バリスタFIREの名称の由来は、退職後もパートタイムで仕事を続けることである。
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- バリスタFIREをすれば、早いうちにフルタイムの仕事を辞めて、ストレスの少ないパートタイムの仕事にシフトできる。
- バリスタFIREなら、少なめの収入が入りつづけるので、退職資金が少なくても実行できる。
- パートタイムで働いていれば、多くの早期退職者にとって、大きな負担となる健康保険料をカバーできる。
早期に仕事を辞めて、もう二度と働かないというのは、ほとんどの人にとって手の届かない夢だ。FIRE(経済的自立・早期退職)を達成するためには、高額の収入の大部分を貯蓄するケースが多いが、誰もが簡単にできるわけではない。
FIREを早く達成して早く仕事を辞めたいとき、バリスタFIREは実行しやすい近道となる。ただしこの場合、少なくともパートタイムでは働きつづける(あるいは何らかの形で収入を得る)必要がある。
バリスタFIREは、パートタイム労働の利点と退職後の自由を組み合わせたものだ。基本的には、フルタイムの仕事を辞め、福利厚生のあるパートタイムの仕事に就くことを意味する。パートタイマーでも健康保険に加入できる大企業の1つであるスターバックスの職業から名前を取ったバリスタFIREは、FIREを早く達成したい人、週に数時間働くことに抵抗がない人にとって実現しやすい選択肢だ。
バリスタFIREとは?
経済的自立を目指す人にとっては、FIREナンバーこそがすべてだ。FIREナンバーとは、経済的に自立したとみなして仕事を辞めるのに必要な貯蓄額である。バリスタFIREは、追加の収入を計算に入れることでこの数字を下げる。
FIREブログ「フォー・フィラー・フリーダム(Four Pillar Freedom)」によると、典型的な早期退職プランなら、経済的自立を達成するためには年金口座や証券口座に100万ドル(約1億4800万円)以上を貯蓄する必要があることも多いが、バリスタ FIREならその半分以下の貯蓄で実現可能だ。
同ブログが挙げる例のように、年間支出4万ドル(約590万円)の人が41歳までに100万ドルを貯めれば、二度と働かなくても毎年資産の4%を引き出して生きていける(これを「4%ルール」という)。だが、この人がFIRE後にもパートタイムで年間2万4000ドル(約350万円)稼ぐなら、40万ドル(約5900万円)だけ貯めて32歳でフルタイムの仕事を辞めても、毎年資産の4%を使って生活ができる。
バリスタ FIREは、FIRE達成に必要な貯蓄の額を引き下げてプロセスを短縮する。すべての責任から解放される真の退職ではないが、ストレスの少ないライフスタイルを典型的なFIREよりも早く実現する方法だ。
バリスタFIREなら医療費をカバー可能
アメリカでは雇用主が健康保険を提供するので、多くの人にとってフルタイムの仕事を辞めることは難しい。代替手段はあるが、自分で保険料を払うとなると法外に高いことが多いのだ。
65歳になればメディケアに加入できるとはいえ、医療費はアメリカの退職者にとって最大の出費の1つだ。フェディティ(Fidelity)の試算によると、典型的な夫婦が65歳で退職した場合、退職後だけで30万ドル(約4400万円)近くの医療費がかかると予想される。早期退職者は数十年の間自ら健康保険料を支払うことにもなりうるので、この数字はもっと大きくなるだろう。
2019年のアメリカ合衆国保健福祉省(Center for Medicare and Medicaid Services)の調査によると 、健康保険マーケットプレイス(Health Insurance Marketplace)を通じて保険に加入する場合の典型的な費用は、27歳の健康な人で月278ドル(約4万1000円)、4人家族で月1077ドル(約16万円)だった。65歳よりかなり若いうちに退職する人にとっては、この費用が何十年とかかることにもなる。
バリスタFIREなら、パートタイムの仕事の福利厚生で保険料がカバーされたり保険料分が給料に上乗せされたりしてコストが抑えられ、予算に少しだけ余裕ができるので、退職資金として必要な貯蓄額が減る。