アマゾン(Amazon)が新たなサブスクリプションサービスの立ち上げを検討している模様だ。
Michael Kappeler/dpa via Reuters Connect
アマゾン(Amazon)が、食料品およびヘルスケア分野で新たなサブスクリプション(定額課金)サービス立ち上げを検討している。
成長鈍化を指摘される有料会員向けプログラム「Amazonプライム」を再加速させる可能性がありそうだ。
内情に詳しい複数の匿名関係者によれば、同社は上記の新たなサブスクサービスに加え、2022年7月に39億ドルという巨額で買収したワン・メディカル(One Medical)のプライマリー・ケア(初期診療)サービスをプライム特典に追加し、割引価格で提供する可能性についても検討を進めている模様だ。
アマゾンは年内にも新たなサブスクをローンチさせたい意向だが、あくまで社内提案を検討している段階で、今後計画が変更されたり中止されたりする可能性もあるという。
前出の関係者の一人によると、アマゾン社内では新たなサブスクが喧々諤々の議論のテーマになっている模様だ。
既存の有料会員向けプログラムに食料品やヘルスケア分野の特典を追加すると、年会費もしくは月会費を値上げせざるを得なくなり、一部のユーザーにとって手の届かないサービスになってしまう可能性がある。
だからと言って、既存の有料会員サービスに追加する形ではなく、別途独立したサブスクサービスとしてローンチさせるのでは、冒頭で触れたように成長鈍化の懸念されるプライムのブランドをいっそう希薄化させる恐れもある。
別の関係者によれば、アマゾンはプライム会員プログラムに若年層や低所得者層を取り込みたいと考えているものの、苦戦している。米市場に関して言えば、中高所得世帯の大半はすでに会員登録を済ませているのが実情だという。
本記事の内容詳細についてアマゾンの広報担当にコメントを求めたが、得られなかった。
ただし、事実関係についてメールでの言及があり、同社のプライム会員数は前年比で増加を続けており、また、連邦政府の低所得者向け支援受給者を対象にした会費割引「プライム・アクセス(Prime Access)」を利用した登録者数は、2019〜22年の間に390%以上増加したとのことだ。
アマゾンのヘルスケア部門は現在、処方せん対応オンライン薬局「アマゾン・ファーマシー」や、2022年11月にローンチしたばかりのバーチャル医療サービス「アマゾン・クリニック」などから構成されている。
2022年末までは、およそ10万人の患者を抱える法人向けオンライン診療サービス「アマゾン・ケア」が部門の中心的役割を担っていたが、ビジネスを成立させるのに十分な法人会員数を獲得できず、最終的には撤退の判断に至った。
本記事で報じた新たなサブスクや初期医療サービスの特典追加などが実現すれば、プライム会員数ひいてはアマゾンの業績拡大を加速させる可能性がある。プライム会員は非会員より同社ECサイトでの消費額と購入頻度が高いことが明らかになっているからだ。
アマゾンのサブスクリプション売上高は、直近の四半期で前年同期比13.5%増の98億9000万ドルだった。前年の同四半期は同10.1%増だったので、若干改善したとは言えるものの、それ以前は30%以上の成長率を維持してきたことを考えると、成長鈍化にブレーキがかかったとまでは言えないのが現状だ。