ロシアの「建設」の仕事に就くはずが… キューバの少年、気付けばウクライナとの戦闘の最前線に

戦車

破壊されたロシア軍の戦車。

Alex Babenko/AP Photo

  • キューバの10代の少年は、ロシア軍の建設業務の仕事のオファーを受けたという。
  • ところが、少年はウクライナとの戦闘の最前線に送られたとタイム誌は報じている。
  • アメリカ国務省は、キューバの若者たちが騙されていることについて「深い懸念」を示している。

対話アプリ「ワッツアップ(WhatsApp)」でロシア軍の「建設業務」の仕事のオファーを受けたキューバの10代の少年は、気付いた時にはウクライナとの戦闘の最前線に送られていたとタイム誌が報じた

アレックス・べガス・ディアスさん(19)とその友人は軍事基地に連れて行かれ、武器を身につけさせられた後、前線に送り込まれたと同誌は伝えている。

タイム誌が引用した複数の動画のうち8月31日付の動画には、ロシアにある病院へ搬送され、回復を待つ(入院の理由について、詳細は明かされていない)ベガス・ディアスさんの姿が映り込んでいて、回復後は前線に再び送り戻される予定だという。

タイム誌によると、ベガス・ディアスさんは病床から「ぼくたちをここから助けて」と懇願していると言い、「ウクライナで起きていることはひどい。頭にひどい怪我を負った人に出会ったり、人々が殺されるのを目の当たりにしたり、爆弾が自分のすぐそばに落ちてくると感じている」と話している。

同誌が引用した別の動画では、ベガス・ディアスさんは「キューバ人の中にも命を落とした人、行方不明になった人がいる。戦争が終わるまでこれが続くのだろう」と話している。

「キューバ政府は分かっているはずだ。キューバの人々へのぼくたちからのアドバイスは、ここには来るなということ。狂っている。絶対にダメだ」

ベガス・ディアスさんはウクライナで戦うためのロシア軍の大規模な作戦に名を連ねていて、ベガス・ディアスさん以外にも数百人のキューバ人が公然と採用されているとタイム誌は伝えている。

6月にはキューバのフェイスブック・グループに、ロシア国防省との雇用契約の広告が掲載され始めるなどしていたという。

契約金として、20万4000ルーブル(約31万3000円)が提示されていたとタイム誌は報じている。

キューバの平均月収はこの金額を大きく下回るため、魅力的なオファーに見える。

タイム誌が雇用契約を確認したところ、契約期間は1年間で、入隊の謝礼金と戦死した場合の遺族への支払いもついているという。

こうした働きかけを通じてどれくらいの数のキューバ人が入隊したのか、はっきりとした数字は分からないが、タイム誌は数百人から1000人以上はいると推計している。

キューバの外務省はこうした動きを「人身売買ネットワーク」と表現したものの、タイム誌によると、複数のキューバの専門家やアメリカの元政府高官は懐疑的だ。

専門家や元政府高官らは、ロシアの長年の同盟国であるキューバ政府は、ウクライナ紛争において中立の立場を保つために、このような言葉を使っているのではないかと同誌に語っている。

採用活動の性質や経緯にかかわらず、アメリカではベガス・ディアスさんのような新兵が騙されて仕事のオファーを受けたのではないかと懸念されている。

アメリカ国務省は「我々は若いキューバ人がウクライナへの残忍な全面侵攻において、ロシアのために戦うよう騙され、勧誘された可能性があることを深く懸念しており、この状況を注意深く監視し続ける」とタイム誌にコメントしている。

Insiderは国務省にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

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