で聴けたんです。コロナ禍で暇だったから試しに使ってみました」(アカサカさん)

アカサカさんはそれまで通勤電車で紙の本を読んでいたが、コロナ禍でリモートワークが始まったことにより、読書時間がなくなっていた。それでも読みたい本はあるため、オーディブルを試してみようと思ったという。

「『三体』は話題でしたから内容を知りたくて。ただ全然本を読まなくなっていたので、オーディブルがいいかなと思いました」(アカサカさん)

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amazon

『三体』シリーズのオーディブル版は現在7冊あり、1冊約17時間の再生時間だ。合計再生時間は100時間を超える。赤坂さんは現在4冊目の途中まで聴いている。

途中ブランクがあったため時間がかかっているが、今年の春から、とある生活環境の変化により、本格的にオーディブルを再開した。

「子どもが生まれたことで、僕が掃除や洗濯をする状況になって、それで家事のおともに聴き始めたら、めちゃくちゃ面白いなと思って。そこから止まらないですね」(アカサカさん)

リモートワークによる通勤時間の減少と子どもの誕生により、アカサカさんが本を読む時間は減っている

「仕事絡みの本じゃないと手に取る機会がなくなったというのもありますし、子どもが生まれて家庭環境も変わって自分の時間が少なくなったのは大きいですね。正直、本を読まなくてもいい口実が生まれたという気持ちです。

それでもやっぱり本は読んでおかないといけないという気持ちもあるので、そこにオーディブルはフィットしてますね」(アカサカさん)

オーディブルがなかったら、読書時間がゼロになる可能性があるか?」という問いにアカサカさんは、「そうですね。仕事関係以外はなくなるかもしれません」と答えた。現代人の生活環境の変化による読書時間の減少をオーディブルは補完しているのかもしれない。

「昔、本を読む習慣があったけど、今はその時間がなくなった人にオーディブルはうってつけですよ」(アカサカさん)

名著から話題書まで揃うように

オーディブル歴5年になるニコタマさん(仮名、30代男性)は、主に小説を聴くことを目的にオーディブルを使っているが、年々ラインナップが豪華になってきていることに驚いている。

俳優の妻夫木聡さんが『ノルウェイの森』の朗読を務めた。

俳優の妻夫木聡さんが『ノルウェイの森』の朗読を務めた。

Audible, Inc.

人気声優や芸能人がナレーターを務めるようになり、エンタメ化が進んでいると思います。華やかになりました。村上春樹の『ノルウェイの森』など過去のビッグタイトルから最新の本屋大賞受賞作まで、とにかくラインナップが豊富です。昔は自己啓発が多かったですから」(ニコタマさん)

ニコタマさんによれば、「話題書はどんどん出るし、アニメが好きな人だったらライトノベルも楽しめる」といい、オーディブルで出版の最新トレンドを追うことも可能になっているという。

そんなニコタマさんもオーディブルを使うのはアカサカさんと同様に「運動や家事をしながら」だ。1日30分~1時間程度聴いている。やはりリモートワークで通勤時間が減り、紙の本を読む時間が減ってしまったことで、現在の「読書」はオーディブルがメインだ。

「無音の空間でカチャカチャお皿を洗ってることに耐えられないんです」(ニコタマさん)

しかし、ここで音楽やポッドキャスト、ラジオ、YouTubeなど、他の無料で聴ける音声コンテンツは選択肢に入らないのだろうか?

「ポッドキャストを聴いていた時はありますね。一時期はSpotifyを使っていました。音楽はリラックスしすぎちゃうので作業しながらは聴かないです。

ポッドキャストを辞めたのは、好きな番組が2つしか見つからなかったことと、更新が週1で物足りなかったからです」(ニコタマさん)

家事をしながら音声コンテンツを聴いているという2人の姿は、私の母親がテレビをつけながら家事をしていた姿を想起させた。テレビをなんとなくつけるという習慣が40代以下からは消え、その代わりにオーディブルが入ってきているのかもしれない。

ただし、ニコタマさんはテレビのように「なんとなく聴く」のではなく、「話題作をおさえる」ためにオーディブルを使っている。

Netflixとかと近い感覚なんです。世間の流行についていくために『鬼滅の刃』観とかないといけないみたいな感覚あるじゃないですか。同じように朝井リョウの『正欲』読んどかなきゃみたいな感じなんです」(ニコタマさん)

沢木耕太郎の名著『深夜特急』の朗読を自身もファンであるという斎藤工さんが担当している。

沢木耕太郎の名著『深夜特急』の朗読を自身もファンであるという斎藤工さんが担当している。

Audible, Inc.

オーディブルは1冊10時間を超えることも珍しくないが、「ながら」ではなく、集中して聴きたくなることはないのだろうか?

「集中して聴くには、音声だけは逆に情報量が少なくて眠くなってしまうんです。『モモ』っていう児童文学を集中して聴こうとしたんですけど、 内容が抽象的なことも相まって何回も寝ちゃって断念しました。

途中で寝ちゃうと、どこまで聴いたかわからなくなるので戻るのが大変なんです」(ニコタマさん)

サブスク化と作品数の増加が人気の秘密?

2人にオーディブル人気の理由を聞いたところ、アカサカさんは、

「コロナ禍でたくさんCMを打ちましたよね。その影響はあるんじゃないでしょうか。あと、ユーザーのサブスクへの抵抗感がかなり減ったのも大きいと思います」(アカサカさん)

ニコタマさんは、

1500円で聴き放題になったのは大きいと思いますね。それまでコイン制で月に1作品しか読めなかったのが、聴き放題になりましたし、それに伴って作品数が増えたこともあるんじゃないでしょうか」(ニコタマさん)

とふたりともサブスクの浸透を挙げた。

「本を読む時間がない」現代人のためにオーディブルは出版文化の防波堤として機能し始めているのかもしれない。

[オーディブル公式サイト]

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