シェリー・ルオ氏はスタンフォード大学のMBA学生で、TikTokに12万人のフォロワーを持つインフルエンサーだ。
Akshay Shah
インフルエンサーマーケティング代理店であるリンキア(Linqia)の新たな報告書によれば、2023年にはブランドの4分の3以上が、ティックトック(TikTok)クリエイターであるシェリー・ルオ(Cherie Luo)氏のように10万〜50万人のフォロワーを持つマクロインフルエンサーとの提携を検討しているという。
リンキアが前回報告書を発表した2021年には、ブランドの需要が最も高いパートナーは「マイクロ」インフルエンサー(フォロワー数10万人未満)だった。しかし今ではブランドがクリエイターとのパートナーシップから得たいものが変化しているようだと、リンキアの戦略担当統括責任者であるキース・ベンデス(Keith Bendes)氏は言う。
「ブランドは数少ない、多くのフォロワーを持つ良質なインフルエンサーを求めています。ブランドは実際、インフルエンサーとのより深い関係性に投資しています。数が多すぎると、より深い関係性を築くのは難しくなります。ブランドが求めているのは、インフルエンサーとの有意義なパートナーシップです」
リンキアはこの報告書の作成にあたり、7月に250以上の企業ブランドおよび代理店のマーケティング担当者を対象とした調査を実施した。
調査の結果、判明した重要なポイントは以下の5点だ。
1. 経済的逆風にもかかわらず、インフルエンサーマーケティング予算は増加の一途をたどっている
回答者の約76%は、前年と比べ、インフルエンサーマーケティング予算は増加した、または同じだったと回答した。
さらに細かい内訳を見ると、回答者の18%は2023年のインフルエンサーマーケティング予算は7桁(数百万ドル)だと回答した。一方、この調査では、予算は10万ドル(約1450万円、1ドル=145円換算)以下と回答したマーケティング担当者は15%だった。
「支出額はより大きくなっており、総合的戦略においてより大きなウェイトを占めるようになっています」(ベンデス氏)
2. ブランドはマイクロクリエイターよりも人気の高いマクロインフルエンサーとの提携を考えている
リンキアによれば、2021年にはマーケティング担当者の90%がマイクロインフルエンサーをキャンペーンに起用する計画だと回答していた。2023年は状況が変わり、そのように回答した割合は74%まで減少した。
一方で、今年はより多くのブランドが、マクロインフルエンサーをキャンペーンに起用する計画だと回答し、2021年の72%から2023年は81%に増加した。
マイクロインフルエンサーの料金は過去2年で上昇し、マクロインフルエンサーとほぼ同額が請求される場合もあるとベンデス氏は話す。
しかし、マイクロインフルエンサーの魅力が完全に失われたわけではなく、マイクロインフルエンサーに対するブランドの需要は高止まりしているとベンデス氏は付け加えた。
リンキアのデータによれば、インフルエンサーマーケティング案件に有名人を起用するマーケティング担当者の割合も、2021年から2023年で14%から29.5%へと、2倍以上に増加したという。
3. ブランドの大半が、提携に最適なクリエイターの特定にAIが役立つと考えている
AIがインフルエンサーマーケティング業界に与える潜在的影響について尋ねたところ、ブランドの約72%は自社のキャンペーンに最適なインフルエンサーの特定にAIが役立つようになってほしいとと回答した。
「この業界はさまざまな革新的取り組みや活動を行っているにもかかわらず、ブランドにとっては依然として、最適なクリエイターパートナーを見つけるのに相当苦労していることがわかります」(ベンデス氏)
また、マーケティング担当者の約65%はパフォーマンス分析のAIによる効率化を期待すると回答している。
4. ブランドの半数以上は、自社のSNSチャンネルに「クリエイター生成コンテンツ」を導入している
クリエイター生成コンテンツ(ユーザー生成コンテンツ:UGCとも呼ばれる)とは、クリエイターがブランドのためにコンテンツを作成し、ブランドのチャネルでのみ公開するコンテンツのことで、ブランドにとっては魅力的だ。調査回答者の58%も、この方法でクリエイターと提携していると回答している。
「このことについては、インフルエンサーとクリエイターの間で議論が生まれます」とベンデスは言う。
「結局のところ、多くのブランドにとって重要なのは、本当に消費者に影響を与えられるのか、本当にクールなコンテンツが作れるのか、という点です。本当にクールなコンテンツを作ろうとしていても、それが自分のチャネルやマーケティングに関することであって必ずしも影響力は関係ないというなら、インフルエンサーを起用する意味は薄れます」(ベンデス氏)
5. エンゲージメント率は、依然としてキャンペーンの成功を測定する最も一般的な指標だ
リンキアがマーケティング担当者にインフルエンサーマーケティングキャンペーンの「成功を測定する指標」を3つを選んでもらったところ、「エンゲージメント率」が依然としてトップであることがわかった。エンゲージメント率は、インフルエンサーの視聴者のうちどのくらいがブランドの自社コンテンツに反応しているかを把握するのに役立つ。
調査によれば、マーケティング担当者の69%が、エンゲージメント率は最も重要なKPIだと回答している。
2番目に重要な指標に挙げられたのは、「リーチ(インフルエンサーのコンテンツを見たアカウント数)」であり、回答者の53%がこれを、最も重要な成功指標だと回答した。
ブランドにとって最も重要な指標の内訳は以下の通り。
- エンゲージメント率:68.85%
- リーチ(CPM):53.28%
- ブランドリフトまたはSoV(シェアオブボイス):43.44%
- コンバージョン(登録率):34.43%
- トラフィック(CTR):32.79%
- 売上高:30.33%
- インフルエンサーの質:21.31%
- フォロワー数の増加:14.75%
- カートへの商品追加:11.48%
- その他:3.28%