NASAの太陽探査機パーカー・ソーラー・プローブが大規模な「コロナ質量放出」の中を飛行し、その一部始終を撮影した。
Johns Hopkins Applied Physics Laboratory
- NASAの探査機が太陽の爆発現象をカメラに収めた。
- パーカー・ソーラー・プローブは2022年9月、大規模なコロナ質量放出の真っただ中を飛行した。
- この探査機は太陽を研究するために作られ、灼熱の温度にも耐えることができる。
アメリカ航空宇宙局(NASA)の太陽探査機パーカー・ソーラー・プローブ(PSP)が、太陽の大規模な爆発現象の真っただ中を飛行し、その一部始終を撮影した。爆発を間近で捉えた映像は史上初のものだ。
ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所(APL)が公開したこの映像は、2022年9月5日に発生した極めて強力なコロナ質量放出(CME)を捉えている。
CMEとは、太陽から超高温プラズマが噴出する現象だ。プラズマは荷電粒子からなり、それが地球にぶつかると停電や災害を引き起こす可能性がある。
NASAは、PSPが遭遇したCMEは「観測史上、最大級のコロナ質量放出」だと発表した。
現在太陽を研究している科学者たちにとって幸運なことに、PSPはCMEのすぐそばを飛んだにもかかわらず、故障することもなく、爆発の様子を撮影した(爆発は14秒あたりから始まる)。
ジョンズ・ホプキンス大学APLによると、CMEは磁場を発生させ、時には何十億トンものプラズマを秒速100~3000kmの速さで噴出する。
2022年9月のCMEに関しては「秒速1350kmまで加速した粒子が観測された」という。このデータは、何がCMEを発生させ、粒子をあれほどのスピードで飛ばしているのかについて解明するための手がかりになるだろう。
PSPのミッションは、太陽に触れること
太陽に接近するパーカー・ソーラー・プローブのイメージ画像。
NASA
PSPは太陽を研究するために特別に設計された。史上最速の宇宙船であるだけでなく、太陽に最も近づくことができ、太陽の表面から640万kmまで接近しても生き延びることができるとNASAは述べている。
「PSPがCMEの中でも飛べることは、最初から分かっていた」と、ジョンズ・ホプキンス大学APLのパーカー・ソーラー・ミッション・システム・エンジニアであるジム・キニソン(Jim Kinnison)は、同大学の声明で述べている。NASAによって太陽付近の灼熱に耐えられるように設計されたPSPには、特注の熱シールドと太陽放射から装置を保護する自律システムが装備されている。
PSPは、CMEを最初に検出したとき、太陽表面から約920万km離れていた。その後、CMEの衝撃波の余波を横切るように進んだ。このCMEをほぼ2日かけて調査したあと、無傷で任務に復帰したとジョンズ・ホプキンス大学APLが報告している。
CMEにおける惑星間塵の役割
このCMEが発生している間、NASAの研究者たちは、惑星間塵(太陽系空間を漂う塵)がどのような影響を受けたのかについても調査を行った。このような相互作用について学ぶことで、将来的に宇宙気候をより正確に予測できるようになることが期待されている。
「惑星間塵はCMEの形状や速度に影響を与えるのだろうか。確かに影響があると我々は理解し始はじめたばかりだ」とAPLの物理学者であるラス・ハワード(Russ Howard)は、声明で述べている。
PSPはCMEだけでなく、「太陽風」の発生源といった他の太陽現象についても、科学者たちに情報を提供している。