VCからの資金調達はもうしない。「ブートストラップ」にこだわるスタートアップが増加中

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Marianne Ayala/Insider

ジョン・ノードマークは、ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達をした経験がないわけではない。ドットコムバブル期に立ち上げたeバッグズ(eBags)というスタートアップは、VCから3500万ドル(約50億円、1ドル=145円換算)を調達したのち、2017年にサムソナイト(Samsonite)に1億500万ドル(約152億円)で買収された。

だが、現在経営しているスタートアップ(ビジネス向けAIプラットフォーム「Iterate」を運営)に関しては、ノードマークは外部資金に頼ることには断固反対だ。Insiderの取材に対し、ノードマークはこう話す。

「VCの支援を受けると、投資家が取締役として会社の戦略に影響を及ぼすことになるわけですが、それだけにとどまらないと感じることもあります。投資家はファウンダーにあれをやれ、これをやるなと口出しします。僕の経験から言って、こういうのは企業の弱体化を招くんです」

最近ブートストラップ(投資家からの外部資金に頼らずにスタートアップを成長させること)を選択するファウンダーが増えているが、ノードマークもその一人だ。

自己資金調達といえば、かつては倒産の危機、あるいはVCから見向きもされないほど事業がおそまつというサインと見なされていたが、テック業界では現在、指数関数的なリターンに飢えるVCの圧力から逃れる方法として、自己資金調達に向けた動きが活発化しつつある。

手綱は自分で握っていたい

ブートストラップが注目される一因は、現在AI(人工知能)を除くほぼすべての業界でVCからの出資が細っているからだ。そのため、生き残りに必死になるスタートアップや、時には完全に廃業に追い込まれるケースもある。VCからの出資額は2021年に歴史的な額を記録したものの、2022年に冷え込み、2023年も低水準のままだ。結果、ランウェイが尽きかけたスタートアップには、他に選択の余地がほぼないのだ。

Insiderが取材した6人の起業家によれば、事業計画を最大限コントロールできるようにするため、出資の持ちかけを積極的に断るケースもあると言う。VCを取締役に据えないことで、ファウンダーが自社を素早くピボットさせ、プロダクトマーケットフィット(PMF)を実現しやすくなるというメリットもあった。これがタームシートから遠ざかる大きな理由でもあると、彼らは語る。

ノードマークは、週に複数の「グロースベンチャーファーム大手」と面談し、eバッグズ時代から縁のあるVC最大手(20年前に同社の資金調達ラウンドに複数出資してくれたベンチマーク〔Benchmark〕など)との関係を維持しているという。

もっとも、だからといって彼が考えを改めることはない。

「それは格別魅力的なものでも、最終的に求めているものでもありません。出資を受ければハードルがぐんと上がりますからね。プレッシャーは、外部から作為的にかけられるのではなく、自ら課すものであってほしいです」

VCが休暇から戻るのを待たなくていい

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